百城みこ

詩を書いています

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最近の記事

『弱い』

 世界は当たり前に広いため創作をしている人間が数えきれないほどいて、それによって成功している人間も数えきれないほどいるというのが現実である。私は詩やまれに短歌を公開しているが、自分より評価されており、卓越した表現技法を持つ人間もやはり数えきれないほど存在しているというのはほとんど言うまでもないことである。さて、私が創作を始めて以来ずっと感じていることだがどうにも自分よりも創作が『デキる』人々を目の当たりにして多少落ち込まなくては気が済まないのだ。  これは創作を始めて約半年が

    • 【詩】無題

      言葉たちは白紙の窓枠から夢をみる 私はそれらを拾い上げ 糸に通し 繋ぎ合わせ 詩へとその形を変容させる 紡がれた詩は重量を失い宙を漂う 風に流れていく詩がせめて解体されないように いつまでも見守っていた

      • 【詩】エンゼル

        悴んだ指先から響く心音だけが この夜のあまねく全て 無色透明のエンゼルの囁き まるで硝子片のように心の中を 吹き抜けていくその吐息 エンゼルには形がない 氷砂糖のようで色も無ければ 私と同じ心臓の拍動も持たない  だからこそ私の十の指先で 生命について教えよう

        • 【詩】色のない箱

          (行く宛を見失った音が部屋を漂っている) 胃の内壁を灼いていく鎮痛剤 カーテンを突く隙間風が冷たくて 指先から失われていく温度は愛おしく また同時に苦しさに帰していく 日々の中から私の姿だけが抜け落ちて 貴方は苦しんでいるのでしょう 空白だらけの人生のうえで 背景すらも切り取られていく 繋がれていたはずの左手振り払って 右手と繋ぎ合わせて祈り別れては祈られて 去っていく人々 しかし 貴方はまだ空白になった部屋という名の箱にて誰かの帰りを待っているのでしょう 私がその部屋

          【詩】『水槽』

          ながらく水槽の中に居たもので 託された自分の名前など忘れてしまっている バスタブ代わりのガラス張り 愛おしくはないので今ここでその手で破いて 外界ではあまりにも呼吸が拙くなってしまうので私の皮膚の外側は置き捨てることにする 人格にも皮膚は存在するのだ私は真皮から私は詩を書いている何の問題もない まずは どうか 深呼吸を、 ひとつ。 ことばたちを散乱したガラス片と手でパズルをしよう今はどこまでも自由だ

          【詩】『水槽』

          【詩】『星』

          無為の果実を手にとって 冷たい孤独の床に臥せる黒髪 傷創を撫でる指先は夢うつつ 爪先で映し出す白昼夢は 遥か一億光年先にある君が住む遊星 どうか連れ出して ここは退屈で仕方のない 孤独の小惑星 じわり、 融けていくだけの時間を 硝子瓶に詰めて 無重力の空白へ放とう そして 無垢なる星の在処をたずねよう 歩みは跳ねる まるで月の兎のように ステップを踏んで、 手をとって、 ふたり。 わたしたち 重なるふたつの星 呼吸で瞬くふたつの星

          【詩】『星』

          【詩】『無題』

          十センチメートルしか開かないガラス戸を開ける 隙間からは深夜一時の凍てつく息吹 どこにいても孤独な私の隣  風が腰掛けた 冷たさと抱擁を交わす それは私の存在への受容 しかし何も言えないままで 冷たい故に与えられた痛みはしずかな裂傷になる 睡魔とともに肉体はリネンに沈む どこまでも  これでいい このまま痛みとひとつになって

          【詩】『無題』

          【詩】『催花雨、青い窓辺』

          催花雨はまたやって来た 湿り気を帯びた青い窓辺 憂鬱な肉体が沈む浅葱色の水槽 沈む私のしずかな肖像 羽だけは濡らさぬように 羽ばたけなくなるだろうから 謝りたかった そんな言葉たちが乾いた地面に残されて 浅くなった意識の底では また夢を反芻するミニシアター 謝ってもきっとまだ足りない 催花雨が去っていった うるわしの午後 光舞う庭に白色エンゼルの吐息 憂鬱そうな浅葱色の水を孕んだ浴槽さようなら 僕はそこからまたはば

          【詩】『催花雨、青い窓辺』

          【詩】刃先

          みだれてゆがむ呼吸の所在を必死で探している ぼくの周辺は生きづらさの灰で埋もれた死の街並み 乾ききった理性と湿っぽい本能は 拮抗する呪縛となって ハサミの刃を鳴らして断ち切った原始的な欲求 肉体に染みついた過去をもぎ取っても 現在は痣になって残り続ける 真実と悟りは痛みのなかにある と説かれ またハサミの刃を鳴らす そして 痣は腐敗が進行する 咲くはずのカルミアはすべて枯らした 罪を裁いて そのハサミで髪を切り落として 断頭台にふさわしくあるように

