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義経千本桜 四ノ切②

開演前に歌舞伎座の宙乗りワイヤーがセットされる。このワイヤーを見るのは何年ぶりだろう。猿之助さんが最後に歌舞伎座で宙乗りをしたのは弥次喜多かも。コロナ禍で禁じられた客席の上を飛ぶ宙乗り。四ノ切はケレンたっぷりの芝居。狐忠信の出は揚幕近くで「出があるよ」と大きな声がかかりお客さまが花道の方を見ると階段にスンとすました表情で座る狐忠信。一体どこからと思わせる所から始まり、鼓の子と静に白状して一瞬のうちに床下からほわぅほわっの白い毛の狐になっている登場する。細い欄干を渡ったり、悲しみを伝える舞踊と愛らしい狐言葉で子狐の可愛らしさと哀れが沸点に達した時、いきなり塀の中に消える。そこから本物佐藤忠信に早替りして狐忠信の生い立ちに涙する。再び義経に呼び戻されて館の欄間から飛び降り舞台中央であのスンとおすまし顔で正座するのだ。どれだけの体力を持っているのだろう。

ケレンだけをこなすのではなく、両親が鼓の革にされてしまってからの苦しみ悲しみ、義太夫の語りあわせて親孝行を一日もしていないと嘆く舞踊と台詞は涙無しにはみられない。襲名の頃の子狐感とは異なる芸で魅せる愛らしさというのだろうか。

最後は狐忠信に化かされる荒法師が6人登場するのだが、その中心に猿四郎さんがいた事。おもだか屋の立て師を勤める名題だ。本来荒法師はとんぼを切ったり派手な立ち回りがあるので名題下さんが勤める。猿四郎さんは最後に宙乗りのワイヤーをしっかり取付けて何度も確かめていた。久しぶりの宙乗りの段取りが若いお弟子だけでは不安で猿四郎さんがチームリーダーをしてるのだ。本来ならあり得ない事が普通あるのが型破りなおもだか屋のやり方。おもだか屋のチーム力に守られながら宙乗りは大成功のうちに幕を閉じる。

おもだか屋の荒法師は6人、立ち回りも派手なので見どころたっぷり、その上ラストに宙乗りと派手な事この上ないが、そこに狐忠信の悲しみから喜びに変わる心情がたっぷり盛り込まれているのが素晴らしい。

この先も歌舞伎座で猿之助さんの宙乗りが止まることなく3月の「新三国志」に繋がって欲しい。

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