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「タイトルがユニークな短編集」3選 FIKAのブックトーク#15

こんにちは、FIKAです。
毎回1つのテーマで数冊の本を紹介しています。

今回のテーマは「タイトルがユニークな短編集」。
中身が面白いだけでなく、タイトルがユニークでインパクトがある短編集を3冊紹介します。




「白線以外、踏んだらアウト」 田丸雅智

子どもの頃、こんな想像遊びをしませんでしたか?

「白線以外、踏んだら死ぬ」

白線だけが安全な場所で踏み外すと落ちて死ぬ、と想像する子どもの頃の遊びをふと思い出してやってみたら、本当に「白線以外を歩くと死んでしまう民」と出会っていつしか自分もその仲間入りをしていた…!

そんな奇想天外な話が10編収録されたショートショート集です。

「緊張した時は「人」という字を3回手に書いて飲みこむ」
「写真を撮られると魂をとられる」
「食べてすぐ寝ると牛になる」
「痛いの痛いのとんでいけ」
誰でも知っているおまじないや言い回しが、豊かな想像力によって思いがけない話に膨らんで意外な結末をむかえます。

笑える話、ゾクッとする話、心温まる話まで、「現代の星新一」とも呼ばれる田丸雅智がショートショートの面白さを存分に教えてくれる楽しい短編集です。



「ホットプレートと震度四」 井上荒野

ゼリー型、鉄鍋、ホットプレート、ピザカッター…「料理にまつわる道具」をめぐる短編集です。

「料理」にまつわる小説は数あれど、「料理にまつわる道具」をテーマにした短編集は珍しいのではないでしょうか?
料理を作る道具は毎日よく使うものだけに、日々の様々な思い出と密着しています。

幼い我が子とお菓子作りをした思い出。
恋人と一緒にピザを切って笑いあったあの頃。
夫の元カノからもらったホットプレート。
好きだった男友達から結婚祝いにお揃いの鉄鍋を贈られた時の気持ち。
小さなアパートで餃子の皮を作った机。
アクリルたわしを編みながら結婚生活の鬱屈をぶつけた長い夜…

それぞれの道具が、まるで楔のように人生の一コマに打ち込まれて、見るたびに思い出して忘れられない。切なくもほろ苦い9つの物語です。

貴方にも私にもそんな道具と思い出がきっとあるはず…?



「あいにくあんたのためじゃない」    柚木麻子

いやー、いいタイトルですね。
皆さんもこんな風に思ったことはありませんか?

私がこうするのは私がしたいからであって、あんたを歓ばせるためじゃない。

ジェンダーの無理解やマチズモな社会に対して物申す作家・柚木麻子らしさが炸裂した短編集です。

女性や子どもへの不当な扱いに徹底抗戦する話や、女友達や母娘の連帯を描く話など、いわゆるシスターフッド(女性たちの連帯)で男性用にカスタマイズされた社会に抗おうとします。

その一方で、時代の変化にうまくアップデートできない男性の正直な胸のうちを明かす短編もあって、作者が必ずしも女性だけで完結する世界を望んでいるわけではないこともうかがわせます。

女も男も生きやすい、新しい関係性を築くことができる社会にしていきたいという思いに共感できる作品集でした。



以上、3冊の本を紹介しました。
タイトルがユニークだと内容も面白い確率が高い気がします。

読んで下さってありがとうございました。


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