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先頃、新たな在留資格「育成就労・・・
先頃、新たな在留資格「育成就労」を創設する出入国管理法等の改正法が参院本会議で可決されました。公布後3年以内に施行する模様で、制度の開始は2027年。2030年までの3年間に現行制度からの移行を想定しているとのことのようです。
「育成就労」は、何かと問題の多い「技能実習」に代わる新たな資格です。人材育成に加え人材の確保を目的としたもので、在留期間は3年間。
所定の条件を満たせば最長5年間の就労が可能な「特定技能1号」へ移行ができ、その後、さらに資格の更新に制限のない「特定技能2号」になることも可能で、2号となれば家族帯同もできて、将来は「永住者」への道も開けてくる、そんな資格です。
この法改正でこれまでの問題がきれいさっぱりに解決されるわけではないでしょうが、改善の一歩となることは確かなことだと思います。
また、こうした動きがある中で、イオン傘下のファシリティマネジメント会社が、2030年までにおよそ4,000名の特定技能外国人を受け入れ、人手不足に悩む会社へ人材紹介するサービスを開始するとの報道もありました。
わたしたちは、今後、就労を目的とした外国人の存在を、益々、身近に感じるようになることでしょう。
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2023年6月末現在、つまり今からちょうど1年前、わが国における在留外国人の数は322万人(中長期在留者+特別永住者)でした。コロナ禍以降、回復基調にあり、この傾向は今も続いています。
在留資格別にその数を見てみると、このうち一番多いのは就労制限のない「永住者」で全体の27.3%を占め、次いで「技能実習」で11.1%、そして3番目が「技術・人文知識・国際業務」の10.7%となっています。
先述の「特定技能」と云えば、対前年で最大の伸びを見せていますが、比較的新しい資格ということもあり、現状は5.4%ほどです。
さて、「技能実習」に次ぐ「技術・人文知識・国際業務」。主にホワイトカラーとして企業にお勤めの方に多い在留資格です。
入管業務に携わる者の間では通称「技・人・国(ぎじんこく)」と略して呼ばれますが、今や一般企業の人事部門の方の間でもこの通称で呼び習わされるようになっています。
この資格は、2014年の入管法改正で、企業などにおける専門的・技術的分野の外国人受け入れニーズに柔軟に対応するために、「人文知識・国際業務」と「技術」の区分を廃止し、これらを統合して「包括的な資格」としたもので、入管法でその資格該当性は次のように規定されています。
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動」
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「包括的な資格」と云われるだけあって、かなり活動(就労)範囲の広い資格となっているため使い勝手のいい資格と云えそうですが、反面、解釈の余地が生まれて取り扱いに迷うことも少なくなく、当局から明確化のためのガイドラインが出されています。
その中に『「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について』という文書があります。
入管法により「技・人・国」の資格で在留するには、原則として「学術上の素養を背景とする一定水準の業務に従事すること」が求められるのですが、企業などにおいては、採用当初の一定期間、研修としてそうした活動には該当しない実務に従事させる場合もままあり、その期間だけを取ってみると資格該当性に反する活動に従事させてしまい兼ねない期間が生じる恐れがあって、この文書はそうした場合の取り扱いについての行政の見解を示したものです。
ちなみに同文書に挙げられている実務研修の種類には、飲食店での接客や小売店の店頭における販売業務、工場のライン業務などがありますが、よもやこの活動だけでは「技・人・国」の資格は付与されません。
しかしながら、入管は、その活動が「日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間中の活動を全体として捉えて、在留期間の大半を占めるようなものではないようなときは、その相当性を判断した上で当該活動を“技術・人文知識・国際業務”の在留資格内で認める」とています。
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そして、この申請に際しては、「日本人社員を含めた入社後のキャリアステップ及び各段階における具体的職務内容を示す資料の提出をお願いする」と規定しています。
誤解を恐れずに云えば、外国人を含め計画的な人材育成のしくみ(=細かい要件はさておき)を有する企業にあっては、その活動を本来業務としない限り(=一部にそうした活動が含まれていたとしても)容認する可能性があるということです。
わたしは、常々、外国人雇用に乗り出すことを考えている企業さんには、そもそも外国人を雇用する意味は何なのかを問い、そうした外国人材を含めた人材育成に関するビジョンとその戦略を描いた上で、人材育成計画を文書化することから始めることをお勧めしています。
もし、そうしたことにしっかりと取り組んでいる企業さんであれば、こうしたことに懸念のある場合でも、しっかり書面を用意して申請してみる価値はあると思います。
わたしは人材育成プログラムの構築支援も業務として行っていますが、あるクライアントさんは、われわれと作り上げたプログラムをベースに申請を検討し始めるようです。
このガイドラインを正しく理解し、きちんと対処している企業さんであれば、計画的な採用によって幅広い業務を外国人にお願いする可能性が広がることでしょうし、外国人にとっては、習得する業務範囲も広がって働く意欲を高めることもできるでしょう。
外国人雇用には戦略が必要です。人手が足りないから外国人を採用するということもあるでしょうが、もうそれだけで外国人材を採用できる時代ではありません。
以上