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慕情

<タイトル>

桑田佳祐
「実は『慕情』っていう曲は違うタイトルだったんです。
最初は“風”がどうのこうのってタイトルだったの。でも『せつない胸に風が吹いてた』って曲がすでにあったから、ダブるんでね、これはマズいって思って変えたんですよ。

そもそもね、僕は“慕情”って言葉が好きなんです。あの映画の『慕情』も好きだし、漢字で“慕情”って書いた時のあの感じが好きなんです。
あの字って、日本人のためのポピュラーミュージック大全集みたいなそんな感じがするでしょ?ぼ・じ・ょ・う。それは日本人に浸透した有効打。
言葉の本当の意味は説明できないけど、背景が見えてきそうでしょ?愛情じゃなくて慕情。前から使いたかったタイトルだったのを今回使ったんですけど。」(1992年)

<曲・アレンジ>

桑田佳祐
「面白いでしょう?このへんの佳境。ピアノ二台使ってて、ジョン・レノンの『オー・マイ・ラヴ』と同じ音像。そう言っちゃうと身も蓋もないんだけど。あれはプロデュースがフィル・スペクターさんで、スペクターさんは変なとこで大滝(詠一)さんだから、疑るんだよ。それでそれが当たってるから悔しいんだよね。

あたしゃねぇ、この曲はねぇ、好きなんですよ。レコーディングっていう作業は暗いんだけどさ、この曲のときは開放的だった。だから音楽宇宙の旅というか、そのなかでさまよえた。彷徨できるの。この曲のサビのコード進行が出てきたときは、部屋で震えがきたもん。『いやまいったなぁ、神様がいるなら出てらっしゃい』というね、どこにお隠れあそばしてるんでしょうかと思ったもん。ずーっと雨乞いしててよかった、みたいなね。雨も大雨降っちゃったという。

パートナーの小林君も、レコーディングに来てくれたギターの小倉君も『これいいよ』って言ってくれたから、猿は木に登りますよ。いきなりホステスになっちゃいますよ。」(1992年)

桑田佳祐
「アレンジも作曲の意味でも、ムダなくやってみた曲です。ジャズとまではいわないけど、自分では気に入ってますよ。
今回のレコーディングでは、小林武史クンがいろいろと音を考えてくれたんですけど、この曲はピアノが2台、ジョン・レノンでいうと『Oh My Love』みたいな感じで入ってます。そうすることによって生まれる音のブレンドの加減というか、派手な作業じゃないけど、そういうトライはたくさんしました。カレーライスを作るときに、いろいろな調味料を入れるみたいな、そんなことをね。」(1992年)

<2000.03.04記>
<2024.11.10追記>

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