国際: IEAのEVアウトルック2024
世界各地で騒がれるEVシフトだが、欧州では既にEV販売台数に陰りが見え始めているという話を最近した。そんな中ちょうど、2024年4月2日に国際エネルギー機関/IEAがGlobal EV Outlook 2024を発行したので、その概要をサクッとまとめた。
記事要約
去年の報告書同様、まずは、EV販売台数がすごい勢いで伸びてきていることを強調、新車販売のうち、5台に一台はEV
EV市場ストックは去年時点では2700万台、今年は4000万台に突入する勢い。
売れているEVセグメント毎の航続距離は400km満たない程度。小型EVに関しては200km未満
1. 背景
IEAは世界のEVシフト動向をまとめたEV Global Outlookという報告書を毎年発表している。
報告書と同時に、ローンチイベントをライブストリーミングしており、それが以下。
先日IEAのGlobal EV Outlookの2023年版をレビュー、そこでも中国など一部の国によるEVシフトが世界全体の流れをけん引している旨お話した。
上述記事でも紹介したが、欧州においてはEVシフトに歯止めがかかりつつある、気がしている。その根拠は以下。
※ドイツ政府のEV補助金カットやインフラ整備遅延などを踏まえたメルセデスの2030年完全EVシフト計画の撤回宣言
※英国においてもEV販売台数が落ち込み始めている
※中国産格安EVに対するEUの貿易対抗措置
ということで、改めてEVシフトに関する世界的な動向がどうなっているのか、IEAのGlobal EV Outlook 2024を見ていくことにする。
2. 報告書
去年の報告書同様、まずは、EV販売台数がすごい勢いで伸びてきていることを強調、新車販売のうち、5台に一台はEVだという。なお、23年の販売台数は1400万台、今年はこのままのペースでいけば1700万台は固いとのこと。結果、グローバルなEV車両ストックもぐんぐん伸びているという図が以下。去年は2700万台、今年は4000万台に突入する勢い。
台数で言えば中国がえげつないが、先進国も頑張っている感じ。23年値で言うと、中国での販売が全体の60%、欧州が25%、USが10%。
各国毎のEV新車販売台数と、全体の内のEV比率をプロットしたものが下記。比率で言うと中国とノルウェーが圧倒的。ドイツではEV車両販売の落ち込みが見られる。
去年に続き、今年もEVの新型モデル/セグメント数、特にSUVなど大型EVモデルが増えている。
下記の図からも大型EVの販売が増えていることがわかる(一方小型EVは押され気味)
売れているEVセグメント毎の航続距離は400km満たない程度。小型EVに関しては200km未満。
車両購入・維持にに関するEV&内燃機関車両比較。国によって違うが、純粋にコストだけで見たら多少EVのほうが高い感じだが、補助金などを考慮するとEVのほうが安くなる。
3. コメント
IEAのGlobal EV Outlook 2023が発行されてからおおよそ一年。
この一年で少し風向きが変わってきたと感じていたところにこの報告書が発表された。1.で述べた通り、EVシフトを後押しする政策(例:補助金)を撤回する政府もいれば、EVシフトを撤回するメーカーもいる。中国産格安EVに対する対抗措置を検討するEU。価格が高止まりすればEVシフトは進まないし、安くなれば欧州メーカが持たないかも、などと色々とEVシフトへの後ろ向き要因が目立ったが、報告書を見る限りEVシフトは堅調な模様。
EVシフトに対する逆風に対しては、上述動画にてIEA事務局長が、データを見る限り、EVシフトは堅調だと名言。報告書もそんな内容。
無論、IEAは世界全体を見ているので、中国に引っ張られる形でデータ上もEV販売が伸びているように見えるのかも。実際、ドイツの販売は落ち込んでいる事がIEAのデータでも分かる。
いずれにせよEVシフトが政策ドリブンなのは疑いようがない。IEAのコスト分析でも、純粋にコストだけ見ればいまだEVのほうが従来型の車両より高くなっている。
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