          【詩】刃先

          【詩】虚ろ

          貴方への純情は何処までも空っぽの代物だったのだ 去っていく背中を見た瞬間から全ては虚ろに回転しはじめる なんて素敵な、 節操もなく繰り返された相槌を思い返すのは感傷だろうか それは鉛色した虚像でしかないと耳元で囁く 踊り続ける私の肖像 しかし音楽は止む 踊ることをやめる/音が褪せていく/泡が水に掻き潰されるように/私の肖像も煙のように消えた 貴方はとっくにそこには居ない また虚ろに戻る 繰り返す、

          【詩】虚ろ

          しずかな痛み

          午前2時。 真冬の風がその冷たさで頬に見えない裂傷を与えていくようだ。 寒さは寡黙で、静かな痛みだ。 精神科の窓は相変わらず10センチメートルしか開かないが、その僅かな窓の隙間から痛みはやってくる。 心地良い。 そうして徐々に私という存在の輪郭は明確になっていく。 つまり、私は私であることを実感するに至るのだ。 冷たさというのはじつに不思議な効力をもっているといえるのではないか。 そしてこれもある種の自傷行為的なエッセンスを持ち合わせているとも考えてもいい。

          しずかな痛み

          今年こそは詩人を名乗れるようになりたい

          2024年が始まりを迎えたが、 私はいま病室にいる。 約1年振りに任意入院という形をとって昨年末から精神科病棟(開放病棟に)入院したのだ。 しかし決して寂しさを感じていない。 私は病棟を病室を愛しているからだ。 そのような私にとって大切な場所で安心につつまれながら新年を迎えれたことは幸運かもしれない。周囲の人々への感謝の念を抱かざるをえない。 と、私の現状はさておいて。 今年こそは昨年よりもっと詩を発表し、 文学フリマで合同誌を出版したい。 そして、様々な現代詩が

          今年こそは詩人を名乗れるようになりたい

          【詩】病室

          寂しさに泣くような雨音 やはり窓の外側を夢想する 窓の外には空白の獣(けだもの)が満ちている 気づけば目を伏せていた 憂鬱の蔓延る病床は白くどこまでも終わりなく透き通っている それは遠く続く歴史の一部に紡ぎ合わされ… 私の内部で記憶の形を成す カーテンの内側で咳をする実存 反芻されるは祈りの声 どうか、 お大事に どこまでも透明な声で反響する 窓の外側には何も存在しないかのように 解けていく憂鬱のように 私の影も形を纏う輪郭も曖昧になる そして

          【詩】病室

          はく

          倍速のように動く人々を見下ろしている その意味を問わなくても現実は無情だ がらくたを産むくらいならリネンの上で灰色の亡骸になるよ 隔絶するためだけに存在する窓枠からは嘲笑が漏れ出す コールタールのような黒 雨の中傘を捨てるような日々 笑ってもいいよ もう生きていたくないもんね? 端正な横顔の文字列を追っていたら一日はすぐ昏れる これは驕りかな でも貴方の歌詞よりはずっとマシかもね? 夢の中で君の甲高い声が聞こえた 最悪の目覚めと驕りたかぶった罰をどうも やっぱり

          【詩】『廃墟にて』

          廃屋へ巡礼 思い出のなかに沈殿する私の青白い肉体 思案 巡らせる 傷に触れる行為だ 傷を抉る悪意だ やめてしまいたい シナプスの歯車はうたっている 無名の詩(うた?) 無名の詩(うた?) 無名の詩(うた、?) 無為は積み重なる 廃屋にて眠る 口ずさまれゆく黒の文字列 総ては葬列になっていく 魂はあの腐り落ちた窓辺から逃げるの? 問に解はない 廃屋の中で歌う 胸が痛む理由を知りたい 退屈の寝返り 古傷を寄せ集めたような 遠い街の呼吸がき

          【詩】『廃墟にて』

          【詩】『福音』

          雪を侵す透過の涙に想いだけ はせる のせる 刹那 一握りの時間 私は息を吹き返していた 心 そして 感性の螺子巻はまた動き出す 拍動 拍動 瞼の重量はもう感じられない 歩み 既に止められず 空っぽだけが広がっていた ただ文字が列をなすだけの白さ 詩の肖像が築かれゆくための空白 これこそが私への福音

          【詩】『福音』