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意外と成果が出ていた英語学習

今日も今日とて、元気に惣菜屋でバイトをしている。

先日、ほとんど日本語を解さない英語話者のお客さんが来店した。
うちの店では、メインの惣菜は目の前のショーケースに出ているものの、調理を必要とするものはメニュー表に写真と価格が出ているだけだ。
英語話者のお客さん(5~6歳の子どもをふたり連れた女性だった)は、メニュー表を見ながら、しきりと首をかしげていた。
どうやら、しゃべるほうだけでなく読むほうもさっぱりらしい。
英語のメニュー表は置いてないんだっけ?キッチンにいた先輩に声をかけてみると、レジの下にあるという。
お客さんの様子を横目に確認しながらレジ下を漁ると、英語翻訳されたメニュー表が出てきた。
さっそくそれを見てもらおうと思ったが、いきなり無言でメニュー表を突き出すのは感じが悪かろう。なにかひと言添えねば。
なんだっけ、ほら、あのー、アプリで散々勉強したじゃん。まず敬語だ。それで言語につけるのはofでもatでもなくinだ。インイングリッシュ。
お客さんの目線を捉えて、訊ねてみた。

「Would you like to see the menu in English?」
(英語のメニューをご覧になりますか?)

すると、お客さんはパッと笑顔になって「Yes, Please アリガトウ」と返してくれた。わたしはホッとし、すかさず英語のメニュー表を差し出す。

やったー!通じた!

頭の中は小躍り状態だった。
やるじゃん、わたし。伊達に一年コツコツDuolingoしてないな。Duolingoさまさまだ。

お客さんはどうやらお店のイートインスペースを使いたいらしい。
惣菜をいくつか選んだあと、ドリンクについて質問された。
「……anything hot drink?」
そこだけ聞き取れたので、メニュー表を指さしながら、
「The only hot drink is coffee.」
(温かい飲み物はコーヒーだけです)
と、答えた。
お客さんはなるほどといった具合に頷いたあとで、それならやめとく、と仕草で伝えてきた。
会計をすませてキッチンで注文の品が準備されている間、またしてもわたしの前頭葉に光がさして、訊くべき言葉が英語に変換されて飛び出した。

「Would you like some water?」
(お水をご用意しますか?)

お客さんはまたもニッコリ笑って「Yes, Please! Thank you!」と返答してくれた。
なんてこった、わたしのwaterの発音が通じたぞ、おい。

その後、お客さんはお子さん達とゆっくり食事をとり、帰り際にわざわざレジまで来て「Thank you」と言ってくれた。
わたしの脳内小躍りは勢いを増し、ひょっとしたら自分で気づかなかっただけで、現実でもツーステップを踏んでいたかもしれない。
さすがに「またお越しくださいませ」は、即座に英語変換できなかったので、いつも通り日本語になってしまったけれども。

まさかこんな形で英語学習の結果が見られる日が来るとは思わなかった。
はじめから「ニュースや小説を英語のまま読めるようになったらいいなあ」「洋画を原語のまま聞き取れたらいいなあ」くらいのゆるい姿勢だったし、アプリゲームの延長みたいな軽いノリで始めた学習だった。
他言語を学ぶことで日本語への解像度が高くなることを期待した面もあり、いずれにせよ【文章を読むこと】を主眼において学習していた。
であるから、英会話ができるようになったとしても、それはもっとずっと先だと思っていた。
しかし、案外聞き取れるし、案外しゃべれるものである。
我ながらえらく感心した。

しゃべりたいことを母語以外の言語で出力してコミュニケーションをとるには脳の瞬発力が必要で、その瞬発力というのは日々どれだけその言語に触れて理解しているかが必要になってくる。当たり前だけど、一朝一夕にできることじゃない。
筋トレや体力づくりと一緒だ。きちんと土台を均して基礎を作り、正しい方法をコツコツ続けて、できることの絶対数を増やしていく。あとはよく食べて眠って回復と成長を促し、たまにチートデイを作ってパーッとリフレッシュする。そのくり返し。
使う部位が大腿二頭筋か言語中枢かの違いはあれど、やることは同じなのだなあとしみじみ感じた。
しかも筋トレも他言語学習も、年齢的な限界はナイと言われている(諸説あるらしいが…)。40代になろうが50代になろうが、続けていけばそこそこ結果が出るのだと思うと、ちょっとワクワクしてくる。

あー、それにしてもびっくりした。
びっくりしたけど、勉強したことがきちんと身になっているのを実感する機会なんてめったにないので、かなり嬉しかった。
せっかくなので、「ごゆっくりお召し上がりくださいませ」と「またお越しくださいませ」も、英語で言えるように練習しておこう。


今日はこれだけ。
では、また。


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