【映画感想】クライ・マッチョ
はい、えー、90歳を過ぎたクリント・イーストウッドの監督主演最新作(しかも、監督業50周年とのこと。)『クライ・マッチョ』の感想です。
というわけでクリント・イーストウッドなんですが、まぁ、そこそこ観てはいるんてすけど、こう、いまいちピンと来ないと言いますか。いや、全然楽しく観れるんですよ。予告とか観ても面白そうだなと思いますしね。観終わった時には「あー、映画観たなぁ。」という気持ちにもなるんですけど、なんですかね、もの凄く漂白された気分というか、後に何も残らないんですよね。観てもなんとも思わないというか(それがいいんですかね。もしかして清々しいとかいうのはこういうことを言うんでしょうか?)。いや、なんとも思わないことはないですね。思わないというより思わせないというか。そう、そうなんだよ。その通り…うん…って感じなんですよね。
なんとも歯切れ悪いですが、映画の言ってることが(例えば、正しくなさとか理不尽さなんかも含めて)通り過ぎて行ってしまって「うん、そうだね。」以外に言葉が出て来ないというか。だから、非常に感想が書きづらいんです。僕にとって。イーストウッド作品は。個人的には映画を観てもっと混沌とした気持ちになりたいんですよね。ウズウズしたいというか。間違ってるかもしれないことを、いやー、これは間違ってるんだろうな。けど、間違ってるとは切り捨てがたいんだよな〜。みたいな。で、そういうことを、そう、そうやって悩むのが人間だぜ。それでいいんだぜ。ってとこまで言われてしまうと、いや、そこまで言われたら(そうなんだけど)何も考えることないじゃんと思ってしまうんです。
だからですね、この映画も観て、観ながら凄い映画的な映画だなって思って。この映画としてのちょうど良さっていうか、例えば、心を閉ざした少年ラフォ(この少年を、少年の父親から頼まれてメキシコからテキサスへ連れて帰るというのが映画のストーリーなんですが。というかそれだけの映画なんですが。)がやっと心を許し掛けたところで父親がラフォを連れ戻したい本当の理由を知られて、イーストウッド演じるマイクもその理由を知っていたんじゃないかって怪しまれるシーンなのに、ただ、「いや、知らなかったんだよね。」で済ませられるところとか、90歳過ぎたお爺さんが行く先々でおばさんからモテモテのところとか、落ちぶれたカウボーイって役どころなのに全く落ちぶれて見えないどころかすげぇ楽しそうに生きてるところとか、全部スルー出来ちゃうんですよ。イーストウッドだから。あの、だから、たぶんこれ、ダメなじいさんなんですよね。描きたかったのは。その(かつては凄腕のカウボーイだったんだけど今となっては)ダメ(になってしまった)なじいさんが"強さの裏にある弱さ"を語るからグッと来るわけですよね。それがやっぱりどうしたってそう見えない。でも、そのテーマは凄く伝わって来るんですよ(これはやっぱり映画が上手いってことなんですかね。)。だから、理解は出来るんだけどなんかピンと来ないって感じなんです。で、これは主演が希代の大スタークリント・イーストウッドだからってことじゃないと思うんですよ(なぜなら、僕が今まで観たイーストウッド監督作品の全てにこのなんかグッと来ない。いや、グッとは来るんだけどなんか通り過ぎてしまう感じを感じているからなんですけど。)。
じゃあ、何なのかというと(個人的な感覚の話なのでちょっと伝わるか分からないんですが)、映画全体から溢れ出るようなメンタルの強さを感じるからなんだと思うんです。あ、なるほど、この窮地に立たない感じというか、大概の問題は難なく切り抜けられる感じ?この力強さにみんな勇気づけられたりスカッとしてるってことなんですかね?そうやって観れば確かにそうかも。僕はクリント・イーストウッドを人間として見てたんですが、確かに『ダーティー・ハリー』の時も『ガントレット』の時も(僕が好きなイーストウッド主演作品です。)割と容易に苦難を乗り越えてましたね。だから、ヒーロー映画として観れば(なんならマーベル映画よりも危機回避能力は超人的かもしれない。)なるほど納得するかもしれないです(だから、イーストウッド作品を好きな人はイーストウッドということを重要視するんでしょうか。イーストウッドの人生を投影することで作品を補完していると言いますか。)。
ただですね、僕がこの映画を観ていて「あ、かつてのイーストウッド映画観てるみたい。」と感じたところがあって、それは、鶏のマッチョに話しかけるところと、ラフォを追いかけて来た警察との追いかけっこのシーンで。その、ヒーローの様なイーストウッドが意味ないことしてるのとか追い詰められてるのとかに映画ならではのフィクションとしての面白さを感じたんですよね。だから、もしかしたら6割くらいあの手のシーンになって、ラストに人間の暖かさとか優しさって言われたらグッと来るのかなと思ったんですが、それだと完全に寅さんですね(なので、今回も、いまいちまだイーストウッド作品のコツが掴めなかった感じです。いつかコツが掴める日が来るのでしょうか。)。
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