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国際: RFFのGlobal Energy Outlook 2024概要(前編)
2050年に向けた世界のエネルギー需給見通しといえば、国際エネルギー機関/IEAのWorld Energy Outlookが有名だが、実は様々な機関が様々なシナリオを出している。その各種シナリオを比較検討したResources for the FutureのGlobal Energy Outlook 2024報告書を概観、整理した。
記事要約
化石燃料(石炭、石油、ガス)消費は、2030年前後にはピークを迎えるが、多くのシナリオで高水準にとどまる傾向にある。Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(CCUS)技術が不可欠。
代替エネルギー技術普及のために必要な各種鉱物資源の量が急速に拡大。コストや地政学的リスクを要考慮。
中国のエネルギー需要について、人口減やマクロ経済状況などを鑑み、どのシナリオも下降傾向へと修正
1. Resources for the Future/RFFとは
RFFは、1952年に設立された在米国ワシントンの独立シンクタンクで、エネルギー問題、環境問題、天然資源問題に関して調査研究を実施。Websiteを見る限り、相当数の研究員を抱え、大学とのつながりも強そう、出版物やデータも豊富。
2024年4月初旬に公表されたGlobal Energy Outlook 2024、公表と同時に「The Global Energy Outlook 2024: Peaks or Plateaus?」と題する公開パネルディスカッションが開催され、その様子は下記リンクから視聴可能。
2. 報告書概要
Global Energy Outlook 2024は、計8つの各種機関・組織が発表している既存シナリオを比較検討している:bp; Enerdata; Equinor; ExxonMobil; the International Energy Agency; the Organization of the Petroleum Exporting Countries; Shell; and the US Energy Information Agency。
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2.1 総論
各種シナリオを比較検討した結果、見て取れる大きな傾向は以下5つ。
化石燃料(石炭、石油、ガス)消費は、2030年前後にはピークを迎えるが、多くのシナリオで高水準にとどまる傾向にある。ので、政策加速化が必須。
Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(CCUS)技術が不可欠。技術動向や導入傾向をしっかりと監視、報告、評価し促進していく必要あり。
代替エネルギー技術普及のために必要な各種鉱物資源の量が急速に拡大。コストや地政学的リスクを要考慮。
原発電源について、COP28にて2050年までに三倍にする旨22か国がコミット、その実現には、今までなかったレベルでの原発拡大が必要。
中国のエネルギー需要について、人口減やマクロ経済状況などを鑑み、どのシナリオも下降傾向へと修正。
2.2 世界の化石燃料需要シナリオ
化石燃料消費は、多くのシナリオが2030年前後にピークを迎え、そのまま高止まりするとしている。各種国際目標(+1.5℃@2050)を鑑みた各種シナリオにおいては、化石燃料消費が加速度的に減少する図になるが、それでも一定量の化石燃料消費を織り込んでいる。
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(出典:Global Energy Outlook 2024、p.3)
その残った化石燃料消費起因の炭素排出をどうすればよいのか?そこで出てくるのがCarbon dioxide Capture, Utilization and Storage/CCUS(例:Direct air capture, bioenergy with carbon capture and storageなど)。
なお、現時点でCCUSできたCO2量は、世界全体のCO2排出の0.1%=42 million t@2022に過ぎない。2050年目標達成のためには、年率20%くらいの勢いで設置増加されねばならない(2010年以降、8.7%どまり、主に産業部門での利用)。Captureした炭素の貯蔵先など(Natural endowment)は十分あるとのことで、むしろコストの問題。
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(出典:Global Energy Outlook 2024、p.4)
CCUSが進んでも化石燃料利用に伴う環境問題(例:採掘に伴う自然破壊やら利用に伴う大気汚染など)は解決不可。そこで重要となるのが、省エネなどを通じたエネルギー需要の絶対量の削減。下記の図から、どのシナリオも全体的にエネルギー需要増加の鈍化を示していることがわかる。石炭については需要の低下、石油やガス、再エネ利用については、シナリオ毎にだいぶ異なる。
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(出典:Global Energy Outlook 2024、p.5)
世界のエネルギー需要増加の鈍化の背景にあるのは、炭素集約度/Carbon Intensity (= CO2 emissions/unit of primary energy demand)の改善がある。程度の差はあれど、どのシナリオも一定程度の改善を見込んでいる。とは言え、2050年目標達成には年率12%程度の改善が必須だが、その勢いで炭素集約度改善に成功した国や地域はない。
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(出典:Global Energy Outlook 2024、p.6)
2.3 代替エネルギーシナリオ
炭素集約度改善に欠かせないのが、化石燃料に代わるエネルギー源でそれが各種再エネ。COP28にて、再エネ利用三倍@2030(11k GW)がコミットされたが、その達成には、毎年800GW増加が必須(2022年に関しては目標クリア、それが2030年迄続くかは、政策次第)
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(出典:Global Energy Outlook 2024、p.7)
もう一つの代替エネルギー源は原発。COP28にて22か国がコミットした原発活用三倍@2050年の実現には、根本的な政策転換が必須。というのも多くの国で原発電源は縮小傾向、頑張っているのは主に中国とインドというのが現状。1980年代のペースで原発拡大が必須。
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(出典:Global Energy Outlook 2024、p.8)
注目されがちな水素利用については、現時点では肥料精製に使用されるアンモニア生産の材料や原油精製に利用されているが、今後クリーン水素が代替エネルギー源として活用(例:長距離海運や航空、セメントや製鉄の熱源)されることが見込まれている。が、いずれのシナリオも、2050年時点での最終エネルギー需要から見るとほんの数%のシェアにとどまる(2.5%ー7%)。
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(出典:Global Energy Outlook 2024、p.18)
3. コメント
様々な機関や組織、会社がいろんなシナリオを出しており、どれを見たらいいのかわからない時がある。IEAのネットゼロシナリオはおそらくもっとも有名なモノだろうが、正直IEAのシナリオは結構グリーン思考が強いので、どこまで鵜吞みにしていいのか迷う。
そういったときに、このRFF報告書はかなり参考になると思った。様々なシナリオを横並びにしているだけといえばそれまでだが、横並びにすることで、大きな傾向が見て取れる。
しかし、CCUSの話になると一気に胡散臭さが増すなあ、というのが当方の感触。結局、化石燃料消費減や再エネ拡大で吸収しきれなかったGHG排出分を、計算上、CCUSや水素といった新規テクノロジーに割り振っているだけに見えてしまう。今後注視が必要だが、化石燃料消費減や再エネ拡大が遅延すればするほど、CCUSや水素利用によるGHG排出減の割り当てが拡大していくような気がする。
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