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ベランダ前の植物たちの話
ある夏の日、住まいの管理会社にワタシは一本の電話を入れた。内容は、「ベランダの前の木や花たちを切らないで下さい」と。
その日は、妙に植物たちがざわつく感じがした。前日に名前はわからない綺麗なピンクの花たちが手を伸ばせば届く所にたくさん咲いていて、ワタシは愛でていた。イチョウの木も、伸び伸びと元気で、雨上がりの葉はキラキラと美しく、写真に収めたりしていた。紅葉した時も風情があり秋を感じていた。
ベランダ前に人の気配がする。植物たちのところを行ったり来たり。
そして、ワタシは急に悲しくなり泣いてしまった。正確に言うと、植物たちが最後のお別れを言いに来ていた。どう表現して良いのかわからないくらい、ワタシの気分は重たく次第に号泣してしまっていた。
切られる植物たちはもっと悲しかったに違い無い。
管理会社の方が植物を切る理由は、苦情があり枯れ葉が室外機に絡み込んでしまう事。隣の駐車場敷地内に枯れ葉や枯れた花が落ちるとの事だった。
ワタシの部屋は、この植物たちのおかげで夏はかなり涼しかった。雨の日のカタツムリ。雨上がりの緑の香り。たくさんの虫たち。イチョウの木の移ろいなど、四季を感じて生活していた。
人間が植物たちを植えて、何十年もかけて大きく育った植物たちを何故簡単に伐採するのか。ワタシは、自分の無力さや強い憤りとやり場の無い悲しみでいっぱいだった。
落ちた花や枯れ葉の掃除はとても大変なのはわかるが、あまりにも残酷ではないかと思う。
話し合いでなんとかならないだろうか。
もっと平和にならないのかと。
案の定、その時の夏はとても暑かった。
幸い根元からの伐採では無かった為、雨が降るごとに植物たち(特にイチョウの木)はぐんぐんと大きく伸びている。それを見るのをとても嬉しく思う。大きく切られた部分はそう簡単には戻らない。何十年もかかるだろう。
植物たちが何も言わないとでも思っているのか。植物は空気を綺麗にしてくれたり、美しい花を咲かせたり、虫たちが花から花へと飛びまわり、生きているんです。
人間の勝手で、植物を安易に伐採しないで欲しいと切に願っています。
今年も、植物が生き生きとした季節がやって来た。
生きとし生けるものを大切に、ワタシは植物と共に生きていく。