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出発前から、忘れられない旅に?


Ⅰ ルネサンスの魅力の虜になって


 3月後半、タイ北部を一人で旅した。暑さは半端なかったし、世界遺産の歴史公園で野犬に吠えられるという、ちょっと怖い思いもした。けれど、いつも聞こえてくるのとは違う言葉を耳にし、目にしないものを見て、口にしないものを食べることで、「私」という存在が内部からも外部からも日々更新されるようだった。ささやかなルネサンスを経験したように感じた。

 ルネサンスの魅力にとりつかれた私は、夏にもまた海外に行こうと、新たな旅の計画を練る。円安で、欧米は懐が厳しい。物価が安そうな東南アジアに照準を絞る。まだ行ったことがなく、比較的安全に観光が楽しめるのはどこか。そして、ベタではあるが世界遺産が見られるところがいい。

 昨年、天皇がインドネシアのジャワ島にある、ボロブドゥール遺跡を訪問している。ということは、ジャワ島の治安はそれほど悪くないはずである。外務省の海外安全ホームページを検索し、「危険レベル1」の「十分注意してください。」の黄色で塗りつぶされたインドネシアに行こうと思い立つ。 

ボロブドゥール遺跡(veltra.comより)

 これまで一人で行った東南アジアは、タイとマレーシアだけだ。どちらも、危険レベル0の都市にしか、行っていない。危険レベル1のインドネシアに行くことは、私にとっては少しばかり冒険だ。

Ⅱ インドネシア旅行を計画する

 1 行程を考える


 『地球の歩き方』を読んで、グーグルマップで検索もして、旅行プランをさんざん練った。ジャワ島の世界遺産を見るだけではもったいない。ボロブドゥール遺跡に近いジョグジャカルタから旅を開始し、火山や、ブルーファイアという珍しい現象が見られる火山湖を観光しながら東に向かい、バリ島にフェリーで渡ることにした。因みに私は、バリ島にすら行ったことがない。そうして、バリ島から日本に帰ってくる。

『地球の歩き方 インドネシア』より
バリ島はジャワ島のお隣

 ジャワ島を移動して、バリ島も楽しむ、となると、どうしても日にちがかかる。往復の移動も含めると2週間という、これまでの一人旅の中で一番長いプランが出来上がった。

 2 航空券を予約する

 夏は基本的には航空券が高いけれど、少しでも航空券が安い日を狙う。8月上旬に、どうしてもやらなければいけない仕事があり、その時期を外すと、航空券が安くて、長めに休みが取れるのは8月後半だった。

 5月ぐらいからスカイスキャナーでさんざん検索したあげく、6月下旬、Go to gateというサイトで、インドネシアに行くフライトを予約した。帰りのフライトは、My tripというサイトで予約した。往復で6万円を切る価格だった。
 行きのフライトは、羽田からクアラルンプール、クアラルンプールからジャカルタ、ジャカルタからジョグジャカルタという、2回の乗り換えがある商品だった。

Ⅲ 忘れられない旅に?

 1 Go to gateからのメールに気づく

 往復のフライトを予約してすぐに、予約確認書も来て、これで往復の足は確保したと、安心していた。だがしかし、である。8月9日、ふとメールをチェックしていると、7月20日過ぎに、Go to gateから英語でメールが来ている。「ジャカルタからジョグジャカルタまでのフライトが航空会社によってキャンセルされた。ジャカルタからジョグジャカルタまでの一部のフライトのキャンセル及び返金をするか、日本からジョグジャカルタまでの全てのフライトをキャンセル及び返金をするか、いずれかを選び、返事せよ。」と書いてある。

 3週間近くたってからメールに気づいた私は、真っ青になった。出発まで10日を切っているのに、確保したつもりの目的地までの足が、確保されていないのである。メールに気づかないでいるうちに、行きのフライトが全てキャンセルされていたら、どうしよう。帰りのフライトは、返金不可のものだったはずだから、旅行を取りやめても、3万円弱は戻って来ない。
 メールが来てすぐに気づいていれば、行きの全てのフライトをキャンセルして、航空券を取り直してもよかっただろうが、すでに出発は目前に迫っている。検索してみると、私がチケットを取ったときと比べて、ジョグジャカルタ行きの航空券の値段はずいぶん高くなっていた。

 ジャカルタまで行けば、後は同じ島の中での移動であり、鉄道での移動もできる。ジャカルタからジョグジャカルタまでのフライトのみをキャンセルしたい旨を、Go to gateにメールする。しかし、すぐには返事が来ない。
 焦った私は、9日の深夜と、翌10日、2回にわたって、Go to gateのチャットで、問い合わせをした。一部のフライトのみキャンセルしたい旨を伝え、メールでの返信を求めた。チャットでのやり取りだと、日本からジャカルタまでのフライトは押さえられたままのようだけれど、早くメールでのきちんとした返信が欲しい。

