システムトラブル対応における最悪のパターンの想定と対策
またシステムのトラブル対応に呼ばれた。
どうやらサーバーの熱暴走らしい。
いつものことだが、トラブル対応に向かう時は様々なパターンを考え、可能な限り最悪のパターンを想像しながら現場へ向かう。
何故なら、トラブルがその最悪のパターンであることが多いからだ。
今回もそうだった。
サーバールームに入り、問題のサーバーを教えてもらった。
サーバーを見た瞬間、原因が判明した。
私「正のフィードバック効果ですね。」
担当者「は?」
あれ?
サーバー管理者なのに知らない?
私「複数台のサーバーを設置する場合は、間を開けず、隙間を無くして下さい。」
担当者「そんなことしたらサーバー同士が熱を持って動作が不安定になるのでは?」
やれやれ、そんなことも知らんでよく自分のことをプロフェッショナルと呼べるな・・・。
私「逆です。これらのサーバーは冷却用の吸気口が前にあり、熱排気用の排気口が後ろにあります。サーバー間に隙間があると、そこに熱が籠ります。その熱を持った空気が前に回り込んで吸気口から入ったらどうなります?」
担当者「少しでも隙間を開けた方が冷えるのでは?」
質問に質問で返すとは・・・。
理解する気も無いのか?
最悪のパターンだ・・・。
私「隙間に熱が籠って、その熱を持った空気が吸気口に入ると、冷却するどころか更に熱が上昇し、隙間の熱が高くなります。これを繰り返すとどんどんサーバー内の熱が高くなり、最終的には冷却が出来ずに熱暴走します。これを『正のフィードバック効果』と呼びますが、ご存知では無かったですか?」
担当者が知らなかったのは明らかだ。
知ってたら最初からこんなことはしない。
担当者「そんなのもあったね。すっかり忘れてたよ。後はこちらで対応するので、今日はもういいですよ。上司には私から報告しておきます。」
知ったかぶりかよ!
それなら最初に言った時点で気付くやろ!
明らかに自分のせいやろ!
まあ、こんなこと慣れてるけど・・・。
私「では、後日請求書をお送り致しますので。」
担当者「はぁ!?たったこれだけのことでお金取るの!?」
自分の失敗を上司に報告したくないのね。
こんなことも知らなかったことを上司に知られたくないのね。
でも、その上司から依頼があり、当然私が来てることも知ってる訳で、請求しないのは不自然だということが分からないのね。
私「ええ、移動経費もかかっておりますし、トラブルを解決させるための助言をさせていただいた訳ですから、その費用とお考え頂ければ・・・」
担当者「はぁ!?助言!?そんなこと知っとるに決まっとるやろ!!俺が知らんかったって言うのか!?バカにするな!!」
やれやれ、予想通りの最悪のパターンだ。
本当に知ってるなら呼ぶなよ・・・。
私「いや、私は実際ここにトラブルで呼ばれた訳ですし、私が最後まで説明しないと気付かなかった訳ですし・・・」
担当者「気付かなかった俺がトラブルの原因とでも言いたいのか!?証拠はあるんか!!」
最悪のパターンを考えていて良かった。
私「トラブルの記録と、エビデンスの採取のため、音声を録音させて頂いております。現在も録音中です。」
私は上着のポケットからICレコーダーを取り出した。
担当者は驚いた顔をした。
そして、自分の言動を振り返ってマズイと思ったのだろう。
依頼者「じょ、冗談だよ。少し値引きをしてもらおうと思って・・・。」
それも想定済みだ。
私「委託業務遂行後の一方的な値引きは下請け法に違反しますが大丈夫ですか?」
担当者「・・・」
あーあ、黙っちゃった。
これも想定済み。
そして、実は途中から上司がこちらの様子を伺っていたことも気付いていた。
私は上司の方を向いて軽く会釈した。
上司も察してくれたようだ。
上司「スマンスマン。いつも悪いね。今回もトラブルを解決出来たみたいやね。ありがとう。」
私はこの「ありがとう」という言葉に弱い。
どんなに辛いトラブルでも、この一言で全てが報われたような気持ちになる。
本当に魔法の言葉だと思う。
私「いえいえ、今回も呼んで頂いてありがとうございます。」
上司「こいつはまだまだ知識が足らんのに、プライドだけ高くて困ってたんだよ。今日はいい勉強になったやろ。」
担当者「・・・はい・・・。スミマセンでした・・・。」
上司「スマンが、その録音したデータ、コピーさせてもらっていいかな?」
私「かまいませんが、何に使われるのですか?」
上司「今後の新人教育で使おうと思ってな。もちろん反面教師の例として。」
私は担当者の方を見た。
下を向いて今にも泣きそうな顔をしている。
私「スミマセン。録音データ、間違って消してしまったみたいです。」
上司「わざとやろ(笑)」
私「ご想像にお任せします。」
上司「実は消して無いやろ(笑)」
私「・・・ご想像にお任せします・・・」
上司はニヤニヤしながら担当者に言った。
上司「おい!ちゃんと感謝せいよ!色んな意味で!」
担当者「はい・・・ありがとうございました・・・」
私「いえいえ、今後とも宜しくお願い致します。」
担当者「こちらこそ、宜しくお願い致します。」
担当者に少しだけ笑顔が戻った。
最悪のパターンだったが、想定した中ではベストな終わり方だ。
お金も頂けるし、次からも依頼が来るだろうし、この担当者とも引き続き一緒に仕事が出来るだろう。
とりあえず、疲れた。
やれやれだ。
思ったより早く終わったな。
次の仕事が待っている。
頑張ろう。
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