30日間の革命 #革命編 172日

 加賀は悩んだ。全校生徒の半数以上が立ち上がり、革命へ賛同の意志を示してくれた。ただ、裏を返せばまだ半数くらいの学生は賛同していないということになる。この状態で強行するか、それとも残りの学生たちをもう少し説得してから実行に移すか。この判断により、革命の成否がかかっていることは加賀自身もわかっていた。だからこそ、まだ決断できずにいた。

 「あとは加賀に任せる」

 高橋が最後に言った言葉が重くのしかかる。それだけではない。自分と一緒に行動をしてくれた白の会のメンバー、土壇場で味方になってくれた馬場と仙波、そして、革命へ賛同の意志を示してくれている学生たち。その全ての期待が加賀にかかっている。この重圧に押しつぶされそうになっていた。

 (あのまま鳥越の話で革命が失敗に終わった方が良かったんじゃないか)

 加賀の頭には、そんなことも思い浮かんでしまう。弱気になっちゃダメだと自分を奮い立たせるも、いざ視線を上げてみれば数百人の生徒たちが一斉にこちらを見ている。加賀はひざの震えを止めるのが精一杯だった。

 (でもダメだ。ここで弱気になっちゃ全てが台無しだ。やるしかないと言ったのは俺自身だ。もう迷っている暇はない。今の波を逃したら、もう二度とチャンスはない。……分かっている。そんなことは分かってるんだ。でも、でも声が出ないし身体が動かない)

 加賀は極度の緊張とプレッシャーで声が出なくなってしまった。ここまで多くの人を巻き込み、革命が目前に迫ったとき、予想以上のプレッシャーが加賀を襲っていた。

 その時、ふと加賀の耳に聞き慣れた声が聞こえた。

 「大丈夫。セトはセトの思うように動いたらいいよ」

 加賀は自分の耳を疑った。そう、それは坂本小春の声だった。加賀はすぐさま顔をあげ、体育館全体を見渡す。しかし、そこに坂本の姿はない。

 (な、なんだ今のは。俺の幻聴か?)

 加賀は再度ゆっくりと体育館を見渡すも、どこにも坂本はいかなった。

 (……ははっ。とうとう幻聴まで聞こえちゃったか。俺も小心者だな。どこまでいっても小春におんぶに抱っこか)

 加賀は自分の不甲斐なさに思わず笑ってしまった。しかし、逆にそれが緊張やプレッシャーを押し出してくれた。

 (何カッコつけてたんだろう。元々俺は小春みたいに出来る人間じゃない。俺は小春になりたい訳じゃなくて、この学校を変えたいんだった。なら、どれだけカッコ悪くても、俺の思うようにやろう)

 加賀はそう思うと、心がすーっと軽くなっていくことを感じた。無意識に坂本のことを意識しすぎていて、自分も完璧でなければならないと思っていた。でも、誰も自分のことを坂本の代わりだとは思っていない。みんなは学校を変えたいから、こうやって立ち上がってくれているんだ。だから自分も思うようにやってみよう。そう吹っ切れた加賀は、いよいよ革命を実行に移す決断をした。まだ立ち上がっていない学生も半数ほどおり、失敗に終わる可能性も十分にある。でも、今やらなければもう次の波は来ないと判断した。だからもう加賀に迷いはなかった。

 そして、森下たちに向かって合図を出す。それは、革命を実行に移すことを意味している。加賀のサインを受け取った森下たちは動き始め、神原は体育館の外でスタンバイしている学生に、火災報知器を鳴らすように通知を送ろうとした。

 しかしその時、森下たちの足が止まった。そして、学生たちも再びざわめき始める。学生たちは一斉に、体育館の入り口に目を向けていた。何事かと思った加賀も、入口へと目を向けると、そこには一人の人物が立っていた。

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