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『九龍ジェネリックロマンス』85話感想
一人進む鯨井・前を向き始める人達・一人後ろ向きな工藤
【あらすじ】
工藤のもとを訪れた周さんは
G九龍から出ることを告げる。
翌日
いつまでも出勤してこない工藤を心配した
鯨井は工藤の住む部屋へ向かうが…
【感想】
①鯨井の願い
鯨井は久々に占いをします。
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鯨井の占いにかけた願い事は
みんなが前に進めるように
鯨井自身はまだどこへ進むべきか分からないので、見守っていてほしい
進む先がわかってる人は、進む先に進めますように
「みんな」の中には
工藤も含まれているのでしょうか?
②一方の工藤は…
久々のルオチンさん登場。
工藤は蛇沼を殴った手が鬱血を起こしたため
ルオチンさんのお店で手当てをしていました。
工藤の脳裏には
『鯨井Bは必ずしも
死のみを選んだわけではないのでは?』
という蛇沼の言葉がよぎります。
蛇沼の言葉を反芻する
工藤の表情はどこか複雑。
令子さんが風邪薬「メビウス」を
自殺するために飲んでいたわけではなくても
その理由は未だに分からないし
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おまけに工藤からしたら
『令子さんに裏切られた』という思いが
彼の中にはあるんじゃないかと思います。
③周さんの決心
ルオチンさんのお店に周さんが訪れます。
ここで工藤は周さんから
楊明さんがオリジナル小黒と共に
G九龍から出ていったことを聞かされます。
その言葉に工藤は驚きます。
ここで少し気になったのは
工藤はオリジナル小黒と再会していないのか?
周さんはおそらくオリジナル小黒と
再会しているっぽいです。
工藤の言う「小黒」が
オリジナルもしくはジェネリックの存在の
どちらを指しているのか気になります。
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もしジェネリックの存在を指しているなら
オリジナル小黒と再会していないことになり
ジェネリックの小黒が消失しない理由に
繋がるかもしれません。
ここで周さんは
「G九龍から出ようと思う」と
工藤に告白します。
その告白に工藤は驚きますが周さんは
「いい加減先に進まないとな」と言います。
④先に進むことは「捨てる」こと?
周さんの告白に、工藤は顔を背け
「捨てるのかよ」と言います。
工藤の言葉に周さんは
「お前さんにとって
先に進むことは捨てることなのか?」
じっと工藤の顔を見つめてそう尋ねます。
その問いに
工藤は「だって」と言いかけますが
返事に詰まってしまいます。
工藤だって本心ではG九龍に
いつまでも留まり続けることはできないことは
分かってはいるのでしょう。
工藤も彼の過去を考えたら可哀想だし
トラウマを抱えているのも無理からぬ事ですが
でも今の工藤を見ていると
ここまでG九龍に依存する姿に
モヤモヤさせられます。
周さんとのやりとりを見ていたら
何だか意地を張っている感じが
しないでもありませんし。
過去を捨てるのではなく
受け入れて前に進むことが大切なんじゃないか
と感じます。
オリジナル小黒も
過去にはもう戻れないことを受け入れて
楊明さんに着いていく道を選びましたし。
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工藤がいくらG九龍であがいても
令子さんも令子さんと過ごした幸せな夏の日も
もう二度と戻ってこれないのですから。
⑤出勤してこない工藤
翌日。
出社した鯨井は出社時間を過ぎても
工藤が出勤してこないことを心配します。
上司の李支店長も心配して
彼の部屋に電話しますが、工藤は出ない模様。
鯨井は工藤のもとへ行ってみることにします。
準備をするなか、鯨井は
机の下にお札を見つけます。
お札をめくってみたところ
何とその裏は真っ黒。
鯨井もさすがに悲鳴をあげてしまいます。
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鯨井は75話ラストのお札のメッセージと
83話の工藤の忠告の言葉が一致していた事から
「お札のメッセージと工藤は関係している」と
推測します。
グエン同様鯨井もまた
工藤とG九龍は何かしらの関係性があると
気づきました。
工藤の部屋を訪れた
鯨井を待ち受けているのは一体何か?
【余談】工藤の闇がついに明かされる?
過去にそれぞれ後悔を抱えていた
楊明さんやオリジナル小黒・周さんが
前を向いて歩みだすなか
工藤の後ろ向きな態度が
ますます浮き彫りになるなぁ…と思いました。
ここまで来ると、異常ですね…
終盤の裏側が真っ黒なお札は
工藤の抱える心の闇をあらわしている?
鯨井もいよいよ
工藤の抱える闇を知る時なのでしょう。
これまで工藤の心情は暗示的で
はっきりと描かれませんでした。
11巻以降から遂に
謎に包まれていた工藤の心情が
描かれるかもしれません。
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鯨井は「工藤のそばにいたい」と
75話で呟いていましたが…
G九龍の謎や工藤の抱える秘密を知った時が
工藤との別れを意味するのではと思います。
何故なら鯨井はG九龍内でしか存在できないし
本物(かもしれない)の存在である工藤とは
G九龍内でしか一緒にいられないからです。
その事実を鯨井は
いずれ突きつけられるでしょうし
工藤への想いについても
再びあらたな葛藤を抱く可能性もあります。
物語自体も少しずつ
終わりに向かって進みつつあるようです。
鯨井Aと工藤の関係性も物語の結末に向けて
再び大きく変化していくことでしょう。
願わくば…
誰もが良い結末を迎えられますように。