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30日間の革命 #革命編 161日

 魔女たちは最後にこの言葉を何度も繰り返した。

 「良いは悪いで悪いは良い」

 そして舞台は徐々に暗転していく。それは3年1組の発表が終わったことを意味していた。ステージ上が完全に暗転すると、このマクベスという難しい世界観を見事に演じきった3年1組に惜しみのない拍手が送られた。

 不気味な魔女たち、狂気の果てに亡くなったマクベス夫人、復讐に燃えるマクダフ、そして運命に翻弄されるマクベス。これらを完全に演じきった。とても高校生とは思えない迫真の演技だった。

 舞台が暗転しても拍手は鳴り止まない。会場はそれほど彼らの演技に圧倒されていた。しかし、ステージが暗転してからしばらく経ったというのに、一向に幕が降りない。そのことを徐々に学生たちも気づき始めていた。拍手とともに少しずつ起きるざわめき。本来であれば幕が降り、司会である棚橋が文化祭の終わりを告げる。その後は教師たちによる判定が行われ、最優秀賞等が発表される流れだった。

 しかし、いつになっても幕は降りず、そして棚橋のアナウンスも流れない。いつしか拍手は鳴り止み、ざわめきで埋め尽くされていた。教師たちもステージ上を見ながら首をかしげたり、教師同士で話す姿が見られた。

 そして数分後、再びステージに明かりが灯った。そこに立っていたのは加賀並びに、3年1組の学生たちだった。加賀は一人、ステージ前方に立っている。何も言わず、ゆっくりと客席全体を見渡した。その様子に会場のざわめきは収まり、一気に静寂に包まれる。ピンと張り詰めた緊張気味がこの体育館の全てに張り巡らされた。

 そして、加賀はゆっくりと口を開く。

 「……舞台はまだ終わってない」

 先ほどまで演じていたマクベスのように、低く重い声が体育館へと響き渡る。

 「良いは悪いで悪いは良い。……この言葉に何を感じる? 何が“正義”で、何が“悪”なんだ。今、ここにいる意味は何なんだ? 何のためにここにいる? 何故何もしない? 何が正しい? 何が間違ってるんだ?」

 加賀はゆっくりと、全員に話しかけるように強く言葉を発した。急なこの展開に、教師たちは何が起こっているのか理解することができずにいた。まだ先ほどの演劇が続いているのかと勘違いする教師もいた。

 しかし、学生たちは違った。これが革命の始まりであることを悟り、いよいよ白の会が革命へと動き出したということを理解した。これから起こることは、演技でも演劇でもない。脚本もなければ、結末がどうなるのか誰も知らない。そんな舞台の幕が上がったのだった。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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