ケチな小心者(他称)の限界旅行 in London
脳筋旅行主義者、またドケチ貧乏ソロ旅行に挑む
一生懸命卒論を書き、ついに一応の目途がついた私は、その勢いで卒業旅行にロンドンへ行くことにした。
ロンドンは、ビートルズを聴き始めた中学生のころからずっと、一番の憧れの都市だ。地図を眺めれば、聞いたことのある地名がずらりとでてくる。チェルシー、アビーロード、パディントン、(元祖)シティ、ウェストミンスター、などなど。行ったこともないのに聞いたことのある地名ばかりである。しかも、美術館も博物館も、国立のものは無料ときた。これには私の心の中のリトル春日も、小躍りせざるを得ない。
小躍りする春日(イメージ図)
別に私のような、座右の銘がドケチである人間ではなくても、ルーブルやMoMAがガンガン値上げしていく中で無料で耐えてくれているのは大変ありがたいことだと理解できるはずだ。
とにかく、私の死ぬまでに行きたい都市ランキングでロンドンは不動の一位であった。いま、行くしかない。きっと、ハイロウズが『ニューヨーク』のMVのサムネイルをアビーロードにしたときから、自分はそういう運命だった。
行先とだいたいの時期は絞られている。あとは具体的にどうするかだ。
調べてみて初めて気づくのは、ソロ旅のコスパの悪さである。生協で本を物色するたびに目についていた卒業旅行のチラシから、そこまで高くならなさそうだと高をくくっていたのが間違いであった。
2人で割るなら現実的な価格になるホテルも、ソロにしたとたんに値段がはねあがる。ツアーもそうだ。おそらくカップルやグループの大学生だらけであろう中に飛び込み参加することは百歩譲っていいとして、シングルの部屋を取るのにプラス5万や10万かかる。安くなるのなら赤の他人とダブルベッドを分け合うこともいとわない自分[1]であっても、相手を探すのは無理だった。航空券とホテルだけ用意してくれる最安値のツアーも、最小催行人数は二人。ぼっちに海外旅行は、この極度の円安のご時世、ますます風当たりが強い。成田悠輔も、大学生の卒業旅行の行先が海外じゃなくなって久しいと言っていた。テレビや新聞を見れば、やれ海外旅行に行く人が減っただの、ハワイではサトウのごはんを食べて節約するだの、不景気な話に事欠かない。要するに、日本人が贅沢できなくなったことの象徴が、海外旅行の敬遠なのだろう。世知辛い話である。
「まぁ、状況がどうあっても俺は諦めねえけどなぁぁぁぁぁぁぁ!!!地獄に落ちろ!!!!!!」(CV.永田智)
良くも悪くも意志の固さにだけは定評がある自分は、心にリトル永田も飼っているのだ。メディアどもめ、舐めてくれるなよ。
したがって、今回の旅では、リスク回避のために最低価格の一つ上で、評判がいいという2つの条件に合致したユースホステルと航空会社を利用することにした。
この賭けは成功する。そう信じてクリックをしたら、久々に大金が口座から消えていった。儚い、、、さようなら、俺の三か月分のバイト代。でも、石田ゆり子もいつかのアナザースカイで言ってたもんな。「お金って紙だから。経験に変えていきたい。」って。だから俺も、そうすることにしたってワケ。わかる?わかんないか~。
「じゃあわかるまで黙ってろ!!!!このボケナスクソリプマシーンどもめ!!!!」(CV.永田智)
ドキドキソロ旅行部! Doki Doki Solo Trip Club!
旅行代金を払って以降、異常なほどの過密スケジュールを綿密に作成した私は、家を出た。親父が思い付きで実家の最寄り駅まで送ってくれるというので、時間を30分も巻いて出発してしまったことが心配の種だ。空いている電車の中でキャリーバックを遠慮がちに開け、持ち物を再度確認する。
「歯ブラシある、下着も十分、ハンガーも入れた。よし!」
堅牢な作りのキャリーケースを再び閉じる。ん?
閉じる?
「あ!鍵がねぇ!」
そこから俺の冷や汗は止まらない。どれほど焦ったかというと、関空快速/紀州路快速に乗っているにも関わらず紀州路快速側の車両に乗ったまま日野根駅で移動し忘れ、そのまま3駅も進んでしまうほどである。あるあるだよね。なぁ、あるあるだよなぁ、みんな!!!
そんなときにおすすめのライフハックは、普段なら絶対に参考にしてはいけないはずの、教えて!gooの回答を読むことである。
ありがとう、メキシコの爺ちゃん!あなたのクレイジーな教えが、私の心を平静にしてくれました。助かルーモス!
みんなもトラブルに見舞われたときは、インターネットにある、デマとまでは言わないけど明らかに参考にしてはいけない類の話を参考にしてみよう。心が洗われますよ。
映画 『バービー』のギャグセンス ー私の笑いのツボはどこからやってきたのかー
映画を観るのは億劫だ。映画館には7年行ってない。
そんな私の唯一絶対に映画をみるタイミングが長時間フライトだ。今回は『バービー』をみてみた。普通に面白かった。
見終えて気づいたのは、自分が笑ってしまうもののほとんどが、インターネット的ノリやサウスパークみたいな悪趣味なコメディであるということだ。日本の王道的なお笑いの占めるパーセンテージは2割ぐらいだろう。ビジネスシーンでは政治と宗教と野球の話はしてはいけないと聞いたことがあるが、そんなもの向こうはお構いなしである。むしろハリウッドでは、文化は現実の政治にコミットするべきだと作り手も受け手も積極的に考えている節が見受けられる。まぁ、留学に行ってわかったのは、サウスパークをみて楽しんでるようなやつらは向こうでも異端者扱いされるか、それを隠している、ということだったのだが。
中学2年で『Chinpokomon』(原題ママ)[2]の面白さを知って以来変異してしまった自分の笑いのツボには、『バービー』でみられるアメリカンなギャグセンスがそこそこはまったのかなと思った。
Day1 うぃざ散歩 ロンドン着即15キロ無食事早歩きの巻 アビーロード~ロンドン中心部東側
アブダビからロンドンまで、本当はもっとイチャイチャしたかったであろう若い英国人カップルの横で地蔵のようになりながら、初めてハリポタの一作目をみた[3]私は、ついにヒースロー空港に着いた。遠すぎて正直アブダビで心が折れかけたが、旅はここからである。キャリーバッグは運よく無事だったので、上々のスタートだ。まずはチューブにのる。あー春休み。テンションが上がるぜ!もちろんピカデリーラインという無課金コースで約一時間半かけて、市内中心部へ向かった。
宿に荷物をいったん預けて、レッツゴー!
