30日間の革命 #革命編 184日
「警察沙汰になるまで待つ」
坂本は馬場の質問にそうハッキリと答えた。その答えを聞いた学生たちはざわめき始める。
「警察沙汰って、警察が来たらどうするんですか?」
馬場は冷静に質問を続けた。
「警察が来たところで、私たちは外部に向けてメッセージを投稿するわ。何でこんなことをしているのか、何を伝えたいのか。そんなことを動画で撮ってインターネットで公開するつもり。それくらいやってこそ、日本中の人たちに伝えられるって思ってる」
坂本も冷静に答えるが、依然として学生たちのざわめきは収まらない。さらに馬場は質問を続ける。
「その後はどうするんですか?」
「その後はさっきもセトが言った通り、帰りたい人から順次帰ってもらって構わないわ。みんなに協力してもらいたいのはそこまでです」
「でも、帰る人がいるってことは、扉を開けるってことですよね? 例えば坂本先輩たちが残ったとしてもすぐに警察とかに取り押さえられちゃうんじゃないでしょうか?」
「そうね。その可能性は否定出来ないけど、そこは粘れるところまで粘るつもりです。最後まで抵抗して少しでもその様子を全国に届ける。今回はそれが大きな目標です」
「ちなみにそんなことをしたら、下手すれば逮捕とかになりませんか?」
「……そうね。その可能性も否定出来ないわ。でもみんなは安心してほしい。残って抵抗するのはあくまでその意志がある人だけに限定する。そこはみんなを巻き込むことはしないわ」
「ということは、先輩は逮捕されても構わないと?」
「はい。私自身はどんなことが起ころうとも、革命を起こすためにやり切ります」
「……そうですか」
馬場はどんどんと坂本に質問を重ねていった。この二人のやり取りは、夏の生徒会長選挙を彷彿とさせた。だからこそ、学生たちの中ではこのまま馬場が坂本を問い詰めていくものだと思っていた。このまま質問で問い詰めて、革命に反対する。もしくは警察沙汰なんてことにはさせないなど、何かしらで坂本の言ったことに対して反論をするものだと学生たちは思っていた。
「わかりました。質問に答えていただきありがとうございました」
しかし、馬場はそう言うとその場で席についた。それ以上坂本に対して反論や質問をすることなく、納得した表情さえ見せていた。
「馬場くん、ありがとう。もし他にも質問とか意見があれば聞かせてください」
坂本は馬場にお礼を言い、学生たちへとそう投げかけた。しかし学生たちは戸惑っていた。なぜなら、馬場が警察沙汰なんてことには反対をして、この場は収まるものだと思っていたからだ。しかし馬場は質問だけをして座ってしまった。どうすればいいのか、答えを出せない学生たちはその場でざわめくしか出来ずにいた。その様子を見た坂本は再び話し始める。
「……みんな、このまま何も意見が出ないってことは、私が今言ったことに賛成するっていうことで受け取るけど大丈夫ですか? ここまで協力して残ってくれていることは本当に嬉しいし、ありがたい。でも、私はこの革命で、“自分たちの意志”というのを大切にしたいんです。『誰かに言われたから』とか『無理やりやらされた』とかになってしまうのなら、いくら体育館を占拠したって革命なんて起きない。私たちが呼びかけたとき、何でみんなは立ち上がってくれたの? 他の誰かじゃなくて、自分自身で考えてほしい。それを踏まえてもう一度聞くけど、私の話しに意見とか質問はありますか?」
坂本は全校生徒に向かって、そう問いかけた。
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