 11日、山の日に、入笠山への送迎バスを降りようとしていると、スマートフォンに海外から電話があった。Go to gateからである。英語でいろいろ言われるけれど、出先で電話で話して、意図が通じず、希望と異なる対応を取られたら困るので、メールを欲しい旨を伝える。
 数十分してメールが来る。7月20日過ぎに来たメールと文面はほぼ同じである。なあんだ、9日に私が先方に送ったメールは見ていないのか、と思う。
 山から帰って来て、どうするのがベストかあれこれ考える。やはり、ジャカルタまでのフライトは押さえておいて、ジョグジャカルタまでの足を自分で確保することに決める。12日の早朝、再度、一部のフライトのみをキャンセルしたいという旨のメールすると、今度はすぐに返信が来た。「一部のフライトのキャンセル及び返金を行う。」と。

 2 ジャワ島内の移動手段を確保する

 9日にGo to gateのメールに気づいてから、11日に先方からメールが来るまで、気が気でなかった。

 その後も、ジャカルタからの移動をどうするか、さんざん考えた。ジャカルタからジョグジャカルタまでの移動の方法としては、鉄道か飛行機が現実的だ。
 クアラルンプールからジャカルタまでのフライトはエアアジアなので、遅延の可能性が十分ある。ジャカルタの空港には昼到着の予定だが、夕方以降の電車に乗り、深夜か翌朝にジョグジャカルタに着くという方法が一つ。けれど、深夜着では安全面が心配だし、翌朝着では、ホテルのベッドで休むことができなくなり、想像しただけで疲れる。
 エアアジアのフライトが遅れた場合のリスクはあるけれど、到着予定時刻から5時間ぐらい後の国内線のフライトを取ろう、と決めた。 

 3 教訓

 こんな次第で、まだ旅行を始めていないのに、これから始まるインドネシア一人旅はすでに「忘れられない旅」となっている。
 今回得た教訓は、海外の旅行サイトを使うときは値段だけではなく、評判もよく見てからにせよ、だろうか。

 実は昨年夏、マレーシアに行ったときにも、似たようなことがあった。Go to gateよりも口コミ評価が高い、Trip.comというサイトでマレーシアからの帰りの航空券を購入した。
 出発の40日ほど前になって、「予定していた日のフライトには乗れない。2日後なら乗れる。フライトそのものを無料でキャンセルするか、2日後のフライトに無料で変更するか返事せよ。」という日本語のメールが来た。このときはTrip.comから電話もあったので、すぐに気づいた。行きの航空券は、LCCのスクートで、返金不可のものをすでに購入していたので、2日後に帰りの飛行機に乗れる、というのでは困る。そこで、フライトをキャンセルし、値段は最初よりも高くなったけれど、新しくチケットを取り直した。

 このときもびっくりだったけれど、電話ももらったので、すぐに気づくことができた。今回は、メールを一本寄こしただけで、その後は放置である。直前になってしまったけれど、メールに気づいたことを僥倖だと思うしかない。Go to gateからのメールには「出発の5日前までに返事せよ。」とあったから、これを過ぎていたら、どうなっていたことか。行きのフライトは全てキャンセルされ、返金もされなかったかもしれない。飛行機に乗るつもりで空港に行ってみたら、乗れず、そもそも旅が始められない、なんてことが起こりえたかもしれない。

 だが、これで安心、ではない。ジャカルタから国内線に乗り換えるときに、到着ビザのチェックがある。到着したときにビザを取ることもできるけれど、時間がかかりそうなので、事前に申請しておいて、乗り換えをスムーズにしたい。
 出発まであとわずか。不安材料を少しでも減らして旅に臨むことができたら、と思っている。そして、無事に旅を終えて帰って来られますように。

(追記)ボロブドゥール遺跡の上まで上がることができるチケットは、『地球の歩き方』によると、1週間前からネットで売り出すとあったのに、今見たら、とっくに売り出されていて、私が行くつもりの日は売り切れになっていた。
 前に遺跡のホームぺージを見たときは、確かに1週間先のチケットしか売り出していなかったのに。いったい、いつ売出し日を変更したんだ! 真夜中に起きてチケットを予約するつもりだったのに。旅の目玉で楽しみにしていたのに、登壇できないじゃないか。でも、もう行くしかない!


 ぼやきに最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。みなさんは、出発前からハラハラした旅の経験はおありですか?

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