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【IB・MYP】電気のUnit week 1 / week 2
本格的に電気に関する実験がスタート。
生徒たちには、このUnitの最終課題として「電気を”効率よく”つくってもらう」ということを伝えてあります。 最終課題に臨むために、電気に関する知識と経験を集めていくようなイメージ。
この段階で学習指導要領上おさえなければならないことは、「電流」「電圧」「抵抗」の3要素とその関係性。実験を中心に設計しました。
IBは探究ですと、よく言われますが探究の中にもグラデーションが存在します。それはある文献においては、”構造化された探究”、”導かれた探究”、”オープンな探究”と呼ばれています。(『思考する教室をつくる 概念型探究の実践』 カーラ・マーシャル, レイチェル・フレンチ著 遠藤みゆき, ベアード真理子訳 北大路書房 2024)
この週の設計は、構造化された探究と導かれた探究のちょうど間くらいを想定しました。 実験をするにあたって、毎回レポートを書くよう指示しました。そのレポートには、教師からの問いを書くスペースを設けておきました。この教師からの問いがあることで、学習者はこの問いに立ち返りながら実験を計画し実行していきます。
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さらに、今回のUnitでは仮説を文献(教科書)から抜き出すよう指示してみました。意図としては、①読みのスキルトレーニングとなること。(何が仮説となり得る文章なのかを抜き出す。文章の中から重要性を見抜くスキル。)②すでに発見されている原理を検証するという科学の演繹的なプロセスをたどらせてみることで、科学とは何かを考えること。③生徒からのニーズとして、教科書通りに進めてほしいという要望が強いこと。主にこのような意図(言い訳?)をもとに指示しました。 教師からの問い+科学の演繹的プロセスによって、比較的構造化された探究を意識して設計・実践しました。
一方で、目的や実験方法は学習者に委ねました。彼らに常々伝えていることは、「立てた仮説は何を見ることで検証できるのか。これがあなたの実験目的となる。そして、見たいことをどのようにすれば見ることができるのか。これが実験計画である。」ということです。
ありがちなのは、教科書の丸写し。私が見ている中でも、散見されました。
ただ、そのようなレポートを書いてきた生徒に対してなるべくこう問いました。 「あなたはこの実験で何を見るのか説明して。」
「見たいものを見るために本当に必要な実験か、説明して。」と。
この2週間はかなりの時間を、実験とレポートを書く時間に費やしました。 実験のデザインから実験評価までの一連のプロセスの多くを学習者に委ねた、という点においては導かれた探究と言えるのかもしれないなと振り返ってみて思います。
授業者の設計に対するリフレクション
このUnitで懸念していたことは、演繹的な検証プロセスを推奨することで学習者の学びを失速させてしまうのでは?ということでした。「言葉でもうすでに”得られた”と思っていることを、わざわざ実際にやってみる」ということにどこまで興味をもってもらえるかわからなかったのです。
実際にようすを見ていると、実験をすることによる”驚き・発見”といったことは少なかったように思います。それと引き換えに化学の実験の時のような”どこに向かうのか分からない不安感”みたいなものは彼らから感じられませんでした。常に、「君たちはこのUnitの最後には、自分で電気を作るのだ!」と最終到達課題をちらつかせていたことは効果的に感じています。
結局のところ、大事だなと思ったのは、ありふれたことですが
目の前の生徒の実情をこちらが丁寧に観察すること。
そして、その実情に合わせて彼らが少し背伸びしなければ届かないくらいの最終到達課題とそこに行き着くまでの場を設計してあげること。
これをいかに見定めていくのかというのが、Unitの序盤では重要なのだということを学習者の姿から学びました。
ただ、ありふれたことではあるものの公立時代とのちがいを強く感じています。それは、冒頭でもお伝えしたように探究の中にグラデーションがあるのだと私自身が認識していることでした。
たとえ丁寧に観察する目をもっていたとしても、探究のグラデーション認識がなければ探究を”する”か”しない”の2択に陥っていたことでしょう。
探究のグラデーションの中のどの位置に今いるのかということを、設計者が意図的にコントロールできるというのは探究という場を設計する上で非常に重要な実践スキルだと感じています。