<ずる休みのすすめ> ソーシャルワーカーのための「面接技術」Plus Ultra 16
コラム<ずる休みのすすめ>
本章では、子どもの「問題行動」はSOSのサインだと捉えることができ、それによってその家族を救うこともあることについて触れた。このことに関連して、本コラムでは「ずる休み」の大切さについて述べたいと思う。
・真面目な読者の皆さまに向けて
一体筆者は何を言っているんだ・・・と思っているそこのあなた。そういう方にこそ、本コラムを飲んでほしい。
ズル休み・・・そんなこと、考えたこともないという真面目な人も、たくさんいることだろう。また、ズル休みなんて言ってないで、頑張って業績をあげるんだ!・・・こう意気込んでいる方も多いだろう。
確かに、入社して○か月までが大事だ!とか、1年以内に突出した成果をあげれば、その後は安泰だ、などと言われることもある。かくいう私も、入社1年目はがむしゃらに働き、土日は勉強会に参加するなどかなり忙しくしていた。
しかし、頑張るのと同時に、新卒の学生であればこれから約40年(あるいはそれ以上)、しっかりと働き続けないといけません(早期リタイアしたり、結婚して専業主婦(夫)となればそうではないが)。
つまり、働くには、「高く飛ぶこと」(=成果をあげること)と同時に「長く、遠くまで飛ぶこと」(=安定して働き続けられること)も重要である。
そこで、今回のメインテーマである「ズル休み」をおすすめしたいと思う。
・私が寝坊から学んだこと
「最近、ちょっと疲れが溜まってきたな」と感じたら、「朝起きたら、すごいお腹が痛くて・・・」などと言って、休むのである。
私もこれまで、朝起きて、遅刻ギリギリだったときは、「お腹が痛い」「熱がある」、などと言って休んだことが何回もある(一応、保身の為、20代のときのことであると追記をしておく)。
それ以前に、一人暮らしをしていてこんなことがあった。朝起きたら、10時過ぎ・・・なぜか携帯電話が圏外になっており、アラームもかけ忘れ・・・会社へ慌てて電話をし、飛んで行った。
・・・もちろん、怒られたことは言うまでもない。
前日、大学院で夜中1時まで勉強していたことは、もちろん言い訳にしかならない。そして、1か月と間を置かず、再度寝坊した私は気付いたのである。
寝坊して怒られるよりも、いっそのこと仮病で休んだ方が、次の日心配されるしいいのでは。
・計画的ズル休みを
皆さんも、来月くらいの予定を見ながら「この日ならズル休みできそうだな」と予定をたてて、計画的ズル休みを実行してみてほしい。
例えば、この日は、最悪自分がいなくても何とかなるな、この仕事はこの人が代わりにやってくれるな、という日がいいだろう。
また学生の方は、バイトでもいいかもしれない。いずれにしても、あまり迷惑がかからない日がおすすめである(大事なプレゼンの日にズル休みをし、会社をクビになった!等のクレームは受けかねる。あくまで自己責任でお願いしたい)。
・なぜ、ズル休みがいいのか
さて、それでは、ソーシャルワーカーの私が、なぜ「ズル休み」を勧めるかについて説明したい。
皆さんは、「セリグマンの犬」という実験を知っているだろうか。いわゆる、「学習性無力感」である。
簡単にいうと、『抵抗や回避の困難なストレスと抑圧の下に置かれた犬は、その状況から「何をしても意味がない」ということを学習し、逃れようとする努力すら行わなくなる』ということである。
例えば、DV被害を長期に渡って受けた方が、自ら「逃げよう」という努力ができなくなってしまい、少し努力をすればその状況から抜け出せるのに、そういったことさえ考えられなくなってしまう現象をいう。
長年のストレスにより、どんな可能性も「無駄」と感じてしまい、自発的な行動をとれなくなってしまうのである。
これらを仕事に当てはめて考えると、どうだろうか。
長期的に仕事のストレスがかかった場合、身体がSOSを出していても、それに気付かなくて、限界を超えて無理をしてしまうことがあるということである。また転職などをすれば状況が改善される可能性があったとしても、その可能性すら気付かなくなってしまうこともある。
・心の中の世界
また、我々の心の中には、①超自我、②無意識、③自我という3つがあると言われている。
①超自我というのは、厳しい親のような存在である。「~しなさい」「~しないといけない」というような、英語で言えば「have to」の存在である。
②無意識というのは、子どものような存在です。「~したい」というような、英語で言えば「want to」の存在である。
③自我というのは、この①超自我と②無意識の「調整役」と言われている。
例えば、本当は家に帰ったらおやつを食べたい(②)けれど、勉強をしないといけない(①)から、頑張って早く宿題をやる(③)もしくは食べてから頑張る(③)などである。
これらを仕事に当てはめて考えると、「~しないといけない」(①)という思いーー例えば、「仕事を休んではいけない」「頑張らないといけない」「ズル休みはいけない」--が強くなりすぎると、「本当は休みたい」(②)という心の声に気付けなくなってしまうのである。
・まとめ:ソーシャルワーカーとして
私はソーシャルワーカーとして、ズル休みを勧めている。それは、上述のように、無理を続けると、自分の身体・心のSOSのサインに気付けなくなってしまうからである。
「セリグマンの犬」にならないように、「予防」のためにズル休みをしてほしい。ズル休みをすることで、「自我」が強くなる。心の声に気が付きやすくなる。