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プロ施主の定義を勝手に再考
「プロ施主」という言葉、XやInstagramなどのSNSでここ数年よく見かける言葉です。見たことある方も多いと思います。
今回は、そんな「プロ施主」という「言葉・表現」について「住教育」目線から考えるところを書きたいと思います。住教育については↓の記事をご覧ください。
① そもそもの言葉の歴史について
プロ施主って言葉昔からあったものではなく、2021年くらいから見聞きするようになった造語です。この言葉の生みの親は新建ハウジングという業界新聞の代表取締役である三浦祐成さん。
いわゆる大手住宅メーカーの侵攻に疲弊していく、地方の住宅会社を応援しようと「地力」を磨き「地元」や「小規模」という特徴を活かしながら、地方工務店(住宅会社等)自らが成長していくための知識や手法を提案され続けています。
それこそ10年ほど前までは、僕も三浦さんの講演会によく参加しながらすごく刺激を受けていたところです。住宅専門の設計事務所(広い意味で地方の住宅会社)としては目から鱗のビジネス感覚を学びました。
② プロ施主の定義
定義についてあらためて調べてみましたが、どこかにしっかりと書かれているものはなさそうでした。ただ、新建ハウジング運営のnoto|ジモスム内のこちらの記事中でこんな風に語られています。
まず最初に「プロ施主」について簡単に解説すると、造語なんですが、いい意味でも悪い意味でも誤解されて広まっている感じがしてて。「プロを超える施主」という意味ではなくて、「プロ並みの意欲を持って家づくりをする」ということと、「プロシューマー/prosumer」という言葉があって(コンシューマー/消費者からの発展形)、自分たちで積極的に生産をする人たちのことを指すんですが、情報を生産する=自分たちの家づくりの経験をどんどん発信するような人たちがプロシューマーで、その情報を次の施主が参考にしていい家づくりが広まってほしいという。そんなポジティブな意味で「プロ施主」という言葉を造語してみたんですけど、いま結構誤解を受けているようで。
要約すると「プロフェッショナル並みの意欲を持っている」さらに「プロシューマー的に自ら学んだ家づくりの情報を(生産)発信する」人々のことを指すようです。この2つのプロを掛けたものだったんですね、知らんかった。
ついでに、ほかに定義の出典がないか検索してみると新建ハウジング本体のネット記事にもありました。
本紙では「プロ施主」を、理想の家づくりを目指し、プロ並みの知識欲をもって学び、正しく理解し、自らの経験や知識を提供する生活者(施主)と定義する。
だいぶ簡略化されたけど、ちょっと注意が必要な言い回しになっています、よーくジモスムの記事と新建ハウジングの記事を見比べてほしいです。
ジモスムの プロ並みの「意欲」を持って家づくりをする に対して、新建ハウジングの方では プロ並みの「知識欲」をもって学び、正しく理解し となっています。
「意欲」と「知識欲」内容を簡略化したであろうと想像できる人(今回のこの記事を読んでる人)であれば、知識「欲」を見落とさないでしょうが、初めて新建ハウジングの書いた定義を見たら「欲」の部分を見落とし 「プロ並みの知識を持って・・・」 と読んでしまわないでしょうか。
今回のこのnoteを書くにあたって、この定義を見つけたとき、一瞬ぼくも誤植かと思ったくらいでしたから。とにかく定義としては「学ぼうとする意欲のある施主」であることには間違いないようです。
③ プロ(プロフェッショナル)と施主、施主はプロになれるの?
定義のところで、プロフェッショナルとプロシューマーという2つの概念をを掛け合わせた造語であることは理解できました。プロシューマーの方は情報を整理生産し発信する施主のこと、といえばなんの誤解もないと思います。
問題はプロフェッショナルの「プロ」方です。三浦さんご本人も誤解や理解不足な言葉が一人歩きしていることを危惧されていました。分かりやすい誤解は「プロのような知識を持った施主」という解釈です。
一般的にプロフェッショナルとは「貨幣的対価が支払われる専門技術を持ったもの」であり、対義語はアマチュアになります。この解釈には基本皆さんも納得だと思います。
このことを前提にプロ施主(誤解的解釈)を言い換えてみると 貨幣的対価が支払われる専門技術を持った施主 となり、これはおかしいよねって感じる方が多いと思います。
つまり、施主は基本的にプロになれないということです。しかし、現実世界(特にSNS)ではプロ施主と呼ばれる、あるいは自称する人々が次々に現れ、本来のプロとの対立やプロ施主に対するアンチコメントも増えてきています。
④ プロ施主と家づくりのプロ(住宅会社)の現状
住宅会社側からは「プロ施主は面倒だ」「チグハグな要望の多い厄介者」「自分たちの要望が通らないとすぐにSNSに晒すモンスター」等々、散々なイメージなっている場合もあるようです。
一方、プロ施主側から住宅会社側を見ると「素人の自分たちより知識がないダメ工務店」「要望を叶えられない詐欺師」「プロなら当然知ってるでしょう」などなど、プロに対する期待感が高すぎる傾向にあるようです。
特に、これらの言い合いが発生しているのが高スペック系(高気密・高断熱・耐震性)の家づくり界隈です。この範囲はここ数十年の間に一気に進んだ技術や、大きく変化した概念が多く集まっているところです。
そういった分野だからこそ、知識や技術レベルに差ができやすく、インターネット等を使えばより深く情報収集も可能になっているため、素人がプロを抜くことがあるのもぼくは理解できます。
が、消費者であり施主であり素人である方からみると「えっなんで私たちより知識ないの?」となるのも当然ですよね。*先に書いている互いのコメントはあくまで言い回しのイメージです。
⑤ 住教育の視点からプロ施主を再定義 ”施主力”
