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親愛なる小林エリカさまへ   

 『親愛なるキティーたちへ』(リトルモア)、2011年の発売時にその発想のすばらしさに舌を巻きながら、拝読しました。『アンネの日記』と、アンネと同い年のお父様の日記と対話しながら、アンネが亡くなった場所から生まれた場所へと、時を遡る形でアンネの足跡をたどり、日記を記す。タイトルは、アンネの「親愛なるキティーへ」という日記への呼びかけを踏まえ、三人の記した日記への呼びかけになっている。
 
 『親愛なる』が発売されたとき、お母さまがアンネと同い年という同僚の方がいて、その方のお誕生日にご本をプレゼントしたら、喜んでいただきましたっけ。

 小林さまは、アンネの「私の望みは、死んでからもなお生き続けること!」という言葉にインスパイアされながら、執筆なさっていると思います。

 私はこの言葉をわかっているようで、わかっていなかった、そんな気がします。先月、ビクトル・エリセの新作『瞳をとじて』を観ました。映画に携わっていた二人の男性の復活が描かれていました。「復活」とは何なのか、自分なりに考えました。

 人間は誰しもその肉体は滅びる。けれど、文章や映画をつくっていれば、後世の人がそれにふれて、つくり手と対話する可能性が残る。後世の人がつくり手と対話することで、つくり手は復活し、永遠の命を得る。ものをつくるとは、永遠の命をいただこうとする営みなのではないか、そんな気がしております。

 小林さまがご著書で行った試みも、亡きアンネと対話することで、アンネを蘇らそうとする試みであった、そのことにようやく気がつきました。

 今後のご活躍を心よりお祈り申しております。

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