2009年05月14日 ディゴディゴオムリエ。
「ワウペダル」なるエフェクターがあります。ジミ・ヘンドリックスの「ふぁーかふぁっかふぁっかふぁかか」とか、スティーヴィー・ワンダーがキメキメだった頃などに代表される、ファンキーかつ印象的な音が出すことができるのですが、ギターを弾きながらペダルをしゅこしゅこ踏むことでその効果が出る仕組みになっております。
で、このギターを弾きながら踏む、という動作にはちょっと修練がいります。どうにかうまく音を出したい、ということで真剣になるあまり、新米ギタリストはたいてい「口がワウペダルとシンクロ」してしまいます。自分が足を踏むのに合わせて口を開け閉めする姿は、ばらまかれる「ふ」に群がる鯉みたいで、見ようによっては風流でもあります。
さて、ワタクシのセガレ、イノジは最近、はさみを扱うようになりました。彼用の小さなはさみと、新聞の折り込み広告などを渡すと、ちょきちょき切るのに余念がありません。
その間、姉のウタがワタクシと遊ぼうとも、かあちゃんたるツマが洗濯やら炊事をしようとも意に関せず、もくもくとしております。その真剣な横顔を見ていると、集中している時の常でせいいっぱいとんがらかしている口が、はさみの動きに合わせて、開け閉めされていることに気づきます。
その様、まさに新米ギタリストのワウペダルと同じで、ワタクシども両親を密やかに笑わせます。さらによく見ていると、開閉のリズムの揺れに合わせて口も「ちょーき(間)ちょ、きちょちょ(間)ちょーき、ん」とおよそ音楽的でないリズムで動いております。
その「ジミヘンに必死に挑戦している永遠のロックンローラー」を彷彿とさせる姿に、ワタクシはつい笑い声を出してしまいます。
その声に気づき、はさみを動かす手を止め、あたりを見渡し、あ、オデのこと笑ってる、と察したイノジは、憤慨しつつ別の何かイケてるものを見つけてどこかに走って行きます。そのドタバタした感じの走りっぷりを効果音にするとなると「ディゴディゴ」がピッタリです。
憤慨した時に限らず、最近のイノジは、むやみにディゴディゴ走ります。公園に行けば芝生を横切って茂みの中へ、河原に行けば川の中へ、デパートに行けば階段へ。何かイケてるものを見つけた瞬間走り出す。個性の違いなのでしょう。ムスメのウタがイノジの年齢のときは、ここまでむやみに走り回るようなことはありませんでした。
ツマは、そんな2歳7カ月のイノジを見て、彼の頭の中は混沌としているのでは、と言います。オトナからすると夢の中にいるような状態だから、興味をひくものがあると、心のおもむくままに向かっていくのではないか、というわけです。
もしそうだとすれば、頭の中がおおむね混沌としたまま大きくなっている人も多いなあ、とワタクシは思います。脇目もふらずにギターをいじったり、他が見るとよく分からないものに一心不乱に向かっていったりするような。どちらかといえば男子にその傾向が強いようにも感じます。
そう考えるワタクシのわきをわがディゴディゴは、オデしやわせ、とばかりにでへでへ笑いながら疾走していきます。その先に何があるのか。ワタクシには、茂みとか階段とかいった具体物ではなくて、なんか「栄光」みたいなあやふやなものがあるような気がします。
栄光に向かって走り続けるイノジは、妙齢になって、ギターを買い、小遣いためてワウペダルを買い込み、ふに群がる鯉のごとく口を動かして、ふぁかふぁかやる。そのことは、その頃になってもいまだにジミヘンは神であり続けるであろうことと同じくらい確かなことのように思えます。
ワタクシができるアドバイスと言えば、購入して1カ月経っても口がシンクロするようなら「ベースに転向するという選択肢もある」です。アドバイスというものは自らの経験をふまえた方がより説得力が出ます、ので納得してくれると思います。栄光は多分色あせません。多分。そんなくらいじゃあ。JAH!
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2024年9月10日
高校で寮生活を送るセガレ、少し前から無事ベースに開眼しております。
ローDって渋いチューニング!!
そして、背景の混沌ぶり!!
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