本来のプロ施主とは、先にも書いた通り「プロフェッショナル並みの意欲を持っている」さらに「プロシューマー的に自ら学んだ家づくりの情報を(生産)発信する」人々 という解釈が一番いいと思います。
ただ、意欲(学び)の先にある生かし方には少し改良の余地があるのではと思います。もちろん、プロ側が技術の更新と学びを怠ってはいけないということは言うまでもありません。
その上で、住教育的な視点からプロ施主を定義するには 「最終的な目的がなんだったかを再認すること」 が必要です。現在のプロ施主は自ら学び、自ら施工者側への要望(指示)を出し、施工者はそれに従うものと言う構図になっています(すべてとは言いませんが)。
こんな状態で本来の目的である「いい家を作りたい」を実現させようとしたら、自ら全ての責任を取り、自ら全ての采配をし、自ら失敗の責任を負う覚悟がないといけなくなります。
実際手を動かしてくれる職人さんと細かな打ち合わせをしたり、時には台風や大雨による養生を気にしたり現場へみに行ったり、なかなか気が気でなく大きなストレスを抱えることになるでしょう。
性能やそのための知識だけでなく、家づくり全体を見ているのがそれを請け負う住宅会社なのです。決して知識不足を擁護する訳ではないことは当然として、その知識不足な部分だけを拾い上げ問題視し、住宅会社側へ意見するのは得策ではないのではないか、と思うところです。
誰しも自分がやっていることに対して文句言われたら嫌な気になると思います。これは家づくりを請け負った住宅会社(担当者とか)も一緒です。あまり細かなところまで口出しせず、任せてみてはどうだろうと思うのです。
「そんなことしたら、どんな家になるかわからないじゃないか!」
という声が聞こえてきました。そうです、ただただ任せっきりにしては、僕だって心配でなりません。
そこで出てくるプロ施主に変わる概念が「施主力」です。これはこれまでのプロ施主の方々同様、知識の集約化も納得できるところまでやってもらって大丈夫です。これまでと違うのはこの先です。
集めた知識をただ要望として出すのではなく、こんな暮らしがしたいからとより広い視点での希望を伝えていく。性能等の細かな部分を最初に伝えるのではなく、暮らし方を伝えるのです。
その段階で自分たちが想像する家を作ってくれるかどうかの判断をします。
「そんな判断できない!」
という声も聞こえてきますが、これが「施主力」です。施主力とは、細かな指示を出さずとも
「自分の理想とする家づくりを発注できる力」のことです。
これには、知識を深める以上の鍛錬が必要だと思います。コミュニケーション力や経済的余裕、経済的余裕というのは計画途中で自分が希望する家にするために追加費用が発生することが分かった時や、なんらかのトラブルで出費が出る時に、プロジェクト進行をスムーズに進めるためのものです。
精神的余裕も必要でしょう。コミュニケーション力にも通じると思いますが、担当者のちょっとした勘違いやミスに対して寛容さが持てること。厳しくいかないと手抜きされそうと思う方は、発注先を間違った可能性が高いです。契約自体はお互いが対等な立場で、信頼関係を構築する行為です。
多くの知識を手にされた施主であれば、その知識を意欲はあるけど理解不足な相手工務店に共有してあげたらどうでしょう。性能以外のところではすごく頑張ってくれている相手として、視野を広く持てるとしたら良好な関係で家づくりができると思います。
施主力という概念をここに書きました。あまり聞いたことない言葉だと思いますが念の為検索してみました。するとこちらがヒットしました。
なんとXで繋がってる「ファンタジスタふじもと」さんのブログでした。あらためて施主力について書かれてある内容拝見しましたが、全く同感で素晴らしくまとめられていました。
ファンタジスタふじもと さんのXでは、共感できる内容がよく発信されています。おすすめなのでフォローしてみてください。
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— ファンタジスタふじもと|家づくり (@fujimonchannel) July 19, 2024
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⑥ 最後に住教育的に整理してみる
施主力が大事で、細かなところだけをみるのではなく、もっと家づくり全体を俯瞰してほしい。これは施主側だけでなく、作り手側にも伝えたい感覚で、お互いが信頼関係を保つための努力が必要だということでした。
そういった意味で住教育は役に立つと思っています。
住教育とは
「住む」ことは、人と人、人ともの・こと、人と空間、人と環境など、さまざまな関わりの中で成り立っています。住教育では、そういった関わりを学び、考え、実践することで、社会の中で多様な価値観と出会いながら、自らの住生活を創造し、夢や希望を実現していく力をつけることをめざします。
この中で特に注目すべきは「自らの住生活を創造し、夢や希望を実現させていく力をつける」というところ。さらに・・・
「さまざまな関わりの中で」や「社会の中で多様な価値観と出会う」など、私たちが現代社会を生きていく上で非常に大切なことを示してくれていると思うのです。
この延長線に、家づくりにおける施主力もあると思うのです。
こんな住教育について少しでも知って欲しいなとの思いからラジオ番組始めました。熊本在住なのですが放送は群馬県桐生市からの発信となってます。
毎週日曜日の朝10時30分からの30分、住教育について自由な暮らしについて話しています。
また、FM桐生での放送が終わった後にはYoutubeやポッドキャストでも流していますので、フォローやシェアしていただけると嬉しいです。
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今回の記事が少しでも、家づくりに関わる全ての人の幸せに繋がれればすごく嬉しいです。