最後は、企業や担当の「誠実さ」が勝利する
人事のなかには、「候補者が途中辞退されて困った」経験をしている方も多いのではないでしょうか。
しかし、それは本当に候補者が悪いのか。
エン・ジャパンの調査によると、およそ30%の人が選考時に辞退した経験をしており、その5%(全体の1.5%)がドタキャン(連絡なし)したそうです。
選考事態はさほど珍しい事態ではないものの、連絡なしのドタキャンはほとんどないといえます。
面接前、選考中、内定のフェーズで理由は違いますが、根本は同じ。「希望と違う」からです。もっといえば、「聞いていた話と違う」ということ。
■「希望と違う」と感じる求職者が多い
例えば、面接後の辞退理由として
・面接で詳しく知った仕事内容が希望と合わなかった(43%)
・面接で詳しく知った勤務地・給与などの条件が希望と合わなかった(43%)
と圧倒的です。(人事のミカタより)
エージェントにしろ、転職サイトにしろ、求人票には仕事内容や勤務地・給与は記載されています。それでも希望と合わないというのは、あまり考えられないことです。
実際の求職者の声を、エン転職のアンケートから拾うと、
一次面接終了後に辞退の経験あり。求人内容と面接での説明が異なっており、自分の希望するものではなかったので辞退した。
正社員希望だったのですが、契約社員であったため面接を辞退させて頂きました。
働いてる方と仲良くなり色々と話を聞いた際に、退職するまで半年掛かると教えて頂いた。面接で説明された休みの日数と実際働いている方の休みの日数が明らかに異なっており、辞退を行いました。
確実に転勤になり、現住所から引っ越さなければならず、転職する理由と相反したため。
など、当初の説明と異なっていた可能性が高いです。このように、企業や担当者の不信感が選考辞退につながっています。
■面接前と面接後では、クチコミの扱いが違う
最近の転職では、口コミサイトの存在は非常に大きいものです。クチコミサイトをまったく見ない求職者は少数派でしょう。
しかし、クチコミだけで判断する求職者も多くはありません。その扱いは面接前と面接後で大きく異なります。さきほどの「人事のミカタ」のデータを見ると、
◎ネットで良くない評判や噂を見た
・面接前:29%
・面接当日:22%
とあるものの、面接後には登場しません。むしろ、社風や面接官の対応の悪さが目立ちます。
確かに、実際の転職者に話を聞いても、最後の決め手に「面接官の人の良さ」を上げる方は一定数、存在します。なかには「他社のほうが条件が良かったけど、面接官の対応が悪くて辞退した」という方も。
認知や母集団形成においては、クチコミの影響はあるものの、面接後に求職者は口コミを信じていないことが明らかです。
■確かに、他社に決めたという理由も多いが…
確かに、他社から内定をもらったことを理由に、選考辞退する方が30%ほどいます。30%はかなり大きな理由の一つと言えますが、内定後の辞退理由は
・勤務地・給与などの条件の折り合いがつかなかった(40%)
・社風が自分に合わないと判断した(32%)
・他社での選考が通過した・内定が決まった(30%)
・求人情報や面接時の条件と齟齬があった(25%)
と不信感によるものです。
もちろん、勤務地・給与については、あらかじめ話をしていた可能性はなくもないですが、候補者の了承を得られていない可能性が高く、だから「求人情報や面接時の条件と齟齬があった」という理由になるのでしょう。
このような状況になる一つの要因が「選考してやっている」という企業や担当の意識です。転職において企業が上、求職者が下という考え方です。いわゆる「選ぶ側」に企業があると思っています。
しかし、どの業界も人材不足が叫ばれ、求人倍率が高止まりをしている状況で、果たして企業は「選ぶ側」でしょうか。
すでに「選んでもらう側」にあると考えたほうがよいです。特に、ITエンジニアについては、8.69倍(doda調べ/2020年2月)と企業は選んでもらう側です。だからこそ、あの手この手でエンジニアの関心を引く必要があります。
下手に出ろ、という話ではありません。求職者が選べる時代だからこそ、正確な情報を提供し、誠実に対応することが求職者の心に一番響くのです。
「給与が低いから…」「不人気職種・業界だから…」「福利厚生が充実していないから…」と、悪いことを隠すのではなく、誠実に対応し、求職者の要望にどこまで沿えるか、最大限努力する姿こそが、もっとも採用成功率を上げる方法だと考えます。