まずはアビーロードへ行く。宿の主な選定理由の一つは、アビーロードに近かったからだ。行こうと思っている人は、若干アクセスの悪いところにあるので注意してほしい。
ちょうどスタジオではストリングスのレコーディングを準備しているところだったらしく、コントラバスを運んでいるお姉さんがめちゃくちゃ大変そうだった。こういう人の努力で、最近であればノエルのスタジオライブとか録ったんだろうな、としみじみ思いながらその場を後にした。
散歩はまだまだ続く。地下鉄で移動して、ダイアゴン横丁に行くためにハリーとハグリットが通ったレドンホールマーケットや、変な形のロンドン市庁舎をはじめとする、いわゆる元祖シティである金融街からロンドン塔、タワーブリッジやグローブ座などを歩きまくった。勢い余って予定外であったセント・ポール大聖堂にまで入ってしまった。5千円弱もするのに。でも、楽しかったのでヨシ。頂上付近の展望台は、風が強すぎて命の危険を感じた。
完全にランナーズハイならぬ、散歩ナーズハイになったので、大英博物館にも足をのばす。大きすぎて全部見れないという話だったので、めぼしいところは初日で抑えることにしたのである。最後は夜のビックベンを見て、近くのパブで一杯決める。これで完璧な一日の完成だ。
パブに入って、店員にメニューを見せてくれと聞くと、「俺がメニューだ。」という。さすがローカルパブ。店員の気合が違うぜ。そしてロンドンプライドを頼んでカードで支払おうとすると、カードの支払処理が上手くいかない。どうやら機械の故障が起こったらしい。おかげでビール一杯に10分ぐらいまごついた。後ろで並ぶ英国おじさんたちもイライラして、カウンターで立ち尽くす私と慌てるI am the menu君をチラチラみる。い、いづれぇ~~。結局飲めはしたものの、こんなベストパブ賞を受賞したような高評価な店では珍しいであろうトラブルに初日から遭遇するなんて、もってる。記事にするしかない。そういうことにして、店を後にした。
本日の献立
・飛行機でもらって温存しておいた小さい水ペットボトル
・飛行機でもらった朝ごはん用の小さいベジタリアン用パン2個
・ロンドンプライド(ハーフパイント)
飴色のビール。みたことのない茶色なだけはある、独特な風味がする。これがロンドンの誇り。他とは違うぜ。
Day2 舐めるように全部見る!大英図書館・大英博物館・コート―ルド美術館見学
ビートルズファンにおすすめのロンドンの観光地は、ロンドンビートルズストアとアビーロードだけではない。大英図書館もマストレベルでおすすめだ。そこにはオリジナルの歌詞カードが飾られている。私が見に行った時には『A Hard Days Night』『In My Life』『Michell』の三つがあった。ちなみに写真撮影は、ビートルズコーナーだけ禁止されている。
他にも、マグナカルタや、美しいダヴィンチの数学に関するメモ、エニグマ解読のための機械、ヒュームが友人にルソーの被害妄想について、あいつはおかしくなって嘘をつきまくっていると伝える趣旨の手紙などが見れる。ほかにも色々面白いものが意外とたくさんあるので、余裕があればぜひ行ってみてほしい。建物内部もかっこいいですよ。
キングスクロス駅ではめんどくさくなってハリポタごっこをするのを断念した(決して一人で行っても写真を撮ってくれる人がいないと思ったからではない)が、二回目の大英博物館では全エリアを巡ることに成功した。やはり古代エジプトは猫派なので推せる。
パルテノン神殿の彫刻たちの迫力もすごかった。彫刻の一つ一つの”肉の塊”という感じが素晴らしい。定期的に政治レベルで揉めている曰く付きの品々だが、きっとギリシャ君は取り戻したところで、これらを無料で見せてはくれないだろう。
総じて大満足であった。
そして、一日目に巻いた甲斐あって早めに退館した私は、コート―ルド美術館へ向かった。印象派のコレクションが充実している、ロンドン大学付属の美術館だ。ちょうど山田五郎チャンネルでマネ先生の大傑作『フォリー・ベルジェールのバー』を解説していたので、ぜひとも行きたかったのである。サマセットハウスという美しい宮殿みたいな建物の一角にあるために各部屋の内装も大変凝っていて、ロンドンでフランスを感じることができるのが一粒で二度おいしい。
本来なら入場に2000円前後かかるところだったのだが、なんと、大学の学生証を見せたらタダで入れた。感謝・・・・!圧倒的感謝っ・・・・!「タダほど怖いものはない」でも、「タダほど高いものはない」でもなく、この場合は、「タダほどありがたいものはない」である。日本君、君はどうなんだね。見習ってくれやしないのかね。
感想としては、お目当ての作品はもちろん、セザンヌ先生の人物画のよさに気づけたのがうれしかった。山の絵も、日本の浮世絵っぽい構図とざっくりとした色塗りが心地よい。パースが歪んでる静物画もキモいい。印象派周りに偏りつつも、少しは油絵の知識と感性が高まってきて、審美眼が育ってきたのかもしれない。ちなみに、近くにはハローキティ―カフェ[4]があり、突然の日本要素の登場にビックリした。
晩御飯はYe Olde Cheshire Cheeseでフィッシュ&チップスとビール、アップルシードルをキメた。腹はめちゃくちゃ減っていたし疲労困憊だったのだが、それでも胃もたれして手が止まってしまうほどのボリュームと脂っこさに苦戦。あんなにホクホクでボリューミーなポテトは食べたことがない。最高。建物も歴史が長いだけあって探検のし甲斐がある。すきっ腹にアルコールが染みたせいでブレブレの写真ばかりになったフォルダが、いかに楽しかったのかを後日教えてくれる、大満足の晩餐となった。
