理解してもらおうとしなくていい
「新鮮なご遺体を解剖しに行きます!」
「頭部がたくさん並んでいるよ!」
そんな言葉と共にモザイクをかけた遺体の写真をSNSに投稿して大炎上した医師。
倫理観的にアウトでしょ〜と思いながらも、でもそういう感性だから医者になれるんだろうなと思って、否定はしない。
「医者ってさ、ちょっとズレた人がなるんだよね。駅前のクリニックの先生もすごいじゃん。人の話全然聞いてなくてバーって喋り続けてて」
「あぁ、コハダな。キャラ濃いよな」
よく行く病院の先生は、お腹が痛くて行った際に
「お腹痛くて」
「お昼は何食べました?」
「お寿司を」
「寿司ですか、ネタは?」
「コハダとか」
「コハダ食べ放題とかですか?」
コハダ食べ放題????
コハダ食べ放題なんてあるか!! と主人に話して笑い合い、以来、コハダ先生と我が家では呼んでいる。
別の病院に行ったときにコハダ先生のことを言うと、「あの人この辺りじゃ1番の名医なんですよ」と言われた。たしかに、他の先生の薬だと治らなくても、コハダ先生の薬だとあっという間に治ったりする。
ちょっとズレているけど、すごい医者。
「医者ってさ、ちょっとぶっ飛んでる人じゃないと無理なんだよね。変に共感求めたり寄り添ったりしちゃう人だとメンタル病むと思うんだ。だって病院に来る人みんな体調悪くて来るんだから」
「たしかに」
元気なときに病院には行かない。
頭が痛い、お腹が痛い、風邪をひいた。来る人からはいつも体の不調を訴えられる。薬を出して元気になったとしても、元気になったら病院には来ないので、患者の元気な姿を見ることはない。なんとも悲しい仕事だ。
「だから「新鮮なご遺体解剖できるひゃっはー!」みたいな人が向いてると思うんだ。研究熱心で、患者ではなく、病気そのものに向き合える人。普通の人には理解されなくて当然なんだよね」
「倫理観的にはアウトだけどな」
普通の人と同じ思考だったら、普通の人になっている。自分は普通じゃないと思うのなら、普通の人に共感を求めても仕方がない。孤独に耐えなければいけない。理解されない道を突き進まなければいけない。
「私もね、私が考える普通は普通じゃないなって思うの」
「あんたは普通じゃないよ。バカだよ」
「知ってる。周平くん界隈のアーティストからも嫌われてるんだ私。チケット買ってライブ行かないし、周平くんの小説は書いちゃうし、ぬいぐるみ作ったり、写真投稿したりして、周平くんに執着してて気持ち悪い奴だなって思われていると思うんだ。周平くんからも嫌われてるんだ」
「だろうな」
「でも別にいいんだ。私がもしこの界隈のアーティストたちと同じような思考をしていたら、太った体でステージに立って、下手くそな歌を歌って、身内同士で馴れ合ってライブごっこしていたわけでしょ。冗談じゃねぇなって思うんだ。周平くんがいる現場でそんな恥ずかしいこと絶対したくないもん。私は普通じゃない思考をしているから、ジムに行ってストイックに体を引き締めるし、仕事は日本一の店でNo.2まで上り詰めたし、19歳差のあんたと結婚したし、独立したし、ギターも5年習ったのに普通の人みたいにバンド組もうとかセッション行こうとか思わず、「小説にして文学フリマで販売しよう」って思ったの」
おかしいな。私が思う普通は普通じゃない。
全部、普通じゃない人生だった。でも、面白くない? 面白いことをしたい。
「だから開き直ることにしたの。きっと私を理解してくれる人はいないんだなって。全然否定してくれていいし、バカにしてくれていい。誹謗中傷も全然OK! むしろあなたたちと一緒になりたくないから全力で否定してって感じ。普通だったらこの人生は歩めてない。普通じゃないからあんたとも結婚できたの」
「俺は普通の人間だけどな。あんたはおかしいと思う」
でも、理解してくれる主人のおかげで、開き直ることができた。それはとても感謝している。
「ゲッターズ飯田さんも言ってるけどさ、「憧れの人だったらどう考えるか」って想像するのが大事なの。自分がなりたい人の思考をコピーするの。私は周平くん界隈のアーティストには全然憧れない。周平くんにも全く憧れない。まぁ好きは好きだけどね。飯田さんに憧れるんだ。五星三心占いを作って、みんなを楽しませているの。毎日ブログ更新もしてるし、毎日楽しませてる。そういう楽しくて面白い人に近づけるようになりたいな」
まず仕事を本気で頑張らなければ、そのうち遊べなくなってくる。
結婚だって、努力しないと結婚できない。
趣味も全力で頑張れば、他のことに活かせることもある。ギターを5年習った結果、小説が書けるようになったように。
「まぁ、新鮮なご遺体〜はぶっ飛びすぎてるけどね。でも、人と違う道を進むなら、ある程度理解されないことも覚悟して進まないとダメなんだよね」
だから、結果を出さないとダメなんだ。
理解されなくて、結果も出なければ、「あなたのやっていることは間違ってますよ」という話になる。
新鮮なご遺体と言った医師が、この先は医者としての腕で結果を出してくるのを見守っていたい。
そして、普通じゃない私の思考を詰め込んだ小説を、5月11日の文学フリマで販売します。
最後に普通に告知しておきます。