続く眠りと終わりの死
彼は言った。
「眠りは死と似ている」のだと。
眠りの世界に落ちれば、起きている時のような意識は無くなり、
心も体も無の状態になる。
それが、死と似ているのだと。
けれど、眠りから覚めれば、また新たな一日を迎えられる。
それが幸せに満ちた日になるか、涙する日になるかはわからないけれど、
必ず新たな一日を迎えられる。
死はどうだろうか。
死を迎えたら、もう新たな一日が訪れることはない。
苦しみも、悲しみも、喜びも、憂いもない。
死は、最後なのだ。
それでも、自分の死をきっかけに誰かが何かを感じ、何かを得ることもある。
眠りは、自分が目覚めたところで、誰かに何かを感じさせたりすることもない。
だから、両者は似ているところがありつつも、根源は異なるのだろう。
私は、眠りと死を似ているものとは思わない。
眠りは、自分自身の物語が続くもの。
死は、自分ではなく、誰かの物語の一つの要素になるもの。
彼の思考も一つの考え。
私の思考も一つの考え。
眠りは、眠り。
死は、死。
そう。それだけの話。