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Garmin、Oura Ring、Elite HRV(胸ベルト)で得られる心拍変動(HRV)

心拍変動(Heart Rate Variability: HRV)は、心臓の拍動のゆらぎを表し、自律神経系からみたコンディションを表す指標として扱われています。
HRVを表す具体的指標は色々あるものの、多くのウェアラブルデバイス・アプリケーションでは、RMSSDという指標を採用しています。
近年では、持久系スポーツのアスリートや愛好家の多くが利用しているGarminなどのスマートウォッチ等でもHRV(RMSSD)を測定してくれる機種も存在します。

今回は、私自身のある11日分のデータをもとに、Garmin(Garmin Forerunner255)、Oura Ring(Generation 2)、Elite HRV(Polar H10)で測定されたデータを比較したいと思います。
なお、これらのうち、GarminとOura Ringは睡眠時に受動的に測定がされます。
一方、Elite HRVでは、起床時に仰臥位で1分間能動的な測定をしています。
各データの扱いとしては、Elite HRVは論文で妥当性がきちんと確認されています(1)。
また、Oura Ringも医療グレードのデバイスと比べても、高い妥当性があることが論文で報告されています(2)。

異なる機器・方法で測定されたHRV
データ間の相関係数


まず、GarminとOur Ringの相関係数をみると、0.932と非常に高く、これはスポーツ科学の分野では「near perfect」(ほぼ完ぺきな)関係性と評価できます。
したがって、Garminで測定されたHRVも十分活用できるレベルのものでしょう。
個人的には、HRVを測定できるGarminをお持ちの方で時計を付けて寝ることに違和感や不快感を感じないのであれば、Oura Ringのようなリカバリーに特化したデバイスを新たに買う必要はないと思っています。

また、Garmin、Oura Ringで測定されたHRVとElite HRVで測定されたHRVの相関係数は0.5台と関係性はあるものの、傾向がやや違うことも見てわかります。
これは、妥当性の高低の問題ではなく、そもそも捉えようとしているHRVが異なることが理由です。
実際、ある研究でも、睡眠全体もしくは睡眠4時間分のデータでは、前日の生理的・心理的負荷を反映する傾向がある一方で、起床時に近い朝のデータでは、その日に控えるストレッサーとの時間が近いため、現在のコンディションに関するより適切な情報を提供するとあります(3)。
「現在のコンディションに関する適切な情報」というのがやや分かりにくいですが、私なりに解釈して記すと、例えば、前日はあまり負荷のかかる出来事がなかったけど、その日が緊張する出来事や試合などが控えていた場合には、睡眠時と起床時のデータには差が生まれやすいといったニュアンスになります。

最後に、大切なこととして、どういったツールを使うにしろ、異なるものであれば、測定時間や分析アルゴリズムが異なるため、数値は若干ズレてきます。
また、仮に同じメーカーやデバイスであっても、アプリやソフトウェアがアップデートされると、数値が変わることもあります。
特に昨今では、様々なデバイスが登場し、他者とデータを比較しやすい世の中になっていますが、こういったデータは基本的に自分自身のデータを比較するためにあります。
数値の絶対値そのものを他者と比較することで一喜一憂することに本質的な価値はありません。

また、ストレングス&コンディショニングコーチやパーソナルトレーナーなどの方で複数のアスリートのデータをみる場合でも、その絶対値を比較するよりも普段の数値に対する変化率だとか、変化の程度の差をみることが基本です。
くれぐれもデータの絶対値で優劣を決めにいくアプローチがメインではないことを心に留めておく必要があります。

■参考文献

  1. Perrotta, A. S., Jeklin, A. T., Hives, B. A., Meanwell, L. E., & Warburton, D. E. (2017). Validity of the elite HRV smartphone application for examining heart rate variability in a field-based setting. The Journal of Strength & Conditioning Research, 31(8), 2296-2302.

  2. Cao, R., Azimi, I., Sarhaddi, F., Niela-Vilen, H., Axelin, A., Liljeberg, P., & Rahmani, A. M. (2022). Accuracy Assessment of Oura Ring Nocturnal Heart Rate and Heart Rate Variability in Comparison With Electrocardiography in Time and Frequency Domains: Comprehensive Analysis. Journal of medical Internet research, 24(1), e27487.

  3. Nuuttila, O. P., Seipäjärvi, S., Kyröläinen, H., & Nummela, A. (2022). Reliability and Sensitivity of Nocturnal Heart Rate and Heart-Rate Variability in Monitoring Individual Responses to Training Load. International journal of sports physiology and performance, 17(8), 1296–1303.

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