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等倍ファインダーの魅力

外付けファインダーに出会った

 もうだいぶ前に、職場の上司からライカM3を譲っていただいた。その時についていたレンズは、ズミタール50mmとテレエルマー135mmの2本。どこかのリサイクルショップから救いあげてきたものらしく、レンズもカメラボディもとても良い状態ではなかった。
 修理にボディだけで5万、レンズも2本で2〜3万はかかったが、それで済んだら、いくらズミタールもテレエルマーも中古価格が安いと言っても得はしたと思う。

 あとで調べてみるとこのズミタールはLマウントで、本来、単体ではMマウントにはくっつかないはずだ。しかし、LからMへマウントを変換するリングがついている感じもなく、改造されたのか、その出自はわからない。ただ、背景のぐるぐるボケ、モノクロで撮ると線画太く、しかし、どこか優しい描写をするため、これはこれでいいなと思っている。

 閑話休題、今日はボディの方の話だ。正確に言えばファインダーの話。もらった時には気にもしなかったけれど、M3のファインダーの倍率は0.91倍。ほとんど1倍で、それは両目を開けて撮影すると、ブライトフレームが目の前に浮かび上がる感覚を得られる。一眼レフである焦点距離の時にファインダー内部と外部がシームレスにつながっている時があって、お、なんだこれ、と感動した記憶があるが、ことレンジファインダーとなると、なんだか自分の目が改造されたかのように感じられて面白い。例えるならドラゴンボールのスカウターを使っているかのような。使ったことないけど、当然。

 そんなある日に、神楽を撮影に行った時のことだ。神戸から毎年撮影に来られるプロの方と、なぜかファインダーの話になって、外付けファインダーで等倍のものがあるが、それがとにかく素晴らしい、素通しのガラスでしかないのに、肉眼で見るよりはるかに目の前の景色が美しく見える、そのなかでフレームが浮かび上がってくるものだから、ずっと覗き込みたくなる、そんなことを教えていただいた。

 肉眼よりもより美しいとな? その言葉が気になって、帰宅後調べてみる。
 SBOOI という名前のバルナックライカのアクセサリーで、非常に明るく見やすい50mm用のファインダーだと分かった。

 その存在を知ってしまったからには試さずにはいられない。かと言って用途として見つからないものを買うのはな、と考えていたとき、東京へ出張が決まり、喜び勇んで、新宿の防湿庫ことマップカメラさんに向かったのだった。

 なる、ほど。
 これはなんだ、外の世界がめちゃくちゃにきれいに見える。一眼レフのファインダーを覗いたとき、少し暗く映る感じがする。特に自分のカメラはファインダーのフォーカシングスクリーンをピントの山が掴みやすいように変えていたのでなおさらそう感じる。それがこのSBOOIはそこに光を集めたかのような明るさ、そして気持ちコントラストが上がっていて、ずっと覗き込みたくなる。とにかく衝撃的だった。

 用途はないとは言ったが、これは買うべきではないか、と思った。そういやX100のテレコンで50mmにした時ファインダーがレンズでだいぶケラレるしな、と買うための理由探しが始まった。値段はまさにそのテレコンの価格より少し安いくらい。つまり用途として考えると高い。結局は買うことはやめたけれど、あの衝撃は未だに忘れられないでいる。

X-pro3に手が出なかった理由

 今、X-pro2を使いながら思うことがある。一つはこのカメラでフイルムシミュレーションのクラシックネガを使えたらな、ということ。そして、ファインダーが等倍になった機種が欲しいな、ということだ。

 見出しにX-pro3を買わない理由などと偉そうに書いたけれど、それは別に背面液晶が隠されているからとか、そんなことではない。確かに個人的には隠すくらいなら無くしたほうが潔いとは思う。EVFで設定やプレビューも見られるのだし、ライカの液晶無しよりはフレンドリーで、でもストイックな印象も出てくるだろう。あるいはpro3に付いている小窓のような液晶のみとか、ほんとに構図の確認程度しかできない機種とかも面白いかも知れない。でも、そこではなくて、自分がX-pro3には絶対手を出さないだろうなと思ったのは、そのファインダーに理由がある。それはファインダーの倍率を変えられなくなった、ということだ。コンデジのx100シリーズならそれは何の問題もないし、レンズ交換できるライカだって変えられないのだから、EVFに切り替えられるX-pro系はそれだけで充分魅力的だ。けれども、つけるレンズでOVFの倍率も変えられるというのはすごいんではないか、と思うわけだ。

 この仕様変更を、会社側はユーザーがEVFを使うことの方が多いと言うから、と答えたが、いやいや、いやいや、ちょっと待て、それを言ったらX-proシリーズの存在意義を自ら否定してやしないかい? とちょっと憤った。

 それじゃ形をレンジファインダー型に模しただけで、ただのミラーレスじゃないさ。そしてEVFでの撮影なら、X-T系のファインダーがいいに決まっている。あれはフルサイズ一眼レフのような広さを感じるし、とても見やすい。ユーザーがOVFは使わないと言うのであれば、それを使いたくなるように仕向けるくらいのさ、気概とかさ、工夫とかさ、そっちに行って欲しかった、と思うのである。

 だって考えてもみよう。
 一眼レフの時代が終わり、ミラーレスが主流になった今、X-pro系のOVFで覗き込めるという特徴はむしろ際立つのではないか。そこに、たとえば 35mm以下24mmくらいまでは低倍率のファインダーで使え、50mm以上からは等倍の光学ファインダーに切り替えられる、そんなギミックにしたら、必ずささるユーザーはいるはずだ。そしてもちろん超広角や望遠はEVFで撮影できるとなれば、実用と、写真を撮ることの楽しみを兼ね合わせたカメラになるのではないか、いや、きっとなる、と思うのである。

等倍ファインダーを個性にできないか。

 しかしそんな声、ネット上でもなかなか見られない。ライカはその構造上等倍ファインダーにするわけにはいかないし、エプソンのような独自のカメラがもう出ることはないだろう。つまり、等倍ファインダーの体験をした人、知っている人が少ないのだ。

梅干し。すっぱいねえ。
ハチミツ。甘いねえ。
グラリンドフォート。……。ナンダコレ?

