平熱日記2024_不眠症とTulip
9月某日
睡眠障害がもうシャレにならなくなってきた。昨夜も就寝は22時だったのだが、23時半に目が覚めてそれ以降ノンレム睡眠に移行した覚えがない。喉の渇きを覚え、何度も1階にお茶を飲みに降りる、尿意を催しトイレに入るが放尿したいわけでもない。体が制御されていないようだ。
週3日の休肝日を設けてから顕著になった。それまで365日休まず続けてきた飲酒癖を修正したので、つまりは体がそのように反応しているのだろうと思っていたのだが、昨日は昼夜と飲酒をしたうえでの入眠だったのだ。
あと強迫神経症的な傾向も自覚しており、考えられるのは、更年期障害、醜形恐怖症、鬱病などなど。ただ色々調べてみると微妙に違うとも思う。おそらく睡眠障害ではないのか、と目星をつけた。近所のメンタルクリニックを見つけて、今週改善しなければ受診してみようと思う。
絵本作家のヨシタケシンスケ氏の「微うつ」という体験談も朝日新聞に載っていて、なんとなくそちらもニュアンス的に近いかなと思う。
ちなみに来週月曜に健康診断を受けるため、それまで完全禁酒する予定なのだ。今週一週間、様子を見よう。しかし本当に堪える。
帰宅すると妻から私の状況を聞き及んだ息子からいくつかの助言をもらう。息子が会社の同僚から聞いたという「十分な睡眠(熟睡)は2日に1回取れれば良いほう」という医者からの言葉は救いになった。サンンキュー!
9月某日
その翌日、睡眠はどのようだったかというと、
・22時就寝
・23時半1回目の覚醒、再び入眠
・01時半2回目の覚醒、三度入眠
・4時半頃ぼんやりと覚醒
といったところであった。2度覚醒したものの、睡眠時に深く眠った実感があり、疲れが取れている気がした。また、どんよりとした気分も軽い。
昨日とは大変な違いである。これは飲酒の有無の問題なのだろうか。
金土日と昼夜と飲酒をしたのだが、さすがに朝からは飲まないが連続飲酒に近い状態になっていたのではないか、と思われる。依存症に近い状態になっていたのではないか。気になっていた睡眠障害、抑うつ感、不安はそこに起因していたような気がする。
週末の酒の飲みかたを考え直す時期が来たのだろうか。つまり「昼酒は土曜だけにしとけ!」ということか(←まだ飲むつもりである)。
実感するのだが、飲酒習慣と抑うつ感は大いに関係があると思う。
https://newsee-media.com/alcoholismより、「アルコール依存症の離脱症状」は以下の通り。
・手が震える・イライラする・悪寒がする・寝汗がひどい・不安感がある
・焦燥感がある・睡眠障害・吐き気・胃痛・動悸・高血圧・記憶障害
・幻視・幻聴・うつ病・振戦せん妄・けいれん発作
流石に手の震えや幻覚・幻聴などハードなものはないものの、寝汗、睡眠障害、不安感、動悸、高血圧、記憶障害などは自覚している。たぶん初期段階だとは思うのだが、これらがアルコール依存症の離脱症状とするならば、私もマイルドな依存症であるということだ。
あとはアルコール依存症の合併症として、次のようなものがある。
・脂肪肝・肝硬変・アルコール性肝炎・肝臓がん・アルコール性胃炎
・膵炎・食道静脈瘤・アルコール心筋症
ここ数年、特に顕著なのは60歳を過ぎてから肝機能、血圧、中性脂肪、悪玉コレステロールなどの数値の悪化である。つまりすでに身体は明確にSOSを発信しているのだ。まじめに対策を考えよう、ということで実験的に検診までの1週間を禁酒としたのだ。
9月某日
昨夜の睡眠は、65点といったところ。一昨日夜とほぼ同じ傾向だったが、少々眠りは浅かったか。まあ、あれだけ眠れれば御の字としよう。
ところで前述のとおり8月から休肝日を週に3日間設け、ただいま次の健康診断に向けて禁酒中なのだが、肉体面での変化が表れてきたように思う。一つは身体、特にわかりやすいのが顔のむくみが取れたような気がする。その結果、眠たそうな印象だった二重瞼がとってもすっきりくっきりとしたような気がする。次に目の下のクマも薄くなったか。2年前の禁煙といい、節酒・禁酒はアンチエイジングの効果があるのかもしれない。考えてみれば赤ん坊は酒もたばこもやらないのである。
