『フェイク・マッスル』読んだよ
日野瑛太郎『フェイク・マッスル』読みました。
今年の江戸川乱歩賞受賞作。
急にマッチョになった男性アイドルのドーピング疑惑を追う週刊誌記者が、そのアイドルがプロデュースするジムに潜入調査するというストーリー。
著者の日野瑛太郎氏は、もともとブラック労働に対する批判記事や書籍を出してらっしゃったブロガーの方で、それで江草も昔からフォローしてたんですね。
小説も書かれるのは存じていましたが(かつて個人Kindle出版されていた)、この度ついに大きな賞を受賞されたということを知り、こりゃファンとして読まねばならぬと、早速手に取ったのでした。
して、『フェイク・マッスル』。テンポよく楽しめる快作でした。
まず設定が面白いですよね。ドーピング疑惑の潜入調査のために、主人公の記者自身が筋トレしないといけない。「潜入調査成功のためになんとしてでも筋肉をつけないといけない」という主人公の焦りがユーモアがあってクスッとさせますし、その筋肉への想いが主題であるドーピングの是非とも交錯して、非常に面白い設計です。
あとは、たびたび出てくる筋トレの蘊蓄や描写に、著者の日野氏自身も筋トレマンなのかと思わせるリアリティを感じました。もしや著者はムキムキ……?そうでなければ小説の取材のためだけにジムに潜入調査したことになりますし(それならそれでまさしくフェイク・マッスルぽさがあって面白いですが)。
読んでて、明らかインドア運動不足メンの江草も筋肉つけたくなってきました。やっぱり筋肉はかっこいいですよね。
そんな感じで、ドーピング疑惑の謎に迫るミステリー作品であると同時に、筋トレに対峙する主人公の成長小説でもあり、そして(日野氏の過去著作からするとある意味意外かもしれませんが)お仕事小説でもあり。一粒で何度も美味しい作品です。
まあ、全体的に少々展開がスムーズに行きすぎる気もしましたが、おかげでストレスなく純粋にストーリーを楽しめるという長所にもつながってるとも言えるので、それは必ずしも欠点ではないでしょう。
小説書ける人はほんとすごいです。
しかし、昔からファンだった方がこうやって活躍されてるのを見ると、やっぱりうれしいですね。これで晴れてプロの作家デビューされたということで、日野氏の今後の作品も楽しみです。