 知人からの受け売りだが、自分の知らないことは考えることができない。等倍ファインダーの面白さを知らない人に、その面白さはなかなか伝わらないのだ。

 X-T4と比べればはるかに劣るEVFでも、OVFでは撮らず、選んでしまうユーザーが多いと言うのなら、それはOVFの魅力をブラッシュアップしていないからだ。その一つが、多分に小さなフォーカス確認用の小窓の位置だろう。これがOVFとシームレスに繋がって、ファインダーの真ん中に設置されるようになったら、光学ファインダーで撮る面白さを支えてくれるだろう。ただ、それは素人の僕でも難しいだろうなあと思う。と、なればこその等倍ファインダーである。むしろ富士フイルムさんは、等倍ファインダーの魅力を伝えることができるほぼ唯一のメーカーであり、その面白さの伝え方次第では、新しいユーザーを獲得することができるのではないか、と思うのだ。懐かしく、しかし新しい価値の創造だ。大袈裟だけど。

 絵や映画は、それを作る人より享受する人の多いアートだけれど、写真は誰もが気軽に始められるもの。そして撮られた写真そのものだけでなく、撮る行為自体に楽しみを感じられるもの。等倍ファインダーはその楽しみをさらに増してくれる存在だと思う。

ライカにも等倍ファインダーの愉悦を与えた話

 ほとんど夜中の勢いで手にしたライカMtyp240だが、その後でファインダーの倍率変更できるアクセサリーがあることを知った。いや、知っていたが、そうかそれが使えるのか、と結びついたのだった。

 自分が手に入れたのは宮崎光学製の1.35倍。これだとほとんどM3と同じ倍率になる。純正の1.4倍の方がより等倍に近づくのだが、お値段が中古でもそれなりにする(SBOOIより少し高いくらい)と言うのと、50ミリのフレームがギリギリ見えるくらいだという情報を知って、ならばとヤフオクで手に入れた。ほとんど新品と変わらない価格であったが、そこは、うん、もういいや。

 そのマグニファイアをつけると、なんとか50mmのブライトフレームがきっちり見える状態になる。35mmはぐるりと周りを見回すことで見えるといった具合。

 流石にあのSBOOIのような完全なる等倍と見え具合というわけには行かず、ファインダーの隅の違和感というか0.9分のズレはあるが、両目を開いて撮れる楽しみは一入だ。

撮れるカメラと楽しめるカメラ

 カメラが売れなくなった、と言われて久しいが、高級高機能のものはけっこうそれなりに売れているとも聞く。オーディオステレオシステムと同じ運命をたどっているようにも感じるが、まだカメラでなくては楽しめない所作は残されている。

 プロの方の中には仕事では大きく高機能なカメラを使い、プライベートでは趣味性の高いカメラを使う人もおられると雑誌などにはよく書かれている。仕事では失敗しましたは許されないから、カメラができることの多い、つまりスペックの高い機種が好まれ、一方で日常で使うには真面目なカメラだと面白くない、ということを示している話だ。
 たとえばロードバイクの面白さに、プロが使う機材を自分も使えると言うのがある。これは確かにローディにとっての魅力の一つだが、一方でミニベロロードとか、速さを競うことだけをあげれば不利な機材を楽しんでおられる人もいる。
 ピチピチのサイクリングウェアに身を包んで走る人もいれば、ゆるく普段着に近い服装でそこそこの距離を走る方もいらっしゃるようだ。

 そう、写真趣味における機材の選定において、ほとんど動きものを撮らないのに測距点の頗る多い、縦位置グリップ付きのカメラを買ったりもする酔狂もOKだし、めちゃくちゃ小型でそこまで機能にはこだわらず、お洒落さのあるカメラを愛玩してもいい。どちらを選んでも自身の満足感があればいい。

 視線でフォーカスができるとか、ISOがとびっきり高いとか、そう言うものの一つに、等倍ファインダー。写真を撮るために覗き込むのではなく、覗き込みたくなって結果シャッターを切ってしまうであろう等倍ファインダー。スナップに連れ出したくなるこの等倍ファインダーを、カメラを楽しめる機能として開発して欲しい。それが今できるのは、レンジファインダーのライカと、レンジファインダーを模した機種を擁する富士フイルムだけなのだ。


 実は昨日3回目のアレを打ちまして、多少つらい状況。何がって雲一つもない空を見つめるだけで外に出られないのがつらい。呼吸が多少浅く、インフルエンザに罹ったみたいだ。

 等倍ファインダーの具合をライカM3とM240にマグニファイアをつけた状態をここにあげたいが、流石に体が動かない。

 他のところでも紹介されてはいるけども、宮崎光学の1.35倍はM3との比較では見当たらなかったと思う。
 もしご覧になりたい方がおられましたら、ご一報ください。遅くなるかもしれませんが試してみたいと思います。


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