【食育】34話 ココちゃん、起きたらパンとハム 蚕起桑食(かいこおきてくわをはむ)
「なんかね、朝ごはん食べないで登園している子が結構いるんだって」
もらってきたお菓子をむしゃむしゃ食べながら、カカさんが言った。
「へえ。まあオレが子どもの頃もそんなニュースはあったし、いつの時代も食事を気にしない家庭はあるんちゃうー?」
そーっとカカさんが食べてるお菓子に手を伸ばしたら、さっとお菓子をテーブルの上に置いて
「それって良くないと思う!だって、ココちゃんがお腹空いてるとことか想像もしたくないでしょ?」
「いや、まーそりゃそうやけど、家によって色々と事情もあるんだろうし、そんなに怒らんでも…」
オレが話し出すと、またお菓子を取ってむしゃむしゃ食べだした。オレが手を伸ばしたら、お菓子をソファの横に置いて
「今度、保育園で給食食べる日があるんだって!一緒に行って、どんな風に何を食べてるか見てみようね!」
「そだね。普段何食べてる、献立見るだけだもんね。それはそうと、オレにも一つちょうだいよ」
「いいよー、あっ」
全部食べてしまっていた。カカさん、最近よく食べるな。だって今はココちゃんもとっくに寝た22時過ぎ。
なんか見たことない美味しそうなお菓子だったのに。
少し前に天満橋で日本料理屋を開業した、寺嶋さん、覚えてる?この前連絡があって、独立志向のある弟弟子の話を聞いてやってほしいって話だった。その時は、寺嶋さんの店に久しぶりに行って、順調な様子を聞いて安心したわけ。で、このお菓子をカカさんにってくれたんだ。
寺嶋さんの店は「禅と懐石」がコンセプトで、知識も豊富だ。
寺嶋さんが話していたちょっとした雑談の事を、ふと思い出した。
「トトさんさ、季節って本当はいくつあるか知ってるかい?」
「え?四つじゃないんですか?」
「普通はな。でもおれ達の世界じゃ二十四節季と絡める事が多いのよ」
「二十四ですか?それはまた多いですね」
「そう笑 そしてそれを細分化した七十二候ってのが、おれの考える日本の季節だ。うちの店のコースはその季節を感じられものを心掛けてるよ」
「素敵な話ですねぇ」
「今は、蚕起きて桑を食むと言われる時期だ。青や紫の花が色付きだす。こういうの知ってると、毎日が豊かになるだろ?」
と言って、ニヤッと笑った。
このいかつい職人のルックスで、あんな二重の目元をクシャッとされたら、さぞかしモテるんだろうな。そういやいつも来るとカウンターには女性客が多い。
くわをはむ…だっけ?何が起きるんだったかな?なんて考えながらその日は寝てしまった。
翌朝。
何かに圧迫されて息苦しい。んー。なんだ?目を開けると大きなイモムシが乗っかってる!
ひっ!と言って目を開けると、ココちゃんが乗っかっていた。
「トトしゃん、おあよ。ごはんたべよー」
毎度の事ながらココちゃんでした笑
こんなに毎朝の朝ごはんを楽しみにしている我が子を見て、とても愛おしい気持ちになった。
今朝は卵焼きとハムを乗せたパン。むしゃむしゃ食べる様子を見て、「あ、カカさんが食べてるの見て蚕の話思い出したんだ」って気づいた。
我が娘もむしゃむしゃ。
ココちゃん、起きたらパンとハム。 召し上がれ~。
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