色川武大「遠景 雀 復活」読了。とうとう父親が死んでしまうのだが、死んでもなおそこに「いる」。「気配がある」のではなく、「いる」のだ。魔術的リアリズム、とは違うかもしれないが。虚実のどちら側にいるのかというと、「実」の側、なのだが、この私小説作家はナルコレプシー患者であり、日常的にすさまじい幻覚に襲撃されているのである。つまり父親が「実」であれば、幻覚も「実」であるということになりはしないか。それはすさまじい恐怖であるのではないか。それを受け入れてもなお父を実在させたいのか。
9月某日
方言をモチーフにした短編小説の件、少し考えてみる。
・だらず:愚か者、バカ者の意味。「足らず」からの派生か。「だらずげもねえ」は「ふん、ばかばかしい、冗談じゃない」
・とっぱあ:おっちょこちょいの意味。「突破者」からの派生か。「とっぱあげなことするな」は「おっちょこちょいなことをするな(ケガするぞ)」
・じるい:道が雨後ぬかるんでいるの意味。「汁(しる:水気)」からの派生か。「なんちゅうじるくてえ道だ」は「なんてぬかるんだ道だろう、あるきにくい」
・けんびき:疲れで体調を崩すというような意味。小学校低学年の時、先生が授業で知っている病気の名前を子供たちに問いかけたところ、山根君が元気よく「けんびき!」と答えたので、皆爆笑した。するとその時皆はそれが土地独特の方言であると知っていたのか。「お前のお母さん、最近見ないな」「うん、けんびきで寝とる」
・ばばらけ:むちゃくちゃ、しっちゃかめっちゃかの意味。「ばらばら」からの派生か。「あれの部屋はばばらけになっとる」は「あいつの部屋はしっちゃかめっちゃかで足の踏み場もない」
・きがわりい:うるさいの意。何か耳に痛いことを言われるとこういって返す。よりこなれると「きゃーりーわい!」となる。「あんた、またパチンコか。勝てもせんのに」「きがわりいなあ」「たまにゃあ缶詰でも取ってきんさい」「きゃーりーわい!」
9月某日
まだ暑く外出は厳しいのだが、かといって休日を無為に過ごすというのもうんざりであり、思い切って自転車で遠乗りをした。最初は特に行く当ても決めてはいなかったのだが、久しぶりに大泉学園のリサイクルショップを目指そうという気持ちになった。
結局片道1時間ほどかかった。特に目当ての品はなかったのだが、ジャンクコーナーを物色して楽しんだ。ジャンクレコードもなかなかひどい品ぞろえで(ほめている)楽しかったが、ふと思いついて、チューリップの「チューリップ・ガーデン」(初期の2枚組ベスト盤)と「離陸~Take Off~」を220円也で買った。
とりあえず入念に盤をポリッシュする。溝には細かい汚れがみっしりだが、音に影響するような傷は少ない。1回目の音出し。クリーニングにもかかわらずヒスノイズが盛大に出る。聴き進める。魔法の黄色い靴、心の旅、夏色の思い出、銀の指輪、悲しみのレイントレイン、ぼくがつくった愛のうた・・・名曲ばかりではないか!思わず聴き入ってしまった。
「Take Off」は機内コックピットの写真ジャケットがムチャクチャかっこよく、中学時代にしびれまくった。FMで一度聴いただけの1曲目”Take Off”だが、やはりカッコイイではないか!チューリップ、こんなに良かったか!まさに再発見である。
リーダーの財津和夫がポールフリークなので、ポ-ル寄りのメロディアスな曲が多いのだが、メロディーが日本的な(こぶしとか、ちょっとなまってる感じ。分かるかな)匂いをたたえていて、そこもいい。コーラスもビートルズ中期以降の若干コンプレッサーをかけたあの感じできれいにハモる。快感。隣の親父が怒鳴り込んでくるようなジョンレノンカラーは殆どないのだが、それもまあビートルズのコピーではないのだという逆説的な証明だというのはあばたもえくぼ式ではあるか。
実はチューリップのレコードを買うのはこれが初めてだった。よしコレクションの新しい目標ができたぞと喜び、少し間をおいてパワーアンプKrell KSA 125のスイッチを押すと電源が入らない。え?どうも壊れたようだ。え?ちょうど8年前に中古で買ったのだが、え?