本日の献立
・弟のためにまとめ買いされていた、ザコいスポーツ少年用ゼリー
・Ye Olde Cheshire Cheeseのフィッシュ&チップス
つい持て余してしまうほど油ギッシュ。でも味は保証する。ポテトは今回の旅で食べた中では一番好みだった。ギガントサイズなのにカリッとホクっと、上手に仕上がっています。
・Old Brewery Bitter(ハーフパイント)
ロンドンプライドと同じ系統のビール。どちらかというとこちらの方が好みであった。まったりとした、優しく飲みやすいお味。
・Cider Reserve(ハーフパイント)
普通においしい。間違いない。しっかしとした度数と、甘すぎず辛すぎない味のバランスがエクセレント。ビールはちょっと苦手だけど、イギリスっぽいアルコールを楽しみたい、という人はぜひ。
Day 3 ケチ大将のせかせか散歩 バッキンガム宮殿~ウェストミンスター寺院~バタシー発電所~ピカデリーサーカス~SOHO
冬のバッキンガム宮殿の衛兵交代は残念ながら、あの赤い服ではない。しかしながら、執念で一時間半前から居座り、宮殿の柵の前のいい場所を確保した私は、式全体及び生演奏を間近にみることができた。馬もバグパイプも長すぎる帽子もかわいい。イッツア無料アトラクション。ありがとうな、ほんまに。お上にめっちゃ楽しまさしてもろてますわ。
そこから歩いてウェストミンスター寺院を訪れた。足元を見れば、歴史上の有名人の墓がたくさんある。偉人の墓標を土足で踏むシステムに慣れない。ニュートン先生の墓は別格の扱いを受けていて、ダーウィン先生やホーキング博士の墓もあった。宗教施設であってもここはイギリスだから、自然科学勢も丁重に扱ってもらえるのかもしれない。
セント・ポール大聖堂同様5千円弱の入場料と高かったが、まあ建物の作りの凝り方が相当なものだったので許そう。個人的には天井と奥の間、そして中庭が綺麗だと思った。貸してくれるオーディオガイドには日本語のガイドもあったので、情報量を求める狂気に満ちた観光客は活用するべし。私はもちろん全部聴きましたよ。当然じゃないですか。
お次はバタシーパワーステーションへ。ここは、ピンクフロイドのアルバム『Animals』のジャケット写真の現場なのだが、最近リノベーション及び再開発されて、廃墟からイケイケのショッピングモールに変化していた。内装かっこよすぎ。南側はキラキラのおしゃれビルにおしゃれテナントでばっちり固めてあり、行政の気合が伝わってくる。パッと見てかっこいいと感じるデザインのはずなので、時間に余裕のある観光客は訪れてみるといいかもしれない。発電所の公式グッズも充実していて花丸。豚さんがかわいい。
最後はピカデリーサーカス周辺で買い物をした。「お前みたいなケチでファッションに一ミリも興味のないやつが、そんな渋谷のど真ん中みたいなとこに用事なんてあるのか?」と言いたいそこのあなた。それは、日本にいる私には当てはまる。しかし、今回は自分だけでなく、我が一族のメンバーという範囲でも一生に一度かもしれないという意気込みで臨んだ旅行だ。実家のオス2匹も、ここぞとばかりに服を土産に注文してきたのである。もちろん自分は昨年、パンツ3枚とTシャツ、ネルシャツ各一枚しか私服の衣類を買っていないが、服を買うなら渋谷的なところに行くのが王道だろうということぐらいはわかる。
一般的にイギリスではクリスマス商戦から一月末あたりまではバーゲンセールの時期だ。そのため運よく、スポーツ用品店で、ラグビーイングランド代表のウェアを半額でゲットすることができた。これもひとえに、一年で最も観光客が少ない時期に訪れたからである。必然たる偶然。フフフ……すべては計算済み。
散歩中にみつけたLibertyという一流百貨店は、床が軋みまくっているのに高級百貨店然とした堂々たる立ち振る舞いなのがナイスだった。
最後に、Last NightではないのだがSOHOをぶらぶらして、イギリスでしか食べることのできなさそうなご飯をしぶとく探す。その結果、アムステルダムで創業した、偽物アジア風焼きそばチェーンを発見し、プレーン焼きそばを食ってフィニッシュ。そろそろ体が限界に近づいている。
本日の献立
・昨日と同じザコゼリー
・Wok To Walkの焼きそば 四川味
屁みたいな味一歩手前の、ただの焼きそば。辛いので注意という表記があったのだが、辛ラーメンに慣らされてしまっていて、刺激がぜんぜん足りなかった。けど、それなりに安くてうまかったのでおすすめ。付属のソースをかけた方が美味いかもしれない。
Day 4 うぃーざー君の正直さんぽ お土産ショッピング~テートブリテン~The Troubadour
Daunt Booksは、世界でも有数のおしゃれな本屋さんだ。朝からイライラさせられる出来事(後述)に見舞われていた私にとって、そのファンタジー感あふれるデザインとかわいい本は癒しとなった。しかも、何も買っていないのに出ていこうしたら「Thank you」といってくれる、とっても愛想のいい店員さんまでいる。これが理由で、少しお高いオリジナルトートバックを買うことにした。自前の出版社も持っていて、マイナーな外国人作家の翻訳本も出版しているようだ。メリルボーンに寄る本好きな人は、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
