肉肉アライブ
肉より魚が好きだった。
食の好みが一致する友人とのランチでは魚料理を選ぶことが多かった。
だが近ごろになって変化があった。
魚より肉、お肉食べたい。
数ヶ月に一度のおばちゃん3人ランチが牛肉一択になっている。
年齢的にあっさり好みになるのかと思った矢先の肉街道。
肉と言っても3人ともカルビや豚トロなど食通の人が好む脂の旨みは苦手で、もっぱら赤身の牛肉街道だ。
肉と魚の両方がメニューにあるコースもいいが、最近はお肉食べる気満々の店を選んでいることが多い。
魚どころか、ヴィーガン料理だの有機野菜中心のイタリアンだの健康志向だった我らはどこに行ってしまったのか。
赤身のステーキを食べながら、友人が言う。
「赤身肉投入で自分の脂肪を燃やせるんだって。」
本当だろうか?
自分に都合のいい話は信じてみる。
我が身の脂肪は燃焼させたほうがいい。
食べた後の運動が大事なんじゃない?
この店は、ソースの種類がたくさんあって、好きなソースを選べると説明された。
私たちはなぜかひとり2種類のソースを選べると勘違いして、3人それぞれ美味しそうな好きな組み合わせを考えた。
食の好みが一致するので同じ組み合わせを弾き出してしまい笑う。
ブルーチーズソースと山葵醬油で一致した。
オーダーのお兄さんに、
「ブルーチーズと山葵醬油を」と言ったら、
「お一人様一種類なのですが。」
え?
すみませんすみません。
3人いて3人とも勘違いして、私たちもうダメかもしれないと苦笑いだ。
「ソース3人でシェアされますか?」
と優しいフォローをいただいて、
ブルーチーズと山葵醬油と赤ワインソースをシェア仕様にしてもらった。
食後は歩いて麻布台ヒルズへ。
運動のつもり。
紫陽花が綺麗だった。
浴室と洗面室をリフォームしたばかりの友人が綺麗になった洗面室に置く、高級なアロマを買うと言うので一緒になって買う。
こういう時に乗っからないと、自分ではなかなか麻布台ヒルズにも高級アロマにも足が向かないし手も出ない。
娘がいる友人たちは娘の青春をも共に歩んで、娘の日常を我がことのように話す。
タイミングよく娘からLINEがくる。
「ママたちランチ楽しんでね」
ここで平日ランチの予約ができることはその娘ちゃんが教えてくれた。
うちの次男からくるLINEは
「今日晩飯なんすか」
と
「うぃ」(はい)
の2種類。
ひとり暮らしの長男は、
「今日帰ります」オンリー。
何時くらい?
夕飯はいる?
と私がLINEしても返信はない。
「うぃーーーーっ!」(私の苛立ち)
まあ息子なんて母親に対してはそんなもんだろう。
「ぅぃ」(あきらめ)
夏の暑さで食欲がなくなるということはない。
むしろ食欲はある。
それぞれの家庭には着地点の見えない悩みもあるし、些細な日常にてんてこ舞いの時もある。
自分の日々不調と気になる健康に向き合いながら、困りごとを吐き出し、
お肉で鉄分を補給して、
それを帳消しにするスイーツも食べて笑う。
脂肪は燃焼しそうにないけど、家に帰れば、もう一働きできるほどには元気になっている。