30日間の革命 #革命編 162日
「良いは悪いで悪いは良い。……みんなはこの言葉に何を感じる?」
加賀はステージの中央で、観客に向かって話しかけていく。その声は、先ほどまで演じていたマクベスのように低くうなるようなものだった。まるで今までの加賀とは思えないほどの迫力で話しを続けた。
教師たちはまだ、この会場で何が起こっているのか全く把握できていなかった。それこそ、まだ先ほどまでの演劇が続いていると勘違いしている教師も少なくない。なので、少し戸惑いながらも、楽観的に腕を組んで様子を見守る教師がほとんどだった。
しかし、学生たちは違う。この場で、これから何が起きようとしているのか、ほとんどの学生は理解していた。
”白の会が革命を実行に移した”
加賀の話を聞きながら、学生たちはそう思った。
そして、加賀の話しを受けた森下たちは動き始める。体育館を占拠できるように、静かに配置へとつく。森下は野球部のキャプテンであったため、各運動部にも顔がきく。事前に協力者を募り、数十名の協力者を得ることが出来ていた。その数十名とともに、加賀の合図で教師たちを体育館から締め出す算段である。言わば実力行使だ。体育館の入口は4つある。そこにバリケードをはる準備まで出来ていた。
しかしそれだけでは全ての教師を体育館から追い出すことは難しい。そのため、江藤と橋田の呼びかけで、女子バレー部数人を学校内の火災報知器へと配備していた。加賀が話しを始めて教師たちがそちらに気を取られている間に、体育館から抜け出していた。あとは合図があれば報知器のボタンを押す。複数の箇所で報知器が鳴れば、必然的に教師たちはそちらへと向かう。その間に、体育館にバリケードをはる。報知器を鳴らした生徒たちは体育館の非常口から戻る手はずもつけていた。
なので、事前の準備は全て整っていた。あとは加賀が合図を出すだけである。しかし、この合図を出せるかどうかは全校生徒にかかっていた。
革命への賛同者が少なければ、いくら体育館を占拠したところで内部から綻びが生じてしまい、数時間ももたないだろう。なので、賛同者が少なければその時点で革命は失敗に終わることを意味している。
加賀はそれを確かめるため、全校生徒へと問いかける。
「……みんなはこの学校生活で何を感じている? 何を思っている? 学校の厳しい校則は何のためにあるんだ? なぜ俺たちは勉強させられてる? 大学へなぜ進学するんだ? なぜ大人に従うことが正しいんだ? 誰か、その答えを知っている人はいるのか?」
会場は変わらず静寂に包まれている。
「その答えが分からないなら、自分の目で確かめるしかない。今の学校に意味があるのか、それとも無いのか。……これからここでそれを確かめようと思う」
加賀は静寂の中、そう宣言した。
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