そのあとは我が家の中坊のためのポロシャツを買いに、ロンドンビートルズストアに行った。お店ではビートルズオタクな会話をしたが、自分の英語をしゃべるための脳内エンジンがいかに鈍りきっているかを痛感する。しかし、そもそも恥をかいたり、失敗をせずに言語を習得できると思う方が間違っているので、仕方がない。次頑張ればいいのだ。(ポロシャツをTシャツと連呼して訂正されたのはまた別の問題である。)
毎日欠かさず文化的活動をするため、本日はテートブリテンへ。
ターナー先生のコーナーがめちゃくちゃしっかりしていて驚く。華々しいキャリアとは裏腹に、やっぱり超モヤモヤスタイルの絵は当時から理解されないこともあったのだなと学ぶ。ドイツを称賛した絵をかいてミュンヘンに展示のため送ったら破損して返却されてブチ切れたり、批評家の引っ掛かるコメントにブリティッシュな皮肉で応答したというエピソードが人間味あふれていて面白かった。当時の小型メモ帳サイズのスケッチブックに描いた小品も美しい。『近代美学入門』を読んでから行ったおかげで、いろいろと当時の画がどんなものであったかということへの解像度が高まっており、より楽しむことができた。教養は裏切らないと実感。
もちろんラファエル前派のみなさんの作品もわかりやすく美しい。『オフィーリア』の前では、朝の理不尽(後述)からずっとカリカリしていたこともあって、ちょっとウルっときてしまった。ぴえん。
晩御飯にはThe Troubadourへ。ここは、ロックが好きだからロンドンに来た、という人にはぜひ行ってもらいたいパブである。なぜなら、ボブ・ディランからポール・サイモンやジミヘン、ジョニ・ミッチェル、アデル、エルヴィス・コステロ、モリッシー、エド・シーランまで、ド級の大物がここで演奏してきたからだ。店内にはボブ・ディランのギターが飾られている。
ご飯もおいしく、ビールもうまい。同じようなものをだす店と比べると少し値段が高いと感じるかもしれないが、それは特別なロケーション代だろう。店内だけでなく、かわいい秘密の裏庭でもご飯を頂くことができる。私は夜に行ったが、昼に行くのもおすすめだ。
本日の献立
・宿の無料紅茶
飲める程度の味。とりたてておいしくはない。
・The TroubadourのSlow Braised Brisket Burger
約3300円の、上品でとてもおいしいハンバーガー。おそらくそれは燻製されたチーズと、じっくり煮込まれたジューシーな牛胸肉のおかげ。セットでついてくる普通のポテトは塩コショウをしっかり振るのが吉。
・Elvis Juice(ハーフパイント)
今回の旅で最も感動したビール。Brew Dogが作っているIPAという時点で間違いないわけだが、グレープフルーツフレーバーが、最強のビールに仕立て上げている。飲んだその場で日本のアマゾンに取り寄せ注文してしまったぐらい感動した。肉料理といただく場合のビールとして、マニアは一度試してみてほしい。飲んでみな、トぶぞ。
・Lost Lager (ハーフパイント)
同じくBrew Dogの作ったピルスナー。こちらは興味本位で頼んでみたものの、前者をおかわりすればよかったと少し後悔。これまで飲んだピルスナーのなかでは最も洗練されたクリアな味だったが、いかんせんクリア過ぎて、悪く言えばフックのない味になってしまっている。気軽にガブ飲みしていいのであれば飲むけど、わざわざ自分から金をだしては飲まないぐらいの味。逆に、日本のビールののどごしや風味が苦手という人には飲みやすいのかもしれない。
童話 ガムとかわいそうなおじいさん
今回泊まった宿は残念だった。まず、噛んだ後のガムが2つベットについていて、1つは除去する前に寝間着についてしまい、終始ネチョネチョして不快だった。
また、二段ベットや床が軋むのは仕方ないとして、下の段に泊まっていたおっさんがクズ野郎だった。
ホステルでは、周囲の人間が深夜や早朝にある程度ゴソゴソするということは当然である。プライバシーを捨てて安さを優先したのだから、エチケットといっても、他人が周囲を気遣うのに限界があることは了承のうえで利用するべきであるはずだ。イビキや光、音が気になる人は、音を出してしまうのはお互い様だと考えて、耳栓なりアイマスクなり、自助努力をまずしなければならない。そんなことはホステル利用二回目の私にだってわかることだが、あろうことかそいつは早朝に(といっても8時過ぎである)出かける準備をする自分をわざとらしい大きな溜息や目線で威嚇し続け、しまいには全裸のまま直接文句を言いに来ようとした。この初老の白人男性は、いったいこれまでの人生で何を学んできたのか。「もう終わります。うるさくしてしまってすいません。」と冷静に対処してやりすごしたが、次の日には忍者並みに音に注意して動いたにも関わらず、「You stupidly c**t!」というありがたい侮辱語を頂戴したので、部屋を変えてもらうことにした。
こいつに残りの旅を不快な気分で台無しにされ続けるぐらいなら、侮辱語一つで部屋を変えてもらう決心がついたのは結果としてよかったのかもしれない。しかし、あれだけ評判に注意して宿を選んだにも関わらずこのざまであることにはショックを隠せなかった。人並みのホテルに躊躇なく泊まれるぐらいの金を持ってない奴は、ロンドンのような都市に来るべきではないということなのか。しかし、それでも、私は行かなかった後悔に比べればマシだと証明したい。エピクテトス先生に学んだおかげで、私のアンラッキーからの立ち直りは早くなっていた。
とにかく言えることは、自分は、貧乏なうえに人間性までみっともないクソジジイにはなりたくないということと、金はかなりの程度不快なトラブルに遭うリスクを下げてくれるから、欲深く生きていくならば人並み以上に稼がねばならない、ということだ。
