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世界農業遺産 「能登の里山里海」

「能登の里山里海」について、解説いたします


引用元: 世界農業遺産「能登の里山里海」情報ポータル



〈目次〉
1.能登半島について
2.「能登の里山里海」について
(1)里山とは
(2)里海とは
(3)生物多様性が守られた伝統的な農林漁法と土地利用
(4)里山里海に育まれた多様な生物資源
(5)優れた里山景観
(6)伝えていくべき伝統的な技術
(7)長い歴史の中で育まれた農耕にまつわる文化・祭礼
(8)里山里海の利用保全活動
3.世界農業遺産とは



1.能登半島について
能登半島の地形は、低山と丘陵地が多いことが特徴です。また、三方を海に囲まれているため、遠浅の砂浜海岸や外浦と呼ばれる岩礁海岸、内浦と呼ばれるリアス式海岸を含む内湾性の海域と、海岸線も変化に富んでいます。


気候は日本海側気候型に属し、冬季には積雪がありますが、沖合を対馬暖流が流れているため、同緯度の他地域に比べて比較的温暖です。そのため、暖寒両系の動植物が生息する等、豊かな生物相が見られます。

能登半島は、土地利用、農林水産業、食文化、祭礼、工芸、生物多様性などにおいて、里山から里海までが密接につながり、一体不可分となっている地域です。

2. 能登の里山里海について
「能登の里山里海」は、日本列島のほぼ中央に位置する石川県の北部、日本海に突き出た能登半島の4市5町(七尾市、輪島市、珠洲市、羽昨市、志賀町、宝達志水街、中能登町、穴水町、能登町)に広がっています。

2011年(平成23年)6月、石川県能登半島に広がる「能登の里山里海」が、新潟県佐渡市の「トキと共生する佐渡の里山」とともに、日本で初めて世界農業遺産に認定されました。

(1)里山とは
里山は、集落、農地、それらを取り巻く二次林、人工林、採草地、竹林、ため池などがモザイク状に組み合わさって形成され、人が適度に利用することで、豊かな自然が形成・維持されてきた地域です。
里山は、人の生活・生産活動の場であると同時に、多様な生きものの生息・生育空間ともなり、さらには地域固有の文化や景観も育むなど多様な価値を併せ持っています。


(2)里海とは
人が様々な海の恵みを得ながら生活するなど、人の暮らしと深い関わりを持つ沿岸域を里海と呼びます。里海は生産性が高く豊かな生態系を持ち、魚類の産卵場所や稚魚の生育場所など、海の生きものにとっても重要な場所です。

 ■能登地域の農林水産業システムイメージ図 (「能登の里山里海」世界農業遺産保全計画(第3期)より抜粋)


(3)生物多様性が守られた伝統的な農林漁法と土地利用

天日で稲穂を干す「はざ干し(天日干し)」や海女(あま)漁などの伝統的な農林漁法が今も継承されています。

また、山の斜面を利用した棚田や谷間を利用した谷地田、農業用の水源となる2,000を超えるため池などがモザイク状に展開され、生態系が連続的に維持されるとともに、絶滅のおそれのある希少種を含む多くの生きものの生息・生育場所になっています。


(4)里山里海に育まれた多様な生物資源
シャープゲンゴロウモドキ、ホクリクサンショウウオ、イカリモンハンミョウなどの希少種を含む多くの生きものが生息・生育するほか、300種以上もの渡り鳥が確認されています。

また、中島菜などの「能登野菜」や能登大納言小豆などの在来品種の栽培振興も積極的にはかられています。


(5)優れた里山景観
日本海に面した急傾斜地に広がる「白米千枚田」(輪島市)をはじめとした棚田や谷地田、茅葺きや白壁・黒瓦の家並み、日本海の強い潮風から家屋を守る間垣(まがき)と呼ばれる竹の垣根などは、日本の農山漁村の原風景とも表現される景観です。


(6)伝えていくべき伝統的な技術
日本では唯一能登にのみ残る「揚げ浜式」と呼ばれる製塩法や、日本を代表する漆器「輪島塗」といった伝統工芸、里山の管理・保全と密接に結び付いた「炭焼き」などの伝統的な技術が継承されています。


(7)長い歴史の中で育まれた農耕にまつわる文化・祭礼
夏から秋にかけて、豊漁や豊作を祈願し、「キリコ」「奉燈」と呼ばれる高さ数メートルから数十メートルの御神灯が集落を練り歩く「キリコ祭り」をはじめ、田の神に感謝する神事で、2009年(平成21年)国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録された農耕儀礼「あえのこと」など、農林水産業と深く結びついた文化・祭礼が各地に継承されています。


(8)里山里海の利用保全活動
「能登の里山里海」を未来へ引き継ぐため、棚田オーナー制度や農家民宿、農林水産物のブランド化、多様な主体による生業(なりわい)の創出、行政と大学が連携した人材育成など、各地で特色ある取組が進められています。


3. 世界農業遺産とは
世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems(GIAHS):ジアス)は、2002年(平成14年)、食料の安定確保を目指す国際組織「国際連合食糧農業機関」(FAO、本部:イタリア・ローマ)によって開始されたプロジェクトです。

創設の背景には、近代農業の行き過ぎた生産性への偏重が、世界各地で森林破壊や水質汚染等の環境問題を引き起こし、さらには地域固有の文化や景観、生物多様性などの消失を招いてきたことが挙げられます。

世界農業遺産の目的は、近代化の中で失われつつあるその土地の環境を生かした伝統的な農業・農法、生物多様性が守られた土地利用、農村文化・農村景観などを「地域システム」として一体的に維持保全し、次世代へ継承していくことです。

国際連合教育科学文化機関(UNESCO(ユネスコ))が推進する世界遺産が、遺跡や歴史的建造物、自然など「不動産」を登録し保護することを目的としているのに対して、世界農業遺産は、地域のシステムを認定することで保全につなげていくことを目指しています。

認定地域は世界各国に広がり、2023年2月現在で24ヶ国74サイトとなっています。


以上

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