秘密の季節を歩む先には
最初は何がきっかけだったのだろう。今となっては思い出せない。
メール、電話、交わした言葉。それとも、行動、価値観。
人には感情がある。心がある。
そうは言っても脳内物質だって影響してる。
もしかしたら、それが原因だったのかもしれない。
もしかしたら、違うかもしれない。
そこら中で聞き飽きるほど耳にする”釣った魚にエサはやらない”。
それなのかも。
愛の言葉を囁きながらも、あなたは私に触れようとはしない。
一度は理由を尋ねたけど、言葉を濁したあなた。
それからは、もう理由を聞くのもやめた。
諦めを覚えた春だった。
最初は、ただの仲間だった。今になって思い出すと、不思議な感じ。
メール、電話、交わした言葉。そして、行動、価値観。
人には感情がある。心がある。
そうは言っても脳内物質だって影響してる。
もしかしたら、それが原因だったのかもしれない。
もしかしたら、違うかもしれない。
”寂しさの埋め合わせ”。そんなものがきっかけだったのかもしれない。
でも違う気がする。
愛の言葉を囁くのはその時だけでも、あなたは私の心と体に触れる。
束の間の愛の交換しかしないけれど、それでも私は幸せだった。
この関係に名前なんていらない。恋人じゃなくても構わない。
不思議な幸福を知った夏だった。
春が過ぎ、夏が過ぎ、季節は移ろい、目に入る光景も、体を包む服も変わる。
季節が変わるように、人も変わる。
ううん。変わったのは私だけかもしれない。
”あなた”の愛の言葉を信じきることはできないままだったけど、
夏に幸せを知ってしまったことを”あなた”に悟られないようにしてる。
そして”あなた”の知らないところで、今も私は幸福を教えてくれた”あなた”と一時の愛を交わし続けてる。
この先に何があるなんてわからない。
誰かが傷付くことだってあるかもしれない。
だって、秋の次に訪れるのは冬だから。
それでも、私は後悔なんてしない。
春に突き付けられた寂しさや悲しみを”あなた”に隠しながら耐えるより、
揺らぎを起こすかもしれないと知りつつ夏の不思議な幸福の中で眠る方が心地いいんだもの。
私は変わってしまったのかもしれない。
だけど、変わったからこそ、まだ”あなた”と一緒にいられるのかもしれない。