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心臓の痛みを和らげるのはダイナマイトの原料
映画やテレビドラマなどで急に胸を押さえて苦しむシーンを見たことがある人は多いでしょう。
心臓病は、現在がんに次ぐNo.2の死因として知られており、今後はがんを抜かしてNo.1死因になるとも言われています。
そんな、心臓病の中に突発的に苦しむ狭心症というものがあります。そんな狭心症の患者は飲む薬が実は爆弾であるダイナマイトの原料であるということを知っていましたか?
今回は、狭心症の薬として使われるニトログリセリンについて簡単に紹介したいと思います。
ニトログリセリンとは
ニトログリセリンは軽い衝撃で爆発するほど不安定な爆薬として知られています。このニトログリセリンを安定的に扱う方法を見つけ、その後ダイナマイトを発明したアルフレッド・ノーベルはその収益で多額の財産を得ました。
ノーベルが手にしたお金を元手に資金運用されているのが、ノーベル財団でそれがノーベル賞の賞金になっているのは有名な話ですね。
少し話がそれてしまいましたが、ニトログリセリンそのものはかなり危険な物質なんですね。
そんな危険な爆薬が心臓病の薬というのはとても以外ではないでしょうか?
しかし、みなさんが想像する以上にニトログリセリンは臨床の現場でよく使われている薬なんです。
ここからはニトログリセリンを治療に使う狭心症について一緒に見ていきましょう。
狭心症とは
読んで字のごとく、心臓に酸素を送る血管が狭くなり十分な血液が流れなくなることで、苦しくなる心疾患の一種です。
大まかには2種類の狭心症があります。
1つは血管がけいれんすることによって細く狭くなってしまう安静時狭心症、もう1つは血管内にプラークという塊があるせいで血管が狭くなってしまう労作時狭心症です。
通常、このように血管が細くなってしまう場合は、カテーテルと呼ばれる細い管を通して、バルーン(風船)を膨らませて、血管を広げます。このとき、ステントと呼ばれる金属の網を血管内部に留置することで、血管が再び狭くなることを防ぎます。
まあ、細かい分類や手術の方法は今回はこのぐらいにしておきましょう。
知りたいのは、どうして爆薬になるニトログリセリンが狭心症で苦しむ患者を助けることができるのかという点でしたね。
薬としてのニトログリセリン
もともと、ニトログリセリンが薬として使えるなんて考えられていませんでした。そりゃあ薬草なんかと違って爆薬ですからね。
そんな中、爆薬工場で働く従業員が頭痛やめまいで体調が悪くなるという現象が起きました。その一方で、狭心症持ちの従業員はなぜか職場では発作が起こらないというよくわらかない事態に。
後に、その原因がニトログリセリンのもつ血管拡張機能にあるとわかりました。そのため、健常者は意味もなく血管が拡張されてしまいめまいを起こし、逆に狭心症持ちの従業員は血管が狭まることがなかったというわけです。
そのことから、ニトログリセリンが狭心症に有効であるとわかったようです。ちなみに、ニトログリセリンの量は非常に微量であるため、口に入れたからといって爆発するようなことはありません。
また、ニトログリセリンの効果を発揮するためには、薬を飲みこんではいけないそうです。
ニトログリセリンの錠剤は舌で溶かして服用しないといけません。これはニトログリセリンが加水分解されることで硝酸ができて、さらにそこから一酸化窒素ができます。
この一酸化窒素が血管拡張機能を持っているため、飲み込んでしまうと一連の現象が起きにく効果が弱まってしまうようですね。
最後に
最近、仕事の都合上臨床の論文をたくさん読む機会があり、そこで何度も出てくるのがこのニトログリセリンでした。
どうして患者さんが爆薬の原料を投与されるんだろうと思って調べてみると、ずいぶん面白い経緯があることがわかりました。
これからはニトログリセリンの見方が爆薬からお薬に変わりますね。