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国際: IEAのEVアウトルック2023
世界各地で盛り上がるEVシフト。だが、欧州では既にEV販売台数に陰りが見え始めている。そこで改めて、国際エネルギー機関/IEAが去年発行したGlobal EV Outlook 2023をレビューした。
記事要約
世界のEV販売台数は毎年伸びており、IEAに言わせれば、EVシフトは起こっている!なのだろうけれども、こう地域別でみていくと、中国や一部の国が先行的にEV導入しているとも読めなくもない
車両セグメント毎に販売価格をプロットしたのが以下。やはり中国における販売価格が非常に低い。
IEAのGlobal EV Outlook 2023が発行されてからおおよそ一年。この一年で少し風向きが変わってきたと感じる
1. 背景
賛否両論あるEVシフトだが、結局政策Drivenなのは間違いない。そしてカネがないなどの理由で政策に揺らぎが見え始めるとEV販売台数にも響いてくる、というのが現状と思っている。
以下、私がこれまで呟き残してきた欧州EVシフトがらみの各種ニュース。
※ドイツ政府のEV補助金カットやインフラ整備遅延などを踏まえたメルセデスの2030年完全EVシフト計画の撤回宣言
※英国においてもEV販売台数が落ち込み始めている
※中国産格安EVに対するEUの貿易対抗措置
2. 報告書
まずは、EV販売台数がすごい勢いで伸びてきていることを確認する図が以下。コロナパンデミック中でも伸び続けているのはすごい。また、世界全体のEV市場ストック(PHEV)含めは2600万台、そのうち半分は中国。
![](https://assets.st-note.com/img/1713189202611-41TTsRRuCB.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 15)
各年の車両登録台数に占めるEV車両台数を地域別に算出したものが以下。IEAに言わせれば、EVシフトは起こっている!なのだろうけれども、こう地域別でみていくと、中国や一部の国が先行的にEV導入しているとも読めなくもない。
![](https://assets.st-note.com/img/1713189395188-lnmig547tL.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 19)
EV車両の新型モデル数/セグメントをプロットしたものが以下。一言にEVと言っても150以上の車種が販売されており、特にSUVなど大型EVがよく売れているとのこと。ガソリンやエネルギーを喰う大型車はけしからん、というのがIEAの論調。
![](https://assets.st-note.com/img/1713191199285-RbS7BzR0xI.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 25)
車両セグメント毎に販売価格をプロットしたのが以下。やはり中国における販売価格が非常に低い。特にSmall carsセグメントは1万USDを切っている!上述1.の通り、中国政府による政府補助が入っているんじゃないかと欧州が騒いでいるのもうなづける。
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(出典:報告書, p. 27)
EVチャージャーの設置状況。Fast Chargerの設置はほぼ中国、欧州はSlow Chargerの設置は進んでいる模様。
![](https://assets.st-note.com/img/1713191637116-Ezf4q6pDKn.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 44)
EVチャージャー設置数増加しており、順調のように見えるが、市場EV数に対するチャージャー数でプロットすると、EVの増加率にチャージャーの増加率が追い付いていないことがわかる。
![](https://assets.st-note.com/img/1713191909950-JzMikC9LYk.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 46)
そしてさらに、数の増えるEVチャージャーを支える電力量の問題もある。これについては、比較的チャージャー数の多いオランダにて、電力利用がピークに達する夕方の時間は公共EV施設の利用を制限すべきという議論がなされている。
そしてEV販売が増えれば増えるほど需要が増える重要鉱物資源。
![](https://assets.st-note.com/img/1713192205383-yb5vDOtk6R.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 57)
そしてその重要鉱物やバッテリーの価格。気になるのは、バッテリー価格の低下が鈍化している事。
![](https://assets.st-note.com/img/1713192271744-MitlGLrzhN.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 61)
EVシフトの要となる政策イニシアティブ。
![](https://assets.st-note.com/img/1713192382311-rHDMhHQWfD.png?width=1200)
(出典:報告書, p. 66)
3. コメント
IEAのGlobal EV Outlook 2023が発行されてからおおよそ一年。この一年で少し風向きが変わってきたと感じるのは私だけだろうか。1.で述べた通り、EVシフトを後押しする政策(例:補助金)を撤回する政府もいれば、EVシフトを撤回するメーカーもいる。中国産格安EVに対する対抗措置を検討するEU。価格が高止まりすればEVシフトは進まないし、安くなれば欧州メーカが持たないかも。
いずれにせよ、今後発行されるであろうIEAのGlobal EV Outlookの2024年版を要チェック。
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