シャワーやラウンジ、受付の対応自体は悪くなかったので、もう少しベッドの清掃と悪質な客の排除を宿は頑張ってほしい。
Day 5 うぃーざーウォーカーチャンネル 文化の街、ロンドンの神髄を味わう。 元アップルレコードビル~SOHOでレコード屋巡り~ナショナルギャラリー
サイアクで不快な出来事のあった日は、快晴だった。クソジジイに気を遣って入れなかったシャワーを朝浴びて、清々した一日がはじまる。絶好の散歩日和だ。今日もガンガン歩いていこう。
しかし、ここまでで合計28.9km歩いてこれたのは、シャワー上がりのストレッチを欠かさなかったからだ。昨夜はそれがなかったため、腰に爆弾を抱えながらの観光となった。
まず向かったのは、元アップルレコード本社ビル。ビートルズが最後にライブをやった、映画『Let It Be』のあのシーンのビルだと言えばわかりやすいだろうか。中々ハイソな街の大通りを横に入ったところに位置している。ここでライブをやったって、そらヤンチャな話やな~ということを五感を使って確認した。さらに路地裏を進み、チャイナタウンでゴミ収集車に轢かれかけたあとは、お待ちかねのOasis『モーニング グローリー』のジャケットの撮影ポイントへ。狭い路地のくせにかなりの交通量だったが、30分粘ったおかげで本家よりもモーニング感強めのいい写真が撮れたのでハッピー[5]。
聖地を巡礼したら、お待ちかねのレコード屋巡りだ。まずはSister Ray Records。訪ねた思い出に、敬愛するニール・ヤングの『Zuma』のCDを購入した。なんの袋にも入れてくれなかったが、傷ついた自分には『Don’t Cry No Tears』で始まるこのアルバムが光って見えたのである。センチメンタルなフォークやブルースが好きな人は聴いてみましょう。
SOHOのラフトレードにも行ったが、結局ラフトレードはEast店もWest店も訪れた。おしゃれでイケてるロンドンのレコード屋は何度行ってもいい。
思いがけない訪問だったのが、Third Man Recordsだ。ジャック・ホワイトがやっているレコード会社なのだが、外装も内装もグッズもみんなセンスが良くておしゃれ。すべてがスズメバチみたいな黄色と黒で構成されたデザインで、ピカイチのセンスを存分に発揮していた。同じく、なんとなく寄れそうだから寄ったSounds of Universe Recordsでは、古着を購入。あまりにいい買い物ができたのがうれしくて、インスタに自撮りストーリーをアップしてしまった。ブチギレたあとだったので楽しそうには映らなかったが、これでいいのだ。いや~、散歩ってほんとうにいいものですね。
本日の観光のメインディッシュはナショナルギャラリーである。金曜日はなぜか延長して開館している施設が多いのだが、ナショナルギャラリーは特に長く、21時までという通常のイギリスでは考えられない開館時間の長さだったので、この日に行くことに決めていた。
内側からこみ上げる怒りと腰の筋肉痛という、精神と肉体の限界を試される鑑賞となったが、やはり、いいものは裏切らない。何度も辛くて座ってしまったし、クソジジイへの復讐心が心をかき乱してきたが、いいものは個人の事情などお構いなしにいいのである[6]。寒空の快晴だったため、天窓とそこから差す光がキリっとしまっていて、絵画を存分に引き立てていた。
ゴッホ先生の作品は複数点あった。『ひまわり』もいいが、カニの絵もかわいい。犬のかがやきのせいでカニのファンになっているからだろう。MoMAでみた『星月夜』みたいに油絵具の画面からはみ出すような狂喜乱舞を味わうというよりは、色の配置の妙と素朴さが重要な鑑賞ポイントだった。『レディ・ジェーン・グレイの処刑』は、ロンドン塔やウェストミンスター寺院に行ったばかりの自分には迫るものがあり、みた喜びもひとしお。”ロンドンでみた”という感慨を一番感じることができた。次はルーブルかプラド美術館に行きたい。
そんなことを考えているうちに、腹のすき具合が限界になる。毎日、日中はゼリー1個か紅茶しかエネルギーを摂取していないと、だんだん弱ってくるのは当然だ。だが、ここは美術館。そんな場所にある飲食店は間違いなく高い。まず奥手にあるレストランは避けて、少なくとも手前にあるセルフのMuriel’s KITCHENで食べるべきだ。そして、高カロリーかつ安いスイーツで抑えられれば上出来である。このような思考回路で導き出したのは、おいしそうで量もあるシチューのパイではなく、小ぶりで上品なキャラメルチョコケーキを食べることだった。(店員さんには購入時、「そのケーキだけでいいの?まぁ、大丈夫だよ。節約していこうぜ!」と屈託のない笑顔で言われた)
味は、甘ったるい。このサイズでも、超空腹でなければおいしくいただくのは困難だっただろう。しかし、体は正直である。正月に拡張しきっていた胃が、カロリーじゃなくて、腹にたまるものを入れてくれ、と鳴いている。
ざわ…ざわ…ざわ…ざわ…ざわ…………
「すいませんっ、パイを一つ、くだ、、さいっ……!!!。」
くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!
ほく ほく ほく
うまっ・・・・!さいこ~~っ・・・・・・・!ひぃ~ひぃ~~~っ・・・・・・・!!!
いつもザコゼリーかザコ紅茶だけで朝昼やりすごしてきたからな・・・・・・
で・・・・・ビールが・・・・・・・・・・・
グビッ グビッ
「かぁ~~!」喉までキンキンに冷えてやがるぜ!!!
