国際: UKの電力部門脱炭素化に関する報告書レビュー
2024年4月、在UKシンクタンクのResolution FoundationがUK脱炭素の取組を社会経済的な観点から分析した報告書「Electric Dreams」を発行、その概要と私の感想を整理した。
記事要約
基本的なメッセージとしては、電力セクターの脱炭素化って他の部門に比べてEasyと思われがちだけど実はそうじゃないし、ちゃんと考えて実施していかないと結局社会的弱者にしわ寄せがいってしまうよ、というもの。
発電・グリッド側の投資加速が不可欠だが、どうもUKは特に投資が少ない国らしい。発電や送電施設に対する公的・民間投資をX倍にしていく必要あり。
今後の難題の一つが電力価格。従来の化石燃料発電施設に比べ再エネや原発は初期投資/Capital investmentが大きくなり、初期投資の確保や市場のInterest rate次第では採算が合わなくなり、投資が進まなくなる。
1.背景
本報告書を発行したResolution Foundationとは、在UKの独立系シンクタンクで2005年に設立、特にUKのLow to middle income市民のLiving standardsという切り口から様々な社会・経済課題を分析している模様。財団所属の研究者を見ると結構な大所帯だが、所属する研究員たちは結構若手が多い感じ。成果物欄を見ると結構な数の報告書を出している。年次報告書を見るとわかるが、他の財団からのDonationsが主な資金源となっている模様。
2.報告書
本報告書の分析対象はイギリス。基本的なメッセージとしては、電力セクターの脱炭素化って他の部門に比べてEasyと思われがちだけど実はそうじゃないし、ちゃんと考えて実施していかないと結局社会的弱者にしわ寄せがいってしまうよ、というもの。
まず第一に、住宅や交通、産業各分野での脱炭素化には莫大な電力が必要=>ということはグリッドから供給される電力をクリーンにしていく必要があるという、もはやコモンセンスとなった認識確認。
そのためにはグリッド側の投資を加速させなければならない。どうもUKは特に投資が少ない国らしい。発電や送電施設に対する公的・民間投資をX倍にしていく必要あり。
今後の難題の一つが電力価格。従来の化石燃料発電施設に比べ再エネや原発は初期投資/Capital investmentが大きくなる(無論、その代りFuel costsというのは大きく下がる)。そうなると初期投資の確保や市場のInterest rate次第では採算が合わなくなり、投資が進まない。
そして季節によって電力価格が大きく変わる(発電が多すぎて価格が低くなる時期もあればその逆も)。そのFluctuationを平坦化する電力価格システムの構築が不可欠となる。
ちゃんと対策をするかどうかで将来の電力価格が変わってくる。電力が低ければ電化による恩恵はUK市民全般にいきわたる(下記図左)が、価格が高くなると低収入家庭が困る(下記図右)。(すみません、あまり真面目に読んでないのでそのロジックがわからない。。。)
いずれにせよ低所得者層への支援が必要ということで、Social Tarrifをやりましょうとのこと。
3. コメント
脱炭素についてはいろんな団体がいろんな調査を行っているが、IEAらの超グローバルなシナリオもいいが、こういった一か国の現状にDive inするレポートもいろんな学びがあるなあと思った。
電力セクターの脱炭素化なんて、IEAレポート読んでいると再エネ普及が加速化しているということで順調なのかなあと思ってしまいがちだが、実は違うんだよというのが本報告書のメッセージ。あと電力価格をどうにかしないとヤバい、というのも一つの国にまで粒度を深めた報告書ならでは。
しかし、私が住む国ではSocial Tarrifというのは既に導入済み、低所得者層はそれなりの恩恵をあずかっているわけだが、UKではそうではないのだろうか?だとしたらさっさと導入せなあかんよね、というのが私の感想。
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