30日間の革命 #革命編 182日
大友宛にかかってきた電話。その相手は高橋だった。
「た、高橋? 高橋先生のことか?」
大友は驚き、そう尋ねる。
「は、はい。高橋先生から大友先生に変わってくれと言ってまして」
女性教師はそう言い、携帯電話を差し出す。大友はハンマーを降ろし、不本意な顔をしながらも電話をとった。
「……もしもし大友だか」
「あ、大友先生ですか、高橋です」
やはり電話から聞こえてきた声は高橋だった。
「高橋先生、何なんですかこのこんなときに。高橋先生も今の状況わかってるでしょ。暇なら扉を開けるの手伝ってください」
「いや、そのことなんですけどね、いくらその扉を叩いても中には入れませんよ?」
「……は? どういうことですか?」
「いやだから、今扉を何か重たそうなもので叩いているでしょ?」
「あ、ああ。いまハンマーで扉を壊そうとしているところだが」
「それが無駄だっていうお話しですよ。あいつら、その扉の周りにガチガチにバリケード張ってて、体育館の中にあった縄とか色んなもので扉も固めているので、多分難しいかなと思うんですよね」
「はあ? 何でそんなことがわかるんだ?」
「いやあ、今私は体育館の中にいて、ちょうどその扉の近くいるんですよ」
「は? 中にいる? どういうことだ?」
この時、大友らは高橋が体育館の中に残っていたことを初めて知った。
「どういうこともないですよ。私は体育館の中にいて、ガンガン扉を叩く音が聞こえたんで電話したんですよ。ほら、無駄に扉壊すこともないのかなと思いましてね」
あっけらかんと話す高橋に対して、大友は声を荒げた。
「いや待て。何で高橋先生は体育館の中にいるんだ? どういうことか説明しろ!」
「……そんな声を荒らげないでくださいよ。どうもこうもなく、私はあの騒動の時、他の先生方はみんなワーワー叫んだり慌てたりして外に出ちゃったじゃないですか。私はその時、ただただその場に留まっただけの話しですよ」
「はあ? なら先生はあの時にそのまま体育館に残っていたというのか?」
「はい。そうですよ」
「……ならさっさと中から扉を開けろ!! 何をやってるんだ!」
大友は再び声を荒げた。
「だからそんなに声を荒らげないでくださいよ。さっきも言ったでしょ? ガチガチにバリケードを張ってて、私一人じゃどうしようもないんですよ。ちなみに他の扉もそうなってますよ」
高橋は冷静にそう答えた。
「だったら他に体育館を開ける方法を考えろ! 中にいて今まで何をしてたんだ!」
「……あの、というよりも、私は別に体育館を開けようと思っていないので。扉を叩く音がうるさかったから電話しただけですよ」
「はあ? ……開けるつもりはないだと? お前は何を言ってるのか分かってるのか?」
「はい、わかってますよ。ならもう用件は伝えたので電話切りますね?」
「馬鹿野郎! 何を言っとるんだ! さっさと扉を開けるんだ!」
体育館の外で大友の怒鳴り声が響いた。
「……たっく、うるさいな。あの大友先生? いくら怒鳴ったって何も変わりませんよ? もし体育館を開けたいならもう警察呼ぶしかないんじゃないですか?」
「警察だと? ふざけたことを抜かすな! 早く開けろ!」
「……私からは以上です。それでは」
「お、おい! 高橋? 高橋! ……くそ、切られた」
高橋は電話を切った。
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