【映画感想文】RRR
はい、めちゃくちゃ話題になった『バーフバリ』のS.S.ラージャマウリ監督の新作ということでインド映画です。個人的にインド映画とは何となく距離を取ってきてしまってたんですが、このタイミングかなということで対峙して来ました。『RRR』の感想です。
ということで、なぜ、距離を取っていたのかってことなんですが、なんというかですね、面白さの中身というか、こういうところをみんな面白がってるんでしょ?っていうのがですね。透けて見えてしまっていたといいますか。恐らく観れば「おもしろ…」ってなるだろうなとは思っていたんですけど、そこに自らハマりに行くのは嫌というか。根っからのアンチ野郎なんですよね。僕が。要するに。
で、観たわけなんですけども、概ね思ってた通り(だから、もちろん面白かったんですけどね。)。神話とかおとぎ話(昔話)みたいな分かりやすく王道なストーリーに歌や踊りを入れてエンターテイメントにするのはディズニーアニメの手法だなと思ったし、それをあり得ない様なアクションで繋いでいくのはジャッキー・チェン映画や『ジョン・ウィック』とか『ミッション・イン・ポッシブル』的だし(アクションと言えば、アクション・シーンの見せ方の独自性は『ベイビーわるきゅーれ』や『国岡』シリーズの阪元裕吾監督味もありました。)、そのアクションをするキャラクターが超人じみているということになれば、これはもうマーベルやDCのスーパーヒーローモノの体も成してくるわけです。要するに、そういう映画的に面白いと言われてるものが寄せ集まってごった煮になった様な、そういう面白さなんですね。なんですけど(ここからが重要です。)、それをハリウッド的リテラシーではなく、あくまでインド的(というんでしょうかね。)映画作りの歴史の中で育まれた独特のリテラシーでやるんです。そうするとどうなるかというと(これはインドという国の計り知れなさなんだと思うんですけど)、"異国"というよりは、まるで"異世界"で作られた映画を観てるような、今まで経験したことのない高揚感に包まれることになるんです。
確かに"映画"というジャンルの芸術でありエンターテイメントであって、この感じは観たことあるなってなるんですけど、僕らが知ってるその歴史の流れからは微妙にズレているような、何か違う進化を遂げて来たような、そういう空気をオープニング・クレジットの段階から感じるんです(実際、このオープニング・クレジットのところで僕は一番最初に気持ちがアガりました。こういう意味なくアガるみたいなことが多々あるんですよ。この映画)。そういう王道の決まり事から外れたところの表現に気持ちが持ってかれるというのは、いわゆるB級映画とか、オルタナティブな趣向の作品ではよくあるんですけど、この映画はそれとも違うんですね(僕がインド映画と何となく距離を取ってた原因というのはじつはここにあるんですけど、つまり、予期せずメイン・ストリームとは外れてしまっているというか、天然でオルタナティブな存在になってしまっているというか、そこをみんな面白がっているんじゃないのかと思っていたんです。僕はオルタナティブなものは好きなんですけど、オルタナティブであることの条件として、そうあることに意識的であって欲しいんですよね。天然でオルタナティブになってしまってるものにはあまり興味がないんです。あ、いや、違いますね。やってる側は無意識的でもいいんですが、それを面白がりたくないんです。受け手として。)。
映画史を知らないわけでも、文脈を無視しているわけでもないのに、なぜか圧倒的に違うものになっている。それはほんとにまるで異世界(パラレルワールド)の王道映画を観てるよう(その世界に入り込んでしまったよう)で、そのドキドキとかワクワクが最大にして唯一の(だからストーリーがどうとか、演技がどうとかではない全てを凌駕する)魅力だと思うんですよね。映画を観る喜びが現実世界を一時でも忘れられることにあるとすれば(少なくとも僕はそうです。)、この映画はやっぱりめちゃくちゃ映画的な映画なんだろうなと思うわけです(さすがゼロを発見した国というか、そういう適当さと緻密さや、神的なものと人間的なものが同次元で混在したような。そういう映画でした。)。