話を聞きたがる女、話したがらない男。その行く末。
私は話すことが好きだ。
話しながら確認するかのように話すこともある。
彼は話すことが苦手だ。
その分、察する能力に長けている。
うまく行く時は抜群に良い。
すれ違うと抜群に合わない。
怒りは頂点に達し、ついに私は爆発した。
こわい。と言われた。
ここに来るまでに、小さく小さく積み重ねて
優しく丁寧に伝えてきた。
ごめんね。と、とりあえず彼は謝る。
その後の次はこうしてみよう、
ということが彼は苦手らしい。
同じことを繰り返す。
そのうちお互いイライラしてくる。
言葉で理解してほしい私。
言葉では理解できない彼。
面と向かっては、なおさら話すことが苦手らしい。
それなのにLINEの朝から何を食べたのだとか
寒い！とかスタンプは大量にやってくる。
その度に反応することに疲れた。
面と向かって喋りたい。
LINEでスタンプを送り合う、
そんなことよりも、もっと2人で話すべきことがあると思っていた。
それが安心だと思っていた。
私はテレビをしまった。
雑音が余計な判断力を鈍らせ、自律神経に良くないと思ったからだった。
見たいものだけを見逃し配信で観る。
彼はテレビがないと無理だと言う。
雑音がずっとないと落ち着かないそうだ。
私は静けさを好む。
彼は雑音を好む。
彼は人見知りと言うが、その分察して聞き上手なので飲み屋でモテる。
私達は、合うのか合わないのか。
とにかくお互いがもう疲れていた。
歩み寄ろうと努力してきたこの私の数ヶ月は
彼の苦手なことを我慢させていた月日だと言うことがわかった。
むずい。。
これから先、この凸凹がどうやって
すぽっとはまるのか。
毎日飲みに行く彼には、かなり我慢してきた。
暇さえあれば土日昼から1人で何件も飲みに行く。締めはいつもの常連の立ち飲み屋。
何度かさみしいと言った。それで私もついていくようになった。
働いたお金がどんどん流れ落ちていく。
美味しかった、楽しかった、じゃあね。
と解散する。
なんか違うと思った。
家でご飯を食べたい、と言ってからも彼は飲み屋でしか食べない。
久しぶりに夏前か…？以来のうちで晩御飯を食べた。カレーうどんが食べたい！と言うので作ったのだ。ついでに土鍋で白米も炊いた。
美味しいとペロリと平らげた。
あんなに幸せそうな顔をしていたのに
また次の日から飲み屋に行く。
彼のためにご飯を作ることをやめた。
毎日、飲み屋に行くことを止められない彼は
お店や人に依存するのが好きなのだろう。
飽きるとパッと行かなくなる。
ただひとつの立ち飲み屋だけは、何があっても行く。話し下手のオアシスなのだろう。
私とテレビのない部屋でご飯を食べることが
そんなにも苦痛だったのかと思うと泣けてくる。
会話を楽しみたくて音楽をつけていた。
音楽よりテレビがいい。とLINEで言われた。
彼は片耳の鼓膜が破れていて聞こえづらい。
察することが得意で、おそらく
聴覚より、視覚で安心したいのかもしれないと思った。
飲み屋であんまり聞き取れなくてもそれなりにわかってるふりをしているらしい。
かまってちゃんは、飲み屋に行ってしまうと
大変難しい。
そして彼にかまってほしい私も。
彼が毎晩飲むのには付き合いきれず、
部屋で1人でいる時は
さらに感情の難易度が高い。
面倒なのは、彼が楽しい時、暇な時に飲んでいる最中に、私へのLINEが多発することだ。
よかったねー！しか言えない。
楽しんでるのが気になってしまう。
怒ると多分もう連絡してこなくなるだろうからと我慢してきた。私からLINEしてと言ったことはない。勝手に送ってくれるのだ。
LINEなら話せるらしい。
言葉にできないなら察してほしいのだろうと
察したことを、あれやこれや聞いたのがここ最近はだめだった。
聞かれると嫌らしい。
結局、ギリギリになってから言う彼。
気分でコロコロ変わる。振り回される私。
聞かれたくないなら、早く言ってよ、ってイライラ。気分屋だからごめんね、と彼。
ただ、このままだとお互いイライラ疲れて
別れてしまうのだろうと思う。
私が口をつぐみ、にこにことしていることが
彼の幸せなのだろう。
明日は予約してくれている寿司屋に行く。
こんな状態でにこにこして寿司を頬張れるのだろうか。
話したがる女は口を塞ぐために、
話したがらない男は発しなくて良いために、
それぞれ無心で頬張るのか。
果たして、うまく行くのだろうか。
話したがるヒステリックな女に
サンタクロースはこない。
こんな自分、私だって嫌だ。なんとかしたい。
ソリでアタックして目を醒させてほしい。
もう相当消耗している。
書き留めなければ後から見て
自分を恥じることさえしないのだろう。
恋人は、サンタクロースではない。
本当は、なんなんだろう。
そんなクリスマスイヴ。