とまではいかず。今晩は飲まなかった。ご期待に沿えず、申し訳ない。
己には負けてしまったが、あんなに味わって食べられたシチューパイも珍しいだろう。
そして、平穏を取り戻した宿で、信じられないぐらいの大イビキをかく男の隣にあるベットに泥のように倒れ込んで眠った。色々な面で最も過酷だった一日は、こうして終わったのだった。
今日の献立
・ザコゼリー最後の一個
・Muriel’s KITCHENのChocolate Cake
小さいチョコの塊にキャラメルソースが入っている。約1200円。見た目のかわいさと甘ったるさがコーヒーを強く必要としていたが、さすがにコーヒーまで頼むのは贅沢だと思い、コロンとこれ一個、あとは水道水でやりすごそうとして失敗した。
・Muriel’s KITCHENのChicken pie
食欲への敗北を記念する食べ物。2600円ぐらいしたが、できたてホクホクをきちんと保てるようにしてあったので激うま。サクサクのパイを崩して、旨味のしみ込んだシチューを浸せば至福の時間がやってくる。まぁ通常の条件ならカイジさながらの大げさな感動は湧かないだろうが、普通においしいと感じるであろうことは固く保証しよう。
Day 6 うぃーざーが歩く! ウォーキングのうぃざ太郎 チェルシー~ノッティングヒル~ハロッズ~ハードロックカフェ
本日は土曜日。忙しないロンドンも、さすがに土日は少しだけまったりとする。公共交通機関も土日祝ダイヤなので、歩きメインになるのは必至だ。本日は曇り。通常運転のロンドン。まずは、ロンドンパンクの聖地、チェルシーにある、ヴィヴィアンウエストウッドの第一号店に向かう。このこじんまりとしたブティックからセックスピストルズの歴史は始まった。外装も内装もかわいい。しかし、別にブランド自体には大して興味がないので開店前に写真を撮ったら満足してしまった。
次は徒歩で、プレミアリーグでも屈指の金満チーム、チェルシーFCの本拠地へ向かう。やっぱりチェルシーは、ロゴがかわいい。ドヘタサッカー少年だった小学生の頃、デザインがかわいいので大人用サイズのチェルシーのサッカーボールを買ってしまった時から好きなチームだ。言わずもがな、にわかファンである。公式グッズはどれも魅力的で、うっかりマフラーを買いかけたが、白熊のぬいぐるみだけにしておいた。多分あのマフラーは、日本で一人で身につけたら魔法が解けてしまう。
本日の文化的活動はV&Aミュージアム。ウィリアム・モリス関連の展示目当てで行ったが、シャーロックホームズのコートはめちゃくちゃ重たかったし、トラヤヌス帝の記念柱のレプリカは半分にしないと建物に収まらなかったらしく、そのスケールに脱帽した。古代ローマ人はこんなに凄かったのか。本物を見にいきたくなった。
日本の展示スペースは東芝が主催していたのだが、その日本スゴイ(すごかった)んだぞ!みたいな内容の説明文が、今の東芝君がいうと自虐的なジョークにしか思えず、笑えた。
悪趣味すぎて逆にかっこいい唇ソファー(ダリ監修)や、Wi-Fiにつなげて音声を記録し、やり取りができるというのが目玉機能だったのにサーバーがハッキングされて自主回収することになった、見た目だけでなく機能とその顛末まで非常にアメリカンなバービーまで、いろいろあって楽しかった。
その後、ノッティングヒルのマーケットに向かった。例の書店もにぎわっている。この路上市場は、その一帯がそもそもアンティークのお店やレコード屋、雑貨屋の密集している土地で、古着屋さんもたくさんあった。しかし、次の日に行ったショーディッチの方が、平均的な質は高かったように思う。全体として、観光客向けになりすぎている感じがした。しかし、『Bryter Layter』のオリジナル盤や『ZUMA』のオリジナル盤などを見かけてテンションが上がることももちろんあったことは付け加えておきたい。
お次は英国を代表する老舗デパートである、ハロッズへ向かった。阪急が酷似したロゴを使っている。まずは外観がいい。電飾がクリスマスシーズンの余韻を残してくれていて、素敵だった。そしてエスカレーター。やたら古代エジプトテーマパーク感が強い。最悪買い物をしなくても、面白い内装で十分何らかのアトラクションを体験した気分になれるだろう。おすすめのお土産は、アールグレイのティーバック50袋入り。価格よし(1200円弱)、味よし、見た目よし。二杯強ぐらいが1パックでとれます。
今宵の晩餐はハードロックカフェ1号店で。伝説的ロックスターのステージ衣装から機材まで、最高に楽しい店内。ハンバーガーは高級であったが、これは日本でもお高い価格設定だし、間違いないおいしさだったので問題ない。
豊富に飾られていた展示のなかで一番アツかったのは、Iggy Popの、Sex Objectといてあるサテンジャケット。さすがディオ! おれたちにできない事を平然とやってのけるッ そこにシビれる! あこがれるゥ!
身体は限界を超えることに順応し、宿でも不快なことは起きず。
なにもないことが 幸せなんだなぁ
うぃざを
今日の献立
・Fresh Bake のClassic English BLT Melt
昨日の敗北もあって無食で昼まで過ごしたが、その我慢の末に出会ったこのパンは最強においしかった。スタバの完璧に温めてくれるマシンみたいなやつを導入しているらしく、アツアツの焼きたてパンとベーコン、新鮮なレタス・トマト がとろけるチーズと重なり合って、至高の朝・昼ごはんでした。おすすめです。
・IRN BRU
スコットランドのエナドリ。みたことがなかったので、小腹を満たすために飲んでみた。屁みたいな味だった。かなり薄めた、はちみつ感は皆無の微炭酸デカビタという感じ。ロン缶で安かった(約150円)ので、のどが渇いてしまった情報量旅行主義者には、試す価値があるだろう。
・Legendary Burger
私は基本的に看板メニュー主義者なので、初めて行くお店では一番人気のメニューを頼むと決めているのだが、ハードロックカフェは払った対価(約3600円)に見合ったハンバーガーをだしてきたと思う。
・Coca Cola
一見イギリス感皆無だけど、The Kinksが『Lola』のコカ・コーラバージョンを作ってたので、そういう繋がりです。決して、金が惜しくてビールを頼めなくなったとかではありません。
Day7 出没!アド街ック天国 「日本人行きがち?定番観光地 カムデンロックマーケット」 「近年のロンドンの流行はこのエリアから!イケてる若者の街、ショーディッチ」
ザコい紅茶をしばいて、バスでカムデンロックマーケットへと揺られる。ここは、The Clashが『白い暴動』のジャケット写真を撮影した階段がある市場だ。エイミー・ワインハウスの地元でもある。最近リニューアルされて、古い雰囲気と尖ったショップはそのままに、ほどほどにキレイに整備されている、超定番観光スポットだ。ポイ捨てゴミも目立つが、運河のあたりは風光明媚な感じもする、独特のロケーションである。法律によりすべての店の営業時間が短い日曜日だが、店が開き始めた瞬間に例の階段の写真をとって、満足した後はぶらりと物色した。
