目的を共有したうえでの議論「写真にタイトルは必要か」
写真家の間ではしばしば「写真にタイトルは必要か」という議論が沸き起こります。おそらく絵描きの間でも「絵画にタイトルは必要か」という議論があるのではないでしょうか。
まず目的を共有する
議論に入る前に、目的を共有する必要があるでしょう。
お互いに目的を共有しないまま議論に入ると、大いなる勘違いが発生します。
写真を見せる目的・媒体
写真を見せる目的や媒体にはさまざまなものがあります。たとえば次のようなもの。
写真展
写真集
Webギャラリー
写真選考会
Instagram(展示 or お知らせ)
フォトエッセイ
絵はがき
雑誌の挿絵
記事のイメージ写真
イメージやメッセージを表現することに限定しても、上記のような目的・媒体があります。
さらに解説や取説のために見せるような実用的な写真を入れると、写真にはさらに多くの目的・媒体があります。
〇〇において写真にタイトルは必要か
やっと議論に入れるわけですが、
「〇〇において写真にタイトルは必要か」というように〇〇に目的や媒体を入れてみるとどうでしょう?
そうすると必要/不要はある程度、決まってくるのではないでしょうか。
写真展 → 表現によって異なる
写真集 → 表現によって異なる
Webギャラリー → 表現によって異なる
写真選考会 → おそらく必要なのでは?あるいは選考のテーマが必要
Instagram(展示 or お知らせ)→ 概ね不要でしょう
フォトエッセイ → 不要または補足的な説明が必要
絵はがき → いわゆるキャプションが必要
雑誌の挿絵 → たいてい不要
記事のイメージ写真 → たいてい不要
Instagramではハッシュタグがありますが、それはタイトルではありませんね。ハッシュタグは分類するため、興味を持った人に見せるためのタグです。
目的・媒体を絞って初めて議論ができる|写真展
というわけなのですが、たとえば「写真展」では表現によってタイトルの要・不要が分かれるため、さらに・・
どのような表現の写真展なのか
をお互いに共有する必要があるでしょう。
特定の地域を撮影した風景写真の場合、タイトルというよりは地名など撮影地のキャプションが必要でしょうね。
街角スナップはどうでしょうか?
わりとよくある議論において多くの人がイメージしている目的は、この「スナップ」界隈ではないかと思われるのですが、どうでしょうか?
「スナップにいちいちタイトルなんて要るか?」という疑問は当然かと思いますが、それとて「要らない」とは言い切れず、入れた方が効果的な場合もあります。
タイトルを入れることで写真を撮った状況が少し具体的に見る人に伝わり「あーなるほど」と思うこともあります。
抽象表現や造形
写真であっても具体性を排除して、抽象的なイメージを見せたり、造形の美しさを見せるような写真があります。
それはほとんど「抽象アート」なのですが、その場合にタイトルを入れると見る人のイメージが阻害されて表現を素直に受け止められなくなる可能性があるでしょう。
しかしこれとて、タイトルは不要とは言い切れず、入れたほうが効果的な場合があります。
写真だけでなく全体的な表現のなかに写真がある
「写真がすべてだ」と言い放つ前に、その写真を見せるシチュエーションは何なのかを確認する必要があるでしょう。
写真展の趣旨は何なのか。ストーリー(構成)はどうするのか。来場者に何を受け取ってもらいたいか、あるいは自由に考えて欲しいのか。
それらを考えると必ずしも写真だけでよいとは言い切れず、タイトルに限らずさまざまな演出が必要かもしれません。
また、展示する写真すべてに同じ考え方を適用する必要もありません。
まとめ
「写真にタイトルは必要か」という一言についてはさまざまな議論がありますが、目的や媒体をお互いに共有すれば、ある程度絞った議論が可能です。議論のスタートラインをまず決めないと、お話にならないでしょう。
上記の後半は「写真展」について書きましたが、媒体が異なると別の議論があると思います。そういったことをクリエイターがお互いに話し合うことは「気づき」になります。
どのような作品を見せて、どのような反響を得るかということにこだわることは、クリエイティブにとってはかなり重要なことだといえるでしょう。