ボクシング。孤独な世界。
ジムの片隅でシャドーボクシングをするプロ。
見つめる俺。
見れば見るほど複雑な動き。
敵は想定内、想定外、顔をしかめながら動くボクサー。
シャドーボクシングの小世界に俺は宇宙の広さを感じる。
こんな素敵な孤独の世界があるとは!
救われた俺。
がむしゃらに真似をするが、しっくりとこない。
彼は彼。
俺は俺なのだ。
真似をするものではない事に気づく。
やればやるほどボクシングに無知な自分を発見する。
爪先から頭のてっぺんまで繊細な動き、リズムが必要。
そしてこうありたいという理想像が必要。
その為にはありとあらゆる工夫と修練、我慢が必要。
厳しい世界だ。
努力とは陰、まさにボクシングの世界がそう。
ボクシングで1番強い陰は、
減量だろう。
骨を削るような作業だ。
水分と栄養不足で唇はカサカサに切れている。
薬物中毒者のように目のくまが凄まじく、顔は一気に老け込み、乾いている。
潤いがまったくないのだ。
感情があると栄養補給や水分補給の欲求が日増しに強くなるので、減量中のボクサーは試行錯誤して感情を消し去る。
常に無表情。
何を考えているのかわからない。
何も考えていないのだろう。
そんな局地にいる。
彼等を支えるものはこうありたいという目標と、コップ一杯弱の水のみだ。
孤独な世界を愛せないと出来ないスポーツ。