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『思考を耕すノートの作り方』読んだよ

倉下忠憲『思考を耕すノートのつくり方』読みました。

(有限の蔵書スペースの都合上できるだけKindleで買ってる江草ですが、本書は装丁が素敵だったのであえて紙書籍で買いました)

著者の倉下氏は知的生産技術クラスタでは知らない者はいないであろう、界隈のリーダー格的存在の方です。情報を集め、整理し、考えたり記録したりする作業のノウハウや思想について、とても深い見識を持ってらっしゃいます。

ごりゅご氏と共同運営されてる書評系Podcast「ブックカタリスト」も面白いですし、江草的に推しの一人です。

「ノート」についての造詣も深く、以前もノートをテーマとする『すべてはノートからはじまる』という書籍を出されてました。

これは江草も大変感銘を受けた一冊で、なんやかんやあれこれ書きまくる生活を続けている思想的支柱になってる気がします。

で、この前著が「なぜノートなのか」という思想寄りの内容であったのに対し、今回の『思考を耕すノートのつくり方』は様々なノートの使い方を列挙紹介する、より実践的な内容となっている印象です。

本書はデジタルノートについても触れられてはいますが、アナログノートの使い方の紹介がメインです。(なお、倉下氏自身はデジタルノートツールについてもめちゃくちゃ詳しいので、本書ではあえてアナログノートに主軸を置いてるのだと思います)

江草は普段、DraftsとDay OneとObisidianなどのデジタルツールでPKM(Personal Knowledge Management)を回していて、アナログノートは日記とかフリーライティング的な一過性のアイディア出しに使う程度でした。

ただ、最近ちょっと個人的にアナログでプロジェクトノート作りたいなあと思うことがあって、それでどういう風にやったらいいかのヒントがあるかと思い、本書を手にとってみたのでした。

本書の面白いところは徹頭徹尾「ノートをこういう風に使うべし」のような教条主義的なノート術の押しつけを排しているところです。「万人にとって良い」などという共通の最強の唯一無二の絶対的正解的なノート術なんてものはないときっぱりしています。

本書はそのような教条主義的なノート術の指南書ではなくって、個々人の個性や目的によってそれぞれふさわしい「ノートの使い方」は千差万別であるとした上で、様々なノートの使い方を紹介されてる、いわばガイドブックということになります。

実際、ノートの使い方の可能性はあまりに自由であるがゆえに、迷子にもなりやすい。だから各自がそれぞれにフィットするノートの使い方を見つけるための足がかりとして、ノートの構成要素の意味であったり、様々なノートの使い方の紹介をされてるという立ち位置ですね。

江草が以前書いた「オープンワールドゲームは自由すぎるからプレーヤーが迷子にならないようにメインクエストというガイドが用意されてるけれど、そのクエストを外れることを否定しているわけではなく、むしろ外れることが醍醐味なんだ」という記事にも近い感覚があります。

他で言うと、読書猿氏の『独学大全』も近いでしょうか。

この本も、学び方は人それぞれであるというスタンスでありつつ、しかしその学び方の無限の可能性の前にどうしたらいいか途方に暮れないように、とことん様々な学び方の技法を紹介している一冊でした。

だから、本書『思考を耕すノートのつくり方』は、言ってみれば「ノートの使い方大全」と言えます。

もっとも、本書は『独学大全』ほどには鈍器本でもないですし(一般的な本の厚みです)、世に数多ある個性的なノート術まで載せることは避けて、本当に基本的(fundamental)なノート活用法の紹介にとどめているので、「大全」というよりは「ガイドブック」とか「ハンドブック」とかが近いでしょう。ただ、対象に向かう態度としては『独学大全』に似てるところがあるように思われます。

ノートの選び方・使い方に悩んだ時に、そっと押しつけがましくなく今後の方向性を考える手助けをしてくれる、そんな優しさが満ちています。

で、本書を読むと、本当にノートの活用法というのは多様で自由なんだなと気づかされます。特に「ノートのページを半分切る」みたいな改造の発想は全く思い浮かんだことがなかったので唸らされました。自分一人だけで考えてたら絶対に出てこなかったアイディアだと思うので、そういう意味でも「人に見せるためのノート」のありがたみを痛感します(書籍も実は広義の「ノート」の一種と言えます)。

というわけで、本書にすごく刺激を受けて、今、大変にアナログノートを書きたくなってうずうず状態になっています。どのサイズのどの種類のノートを使うのが自分にとって、そして自分の目的にとって良いのか。本書から豊富なヒントをいただけたことで、こういうことを自然と考えられるようになって、とても楽しいです。


ただ、一点、懸念点があるとすると、江草は字がめちゃんこ汚いんですよね。なので、書いた文字が自分でも後から読めなくて困ることがしばしばでして。

それで、個人的には、アナログノートが後で読み直さなくていい一時的なアイディア出しのような使い方ばかりになったり、可読性が高いデジタルノートツール頼りになったりしてるという経緯があるのですね。

本書でも「汚くてもいいから丁寧に」みたいな感じで文字の汚さ問題には軽く触れられていましたが、それが分かっていても、テンションがあがると文字を書く速度がついつい速くなって、字がぐっちゃぐちゃになるのが常なのです。(みなさんもそうなりません?)

もちろん、これはノートのせいでも、ましてや本書のせいであるはずもないので、なんとか自分で克服するしかないところなのですが、アナログノートを使うのに残された最大の障害が自分自身の字の汚さというのは、まこと恥ずかしい話です。

ぐう。

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江草 令
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