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大企業で役職定年となった直後に年収アップの好条件で転職できた秘訣とは(6)

最後に、大企業サラリーマンにおける4つの鉄則のうち、③確信が持てる転職先が見つかってから(起業する場合は起業プランが固まってから)会社に退職届を提出すること、と④一度退職届を提出したら慰留されても変心しないこと、の2つについて補足しておきたい。

これらの鉄則は、転職予定先からオファー・レターを受け取った後の話であり、言われるまでもなく当然のことのように思われるかもしれない。
しかし油断は禁物である。

私はこれまで3回転職している(現在の勤務先が4社目)が、転職の際にこれまで2度、ヒヤリとしたことがある。
1度目は、信託銀行から損害保険会社に転職した際のこと。
転職予定先の損害保険会社からは、「当社では、内定は通常書面では出していないが、間違いないので、現在の勤務先に話して頂いて大丈夫だ」と言われた。
これを信じて勤務先の信託銀行に退職願を提出したのだが、その直後、損害保険会社に入社時までの事務手続きを確認したところ、入社前に、会社が指定する病院で健康診断を受診しなければならないことが判明したのである。
「健康診断の結果問題があったらどうなるのか?」と人事部の担当者に尋ねたところ「軽度の異常値なら問題ないが、勤務に支障が生じるような重い病気が見つかった場合は、内定取消しもあり得る。」と言われた。
このため、勤務先の信託銀行に、恥を忍んで「退職届の受理を2週間ほど待って欲しい」と依頼せざるを得なかった。
健康診断の結果が出るまでの2週間、気が気でなかったことを今でもはっきり覚えている。

2度目は、結局転職しなかった先だが、口頭で内定を得ていた上場不動産会社に転職し掛けた際の話である。
その会社はオーナー系の不動産会社で、創業者でもある社長が実質筆頭株主にもなっている会社なのだが、最終面接は副社長と専務取締役の2名だった。条件も折り合い、先方からは「内定通知書もお渡しできる」と言われた。
ただ、私は、「相応のポジション(部門のヘッド)での転職となる以上、是非社長とも面談させて欲しい、そのうえで最終的に判断したい」と考え、その旨先方に伝えた。
するとなかなか先方から返事が来ない。「社長だから忙しいのだろう」とそのまま3週間ほど待っていたら、突然エージェントから携帯に電話があり、「社長の一存でこの話は流れてしまった。大変申し訳ない。」と言われてしまったのである。
結果的には、そのようなワンマン経営の会社に転職しなくて良かったと、つくづく思うのだが、口頭で内定を貰った時点で勤務先の人事に話してしまっていたら、大変なことになっていたと思う。

私の実体験から言えることは、勤務先に退職届を出すのは、転職予定先から必ず「書面で」内定通知を得たうえで、転職先への入社迄の手続きも確認し、「絶対にひっくり返されることがない」状態にしたうえで行うべき、ということである。

また、退職届を出すと、勤務先の上司から「次回の人事異動では昇進させる」とか、「異動希望があるのなら希望する部署を教えて欲しい」などの甘言で慰留されることもある。
しかしながら、一度異動届を出したのであれば、そのことは記録に残り、例え慰留に応じて撤回したとしても、本当の意味での信用を取り戻すことは極めて難しいと考えた方が良いだろう。

転職はサラリーマン人生を好転させることも多いが、一歩間違えると、自分自身を極めて厳しい状況に置くことになるリスクも孕んでいるので、注意が必要である。


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