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30日間の革命 #革命編 167日

 学生たちが立ち上がり、革命へ賛同する意志を示し始めた。会場の雰囲気が革命へと流れていったとき、ある一声がかかる。

 「……君たち少し落ち着きなさい」

 マイクを通して会場へそう呼びかけたのは、教頭の鳥越だった。全校生徒は、一斉に鳥越の方向に目を向ける。

 「……君たち、何をそんなにさわいでいるんだ。え? 今日の文化祭はもう終わったんだろ? ならいつまでもさわいでいてはダメだろ?」

 鳥越は少ししゃがれた声で、全校生徒に問いかけるように話し始めた。

 「それに、ステージに立っている君は何だ? 文化祭で熱が上がってしまったのか? 学園ドラマを撮影しているんじゃないんだよ。学校を悪者に仕立てて、そこから全校生徒を救うとでも言いたいのか? 君はヒーローにでもなりたいのか?」

 鳥越は嫌味たっぷりに加賀に向かってそう話した。敢えて“加賀”と名前は呼ばず、“君”と呼んだのは、名前すら覚えられていないくらいの小物なんだという鳥越の意図があった。更に鳥越の話は終わらない。

 「それに何だ、そこで先生たちと揉めているのは運動部の面々か? 下手したらそれは暴力だぞ? 君たちは身体を鍛えているんだ。いくら子どもとは言え、それだけでも立派な暴力にもなるんだぞ」

 次に目を向けたのは、席から立ち上がり、革命への賛同を示した学生たちだ。

 「そして今立っている君たち。それはどういうことだ? 君たちも、この茶番に付き合うということなのか? ……そんな軽率な行動をして大丈夫なのか? こんな学園ドラマごっこなんてのは、今だけだぞ? 明日になれば終わってるんだ。君たちも、あのステージにいる彼らと仲間だってことになるが、それでもいいのか?」

 鳥越の話しに、会場のボルテージは一気に下がっていく。今まで広がっていた波がさっと引いていくような感覚を、ステージ上にいる加賀は感じた。そして、その引いていく波に飲まれるように、先ほど立ち上がった学生が一人席についた。それを見た他の学生も、席につく。そして、次々に学生たちが座り始めていった。

 その様子を見た鳥越は満足そうな顔をして、

 「そうだ。それが利口ってもんだよ。今自分たちがどれだけ馬鹿らしいことに参加しようとしていたか、ようやくわかったみたいだな。まあ気持ちも分からんでもない。君たちは思春期だから、社会に反抗したくなるんだろう。よし、私も鬼じゃないぞ。今立っている奴らも含めて、これから席に座って何事も起こさなければ、今回のことは不問にしてやる。いいか? これが最後のチャンスだ。な? 現実をみなさい。受験だってこれからあるんだ。こんなところで自分の経歴に傷をつけたくないだろ? 運動部諸君も、これまで必死に練習してきたのに、今日のことで全て水の泡にする気か? よーく考えろ。こういう時は、素直に大人の意見に従った方かいいんだよ。な? ほら、自分の意志を示しなさい」

 鳥越はダメを押すようにそう話すと、先ほどまで立ち上がっていた学生たちのほとんどは座ってしまった。そして、教師たちを止めていた運動部たちも、自分の席へと戻っていく。

 そしてその場で立ち上がっているのは、ついに白の会のメンバーと、馬場と仙波だけになった。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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