驚いたのは、別々の店員2名から、「お前、日本人か?」と言われたことである。いいスモールトークが交わせた。やはり移民の英語は聴き取りやすい。
ここに入っているドクターマーチンのショップは小さな博物館になっている。歴史とロックスターやパンクスのマーチンブーツの関係を学んで、まんまと欲しくなってしまった。でも絶対に足に合わない自信があったので、見る専にしておくのが財布と身のためと思い断念。
次に向かったのはロンドン東部の、ロンドンで最もイケてる街、ショーディッチだ。いくつもの市場が開催されているのだが、まずはオールドスピタルフィールズマーケットへ。ここで朝ごはんに食べたジャムパンが最高においしかった。だんだんと異常な物価にも慣らされてきて、純粋に食を楽しめるようになったのはいいことだ。広い天井付きの市場では、手作りの雑貨から古着、おいしいストリートフードまで、なんでも売っていて、大層にぎわっていた。私の今回の旅行で一番おすすめできるマーケットはここである。カムデンロックマーケットもいいが、こちらの方が全天候対応で、綺麗に整えられている。
市場から市場へと歩き続けると、サンデーアップマーケットにたどり着く。屋台が中心であったが、その他の店もあるし、その建物から巨大地下古着屋市場に行くこともできる。ガラにもなく服を物色しまくった私は、ハードロックカフェのデザイナーズ古着を16000円で買ってしまった。これは現時点で最も高額な私服の買い物なので、今これを読んでいるあなたが私に会ったとき、これを着ているのを見かけたら、「その服かっこいいね!」と言ってほしい。余計な批評の言葉は受け付けていない。褒め言葉だけくれ。
総じて、ショーディッチには若者の活気があった。地元民が多めな形で繁盛している様子なのが好ましい。古着屋がとにかく多くて、好きな人にとっては地上でも指折りの天国だろう。前述の通りまったく服に明るくない私でも楽しめた。レコ屋もちらほらあり、大きめのラフトレードもここにある。
この旅の最初で最後のおやつに名物のベーグルを食べた後は、Princess of Shoreditchで食事をいただくことにした。値段に愕然とした上に席が埋まっていたので一時間弱外で待機したが、寒さなんてへっちゃらだ。なんてったって最後の晩餐である。妥協は許されない。服装に気を遣わなくてはならない高級レストランやアフタヌーンティーを断念した[7]代わりに、評判のいいガストロパブの実力を試させていただくのはまっとうなことである。
この店はサンデーローストが有名だ。サンデーローストとは、言ってしまえばローストビーフのことであるが、それだけでなく、可能な限りすべて英国産の食材を使うのにこだわっているのが特徴で、どれもおいしかった。日曜日は、2品か3品を選び、コース料理のなかでもどれにするか選択するというシステムだ。私は、「伝統的なイギリス料理3つで。」と注文してみたので、行く人は同じように注文してみたらいいかもしれない。9000円ちょい払う勇気があればの話だが。
今日の献立
・Donovan’s Bakehouseのストロベリー&クランベリージャムパン
めちゃくちゃおいしかった。500円弱でこのおいしさは価値がある。もちろんカスタード味などもあるが、クランベリー味のものなんて日本ではなかなか食べられないし、酸味と甘さが完璧なハーモニーを奏でているので、チャンスがある人は食べてみて欲しい。おすすめ。
・ブリックレーンベーグルベイクのソルトビーフベーコン
ショーディッチの名物ストリートフードはベーグルである。日本の各旅行雑誌やブログでも大変ほめそやされている。普通においしかったが、マスタードがかなり入っているので、それが苦手な人は向かないだろう。値上がりして1200円ぐらいだが、支払いにカードが使えるようになった。朝ごはんかおやつにどうぞ。
・Beavertown Neck Oil(ワンパイント)
めちゃくちゃおいしかった。Elvis Juiceと同率一位のビール。IPAの中でも華やかな香りが抜群によくて、飲みごたえも十分。グラスのデザインもめちゃくちゃかわいい。勢いで奮発してワンパイントで頼むという賭けに成功した。すべてのビールに感謝。
・Princess of Shoreditchのコース料理(日曜日メニューのページから、食べたと思わしきものを転載。)
前菜 Citrus salmon, pickled cucumber, horseradish, Tomatoes, goats curd, tomato consommé, balsamicで構成されたプレート。
爽やかな味の前菜だった。サラダは酸味が効いてて普通においしかった。サーモンはサーモンです。
メインディッシュ Yorkshire Dales sirloin of beef, horseradish cream
Free-range chicken, sourdough sauce, Plantation pork loin, apple sauce
要するに、ローストビーフとヨークシャープディング、サラダとポテトだった。肉はイギリス産で、ジビエではないのだが、例えるのならそれが近いワイルドな風味がしておいしかった。久々にまともな量の野菜を摂取できたのもうれしい。ご賞味あれ。
デザート Sticky toffee pudding, vanilla ice cream
また現れた、激甘系のチョコレートスイーツ。多分、砂糖の塊をかじるよりも甘い。アツアツで提供されるのが常なのだが、その上のヴァニラアイスと一緒に食べれば最高。ただし、絶対に甘いものが苦手な人は頼まないこと。
Day 8 さらばロンドン、また逢う日まで。
とかいいつつ最後までがっつり観光。 パディントン駅~ケンジントン宮殿・ガーデンーハイドパークーロイヤルアルバートホール~テートモダン
最終日の朝。朝ごはんに果肉たっぷりオレンジジュースと、まずいと評判のポットヌードルをいただいた私は、パディントン駅に向かった。
ブルネル先生が設計したこの建物もそうなのだが、駅舎がどれも素晴らしいのは間違いなくロンドンの大きな魅力の一つだろう。少なくとも、ヒースロー空港から街の中心部に向かうまでの片田舎の駅以外、全部が個性と歴史を備えていた。これに対抗できる街は世界中どこを見渡してもないのではないだろうか。