間の悪さが極まった日曜の午後である。
9月某日
いよいよ健康診断当日を迎えた。1週間の禁酒とそれ以前の週3日の休肝日の成果が試される時である。問題の血液検査により肝機能、中性脂肪、悪玉コレステロールの改善具合は後日ではあるが、とりあえず内視鏡の結果は良好、血圧は理想的な数値を叩き出した。Hey C’Mon!という感じである。
9月某日
例によって前のめり気味にデジタルパワーアンプをメルカリで注文、Krellの出張見積もりを「オーディオの買取屋さん」に依頼したのだが、その夜のことである。
「お世話になります。
昨日出張査定を依頼いたしました上原と申します。
実は大変申し上げにくいのですが、昨日査定をお願いする予定のKrellの
スイッチを名残惜し気に押しましたら、スイッチが入ってしまいました。
故障前提で出張をお願いしていましたが、当分このまま使おうということに決めてしまいました。せっかく日程変更などにもご対応いただいており申し訳ないのですが、今回の出張査定はキャンセルとさせていただきたいと思います。なにとぞご了承いただきたくお願いします。
今後また何かございましたらお願いをすることがるやもしれませんが、
その節はどうぞよろしくお願いします」
デジタルパワーアンプもキャンセルしようかと一瞬思ったのだが、6500円と安価でもあり、サブ機もあった方が良かろうと思いとどまった。
帰りに池袋DUに立ち寄り、あっさりとチューリップ「ぼくがつくった愛のうた」「メロディー」「UPSIDEDOWN」を購入。店舗滞在時間3分ほど。締めて1140円。思った通りのたたき売りである。
1.メジャーである(カルトではない)
2.ある程度売れた(流通量は十分)
このような中古アルバムは安いのだ。次は「ベスト」「Live Act Tulip」「日本」「Welcome to my house」あたりを狙ってみよう!
9月某日
新宿DUで嘘みたいに「Live Act Tulip」をあっけなく発見し、購入。480円。
しかし、である。なぜこれほどまでにTulipにはまってしまったのだろう。自分でも不思議なくらいの熱中ぶりである。もともと熱しやすく冷めやすい気性であったとしてもである。
彼らの全盛期、つまり1970年代は、私は小学校3年(1970年、9歳)~高校3年(1979年、18歳)であった。この時期は私自身が最も多感な年代であると同時に世界的にロックミュージックの黄金時代であった。60年代にビートルズがまいた種が豊穣に実っていった時代であった。まさにキラ星のごときスーパースターたちの乱舞。この時代に、邦楽のレコードを買おうとは思わなかったのだ。というか、手が回らない。Tulipの欲しいレコードもあったのだが(なにしろジャケットが良かった!)限りある小遣いは洋楽ロックの名盤購入に使いたい。まだビートルズもストーンズもツエッペリンをはじめ、聴いたことのないレコードがごまんとあるのだ。Free、Cream、Queen、GFR、Yesなどなど。結局Tulipはラジオから流れてくるヒット曲を聴くのみだった。
今アルバム単位でTulipを買いそろえているのは、その頃の「やり直し」の意識なのかもしれない。
また、Tulipのようなポップロックグループを、甘口と軽く見ていたところもあったかもしれない。若造特有のツッパリというか。やっぱりZeppelinを聴いているというのに比べてTulipが好きというのは軟弱者の印象を人に与えるだろう。「本格ロックファン」とは思われなさそう。舐められそうである。「いや、おれが好きなのは、ROCKなんだよね!」とか言いたい年ごろなのである。
そして今は、すべての音楽の前で虚勢を張ることもなくなり、「好きなものは好き」といえるようになったのではないか。カミングアウトは幸せをもたらすことを実感する。