土地から紡ぐ読書体験『シカゴ育ち』
好きな作家さんと同郷である別の作家さんの作品を読む。そんな風に土地を手がかりにした芋づる式読書の感想です。
シカゴつながりで写真をお借りしました。この場をかりて御礼申し上げます。
この作品を読みました
スチュアート・ダイベック 著, 柴田元幸 訳, 『シカゴ育ち』, 白水社, 2003, (もとは1992に単行本として出た本の白水uブックス版)原著は90年刊行で、ダイベックにとっては二番目の短編集にあたる。
ダイベック(1942-)はシカゴ生まれのシカゴ育ち。私がお気に入りの作家フリッツ・ライバー(1910-1992)とはシカゴ生まれという点で共通してるなあと思って、地球の歩き方を副読本に読み始めた。
あらすじ(構成)
この短編集では、短編掌編あわせて14本が、季節(冬、夏)や、事物(映画、夜更かしする人々)を基準に配列されている。
最初は、あるテーマに沿ってペアがひとつ出来て(つまり1作目と2作目でワンペアを形成する)、ペア同士のあいだには壁があると、いう規則性があるのかなと思っていた。たとえば、3作目「ライツ」と4作目「右翼手の死」は、(たぶん)一人称ながらも作中に出てくる特定の人物を語り手に帰すことが出来ないもの同士でワンペアだろう。
しかし、より緻密な紋様があるみたいだ。4作目「右翼手の死」は5作目「壜のふた」と****つながりでワンペアを作っている。4と5のあいだに壁はないらしい。
いずれにせよ、シカゴが舞台(と明言されて無くても、そうみなしてよさそうな土地を含めた)短編掌編が詰まった作品集だ。
感想
当分の間、カウント・ベイシー「4月のパリ」を聞くたびに、想像力をかきたてる絵面を思い出しそうだ。というのが、一冊読み終えた後の感想。つまり、収録作品のうち「夜鷹」を構成する「何もかも」が一番印象に残った。
同じシカゴ育ちでもライバーとダイベックではシカゴの扱い方が違う、ということを書こうと思ったのだけど、それよりもダイベックの「4月のパリ」だ。同じ土地を扱っていても作家によって扱い方が違って云々、みたいな話よりも「4月のパリ」だ。(もう一回)「4月のパリ」。
想像力をかきたてる絵面、といったらライバーも負けていないわけで、全然別のジャンルとして扱われてる作家同士でもも、共通点がなくはないのだなと思った。
付録:シカゴを舞台にしたライバーの小説
本記事の筆者が未だ読んでないライバー作品も多々あります。この作品もシカゴが舞台だよ、という情報ありましたら、教えていただけると嬉しいです。
パターン1. シカゴと明記されてる。
>「歴戦の勇士」
パターン2. シカゴとは書いてないが高架鉄道や動物園などシカゴに存在するものが出てくる。
>「煙のお化け」「魔犬」
パターン3. シカゴと明記されてるが未来の話
>「獣の数字」「交通戦争」