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カード会社対応の温度差について・Ⅰ~『ロマンス詐欺』なるものに引っかかった四十路の末路⑤@現在進行形

 (承前)
 一番初めに書いたのか失念したが、詐欺に違いないと踏んでから、交番に駆けこむまでは早かったが、あいにくの日曜日だった。ここで調書を取られる話は後述するとして(もう毎日いろんなことがありすぎて、うつもちにはつらい。そううつ疑惑があるので、これが終わったら倒れそうだ)、まずカード会社に電話をしてみようと思い立ったのには理由がある。

 三年ほど前だろうか、図書館で本を物色していたところ、突然見知らぬ番号から着信があった。09で始まるので九州だというのは、かつての仕事柄ですぐ判ったが、あいにくこちらには九州の知人はいない。幸せなひと時を邪魔するなよと心の中で舌打ちしつつ、本を物色していたが、着信が鳴りやむことはなかった。

 個人的経験からいえることは、見知らぬ番号でも、着信が長く続くようなら、即刻出たほうがいい。折り返しの電話だとお金がかかるというのもあるが、単純によからぬ話が多い。

 電話口の向こうは若い女性の方で、まず名乗ったあと、「失礼ですが」と前置きして、こちらの名前を尋ねてきた。そして本人かどうかを重ねて確認してきた。

 そして本題。
「たったいま、某電気店で○○を買われましたか?」
 はい? ぼくは図書館にいますけれど…。
「108,000円の品物が4回続けて買われていますが、あなたではないのですね?」
「ちがいます(いまおもえば、なんてかわいらしい数字、たかだか50万なんて……) 」
「かしこまりました。それでしたら、いまからこのカードを止めます。新たなカードを送りますので、即刻破棄してください」
 ……そんな感じのやりとりだったと思う。
 どうやら、スキミング被害に遭ったようで、似たような事案が複数感知されていて、カード会社としては警戒していたとのこと。
 そしてこのスキミング、自分にも心当たりはあった。(この頃から、破滅に向かうフラグが立っていたのね。さぁ、もう笑ってくれ)

 そしてぼくは夢の国を抜けだし、銀行に駆けこむ。
 まず貯金をすべて下したが、……やはりやられていた。キャッシュカード一体型のデビットカードだったため、こちらは引かれていたのだ。当時は懇意にしていた銀行員の方がいらして、後日、お金は返ってきて、めでたしめでたし、あとの日々は平凡でしたといえればよかったのに、ぽちぽちスイッチを押す悪い癖が、いま、身の破滅を呼んでいる。

 閑話休題。
 要は何を伝えたかったというと、このカード会社の対応は迅速で、素晴らしかったということだ。銀行にすぐに駆けこんだのも、この電話担当の方が「ほかに読みとられた可能性があるカードはありませんか?」と尋ねてくれたからこそ、被害は最小限に食い止められたのだ。

 だからこそ、この会社にたいして期待値が高まるのは、必然だろう。実際に、ぼくが先に電話を掛けたのは、ここのカード会社だった。毀誉褒貶になるので、あえてここは社名は控える。

 今回の対応は最悪だった。騙されてホイホイ仮想通貨なんぞに手を出す馬鹿者であるぼくに、そんなこという権利がないことは承知しているが、それでも失望した。今後はここのカードは使わないだろう。

 なんといえばいいのだろう。
 まったくこちらの気持ちに寄り添ってくれなかったのである。
 身分確認して、おそらく取引の内容を確認をして、「もうこの取引は取り消せません」とにべもない。最後は「消費者センターに相談してください」といわれる始末だった。

 身から出た錆だから、そこは百歩譲って、いいよ。
 あほと思われていいよ。
 だけど、ほんの少しだけでも、労りの言葉というか、不安を軽減をさせてくれるようないい方をしてほしかった。あほのわがままだが、「取り消せません」ではなくて、「お客様のご意向は判りますが……」とか、一言、クッション言葉が欲しかった。

 そのくらい、期待値が高かったのである。
 だから電話を切ったとき、ほんとうにどっと疲れが出た。

 しかし、体の中は夢の国にいたようで、浮かんだのは、故・山本文緒の『恋愛中毒』という小説の一説だった。

 どうしたらいいか教えてくれるまで、私は電話を切る気はなかった。だが、握りしめた携帯電話は最期の悲鳴のような電池切れの発信音をたて、やがて死んだように冷たくなっていった。

(山本文緒『恋愛中毒』角川文庫p405より引用)

 まさか実人生で、これを追体験するとは、しかも金がらみで体感するとは、読んだときは想像もしていなかった。

以下、もう一社のことは次回。
明日も生きていますように。

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