例えばベーカー街駅(シャーロックホームズで有名な駅)は、昔からの増築に次ぐ増築で、駅の地上から地下まで各エリアで異なった雰囲気を有しており、文字通り、時代の層を感じることができる。ウェストミンスター駅は逆に、まるでターミネーターのアトラクションの一部みたいだ。ロンドンの人々も駅のことは一つ一つ大事に思っているようで、駅のホームには歴史を説明するコーナーが必ず設けられていた。車内が狭くて丸いチューブも、アンダーグラウンドのサインも、鉄オタじゃない人がみてもかわいらしい。みるからに不安げな表情のパディントン君だって、一つの主要駅の、長い歴史の一部に過ぎないのだ。
さんぽと銘打ったタイトルをこれまでにしながら、落ち着いてゆったりとした時間を過ごす、さんぽというさんぽをしたのは最終日だけだった。ケンジントンガーデンもハイドパークも、鳥だらけ。真冬でも青々とした芝や森を背景に、かわいい姿を見せてくれる。
ロイヤルアルバートホールでご老人の群れと一緒にコーヒーとケーキをいただけるほどに財布の紐を緩められるようになったと思えば、最終日である。寂しいけど、ほっとするわ~。もう今日の夜には、ロンドンを離れると思うと、さびしいねぇ……ならば、・・・・・・・・
「ダメ押しで!!!!!!美術館追加じゃい!!!!!!」(CV.永田智)
ということで、テートモダンに行ってきました。MoMAでポップアートのコーナーが閉まっていた恨みを晴らすべく向かいましたが、予想通りとっても素敵な場所でしたよ。日本人も含めて世界各地の現代アーティストの作品を取り扱っているのが印象的でした。急いでみてまわったので感想は以上です。
さらば、ロンドン。本当にありがとう。タダでいろんなものを見せてくれて。
合計徒歩移動距離 51.6キロメートル。正月太りを解消できました。
本日の献立
・宿の無料?オレンジジュース
果肉たっぷりでおいしかった。人生ベストオレンジジュース。勝手に飲んだが、本当に無料のサービスだったのかはわからない。
・ポットヌードル
マッシュルーム&チーズ味にしてみた。こちらも屁みたいな味。タイ米を半年間食べ続けても問題ないようなレベルで雑食な人間なのでまずまずの味だと感じた。ひょっとすると、食えないほどマズい食べ物だったのかもしれない。
・Royal Albert Hall のチョコレートケーキとアメリカンコーヒー
最後の最後にまた糖分の塊をいただいてしまった。見た目がかわいくってついつい…でも、今回はコーヒーがあったからとってもバランスが取れていて、最後の三口以外はもて余さずにおいしくいただけました。エッヘン。
最後の試練 アブダビ13時間待ち
無事ヒースローを発ち、アブダビまで帰ってきた。ここから13時間待ちが始まる。幸い、儲かっているがゆえに心が広い国なので、空港のWi-Fiは時間制限なしでずっとつなげることができる。ネトフリのラグビーのドキュメンタリーをみたり、周知されていなかった空港の防火訓練が始まり、注文しようとした矢先に警報音を鳴らしてシャッターが閉まっていくバーガーキングにポカンとしたりしていたら何とかやりすごせた。
飛行機旅に慣れていない行儀のいい人は、飛行機のシートで横になったり、空港のベンチで半野宿状態になったりすることに抵抗があるかもしれない。しかし、円安にあらがってでも、決して経済的に豊かでなくても、海外旅行をエンジョイしたい!というパンクなパッションがある人は、これぐらいの一時の恥は捨てれるようになっておこう。
アブダビから関空へはスムーズにいった。サバの味噌煮と言われて出された機内食が一体どう解釈したらこうなるのかというぐらい変な味付けで、周囲の日本人乗客みんなでクエスチョンマークを頭に浮かべた以外は特に何もなく、無事平穏に家まで戻ることができた。
実家が諸事情で全窓が雨戸で閉めっぱなしの生活になっており、2週間部屋に日光が差し込まなかったり、緊張の糸が切れたとたんに風邪になって5日ぐらいかなり調子が悪かったのは良しとしましょう。
これにて、一件落着。めでたしめでたし。
本日の献立
・アブダビの侍マックみたいなハンバーガーのセット
スパイシーさがちょうどよくて、これを欲してたとばかりに一瞬で食べきってしまった。この香辛料が効いている感じが中東テイストなのだろう。普通のセットで2000円弱払ったことは度し難いが、これも旅の醍醐味。どうせ日本ではファストフードすらろくに食べないのだから、旅行の時ぐらいハンバーガー3回食べたっていいんです。え?あぁ、行先はイギリスですよ。アメリカじゃないっす。・・・・いや、いいでしょうが!ヨーロッパに行ったのにハンバーガーばっかり食ってた旅行になってしまったって!どこで食っても間違いなく美味いんだよ?ハンバーガーにしとけば!お前もハンバーガーもっと食え!
脚注
[1]実際に、シカゴに行ったとき、3泊を赤の他人とダブルベッドで過ごした。もちろんなにも起こらなかった。ほんとうに。
[2]気になった人は下のwikipediaの概要の項目だけでもみてみてほしい。私は最高に面白いと思う。悪趣味な人間なので。
[3]『賢者の石』の感想としては、ハリーは底辺の扱いからあんなに急に持ち上げられて、よくゴミクズ野郎にならずに済んだなと思った。二作目も嫌な家族の描写から始まったので、心が折れてそれ以上みていない。ドビーが悪い子なのはわかりました。もう充分です。映画でまで下らない人間の理不尽をみるのは辛いです。
ファンの方はぜひともこんな私に、ハリポタを再度挑戦するための進みかたを教えてくだささい。一般常識として、履修したいとはまだ思ってます!
[4]このあと、V&A Museumでもハローキティを見かけるのだが、それは彼女がロンドン郊外出身という設定だからだ。実はロンドンっ娘なのである。
[5]まぁ、帰ってからOasisファンの人に写真を見せたら、第一声が「人がいねぇな」だったが。あのねぇ、単独で限界旅行してる人は、自分が映る写真を名所で撮るという選択肢なんてないんだよ?いじめないでくれるか?泣
[6]ここに宣言しよう。私にとって単独旅行とは、1日1日がトライアスロンのような、過酷極まりない競技に等しいと。心・技・体をいかに整え、ベストをだすことができるか。それがよい結果につながるのである。
[7]ちなみに、私のこの旅行の基本装備は、コロンビアのダウンジャケットの中に半袖のTシャツ(2800円)、しまむらで買った黒のペラッペラの長ズボン(1600円)、2年履いているアシックスのザコ靴下、4年物の灰色のNew Balance 996 (16000円)である。絶対にドレスコードを要求してくるような場には入れない。
参考文献・引用資料
井奥陽子,2023,『近代美学入門』筑摩書房.
教えて!goo, 2017 2024年2月22日最終アクセス(https://oshiete.goo.ne.jp/qa/10154110.html)
プリンセスオブショーディッチの日曜日のメニュー 2024年2月23日最終アクセス(https://theprincessofshoreditch.com/menu/sunday-menu/)