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【マイクロニードルとは】PVAを混ぜて作るちょうどいい針
老若男女注射が好きな人っていないですよね。
大人になれば慣れてきますが、小さい子供や糖尿病などで毎日注射を打つ人にとって鋭い針を突き刺すのは楽しい行為ではありません。
そんな注射の概念を変える技術はこれまでいくつか開発されてきましたが、中でも注目されているいるのがマイクロニードルと呼ばれる技術です。
その名の通りマイクロスケールの小さな針(突起)に薬剤を染み込ませており、その小さな針が剣山のようにたくさん生えています。それを湿布や絆創膏のようにペタッと皮膚に張るわけです。
剣山と聞くと痛そうですが、マイクロニードルは目に見えないぐらい小さいので皮膚の痛点を避けて痛みがないともいわれています。この技術は数あるドラッグデリバリーシステムの中でも経皮という皮膚を通した薬剤輸送方法として期待されているんですね。
今回はそんなマイクロニードルに関する研究を紹介したいと思います。
高分子を使ったマイクロニードル
一言でマイクロニードルといってもいろんな種類があるようですが、今回紹介するのはPVAという高分子を使ったマイクロニードルです。PVAとは洗濯のりや接着剤といった身近なところに使われている素材です。
![](https://assets.st-note.com/img/1659528372327-kTqBPdE1Hd.png?width=1200)
このPVAを使ったマイクロニードルを作るわけですが、その特徴として着目すべき点は、薬剤の浸透効率とニードルの機械特性(強さ)です。
まず、薬を届けるのが目的であるため、体内への薬剤の浸透率というのが重要な要素になってきますよね。刺さってもなかなか薬剤が体に染み出さなければ意味がありません。
そして、浸透率と同じぐらい重要な要素として針(ニードル)の強さがあります。強い針というと痛そうな感じがしますが、弱すぎると皮膚に刺さる前に折れてしまって薬剤を届けるに至りません。つまりニードルにはそれなりの強さが求めらえるわけですね。
ここでのニードルは金属の針ではなくて高分子でできているため、高分子の配合によってはやわらかくて弱い針になってしまいます。
そのため、この論文ではどのような配合で高分子を混ぜるとマイクロニードルが十分な浸透率と強さを兼ね備えるか、というのを調べています。言われてみれば当たり前に見えますが、これが意外と難しいんですよね
高分子マイクロニードルの作り方
さて、具体的に配合というと何と何を混ぜるのかというところになりますが、ここでは特徴の異なるPVAを混ぜています。
PVAにはけん化度と呼ばれる指標があります。これは酢酸基と水酸基の割合によって決まるようですが、細かいところはおいておきましょう。
ちなみにこのけん化度は漢字で鹸化度と書きます。この鹸の文字は滅多に見ることがありませんが、石鹸の”鹸”の字でもあるんですよね。石鹸を作る際によく使われる用語なんです。
まあ難しいことはすっ飛ばして、ようはPVAの鹸化度が変わるということはPVAの特徴が変わるということです。
こちらにPVAの鹸化度について書かれていますね
https://www.kuraray-poval.com/ja/library/viscosity-and-hydrolysis
特徴が少し異なる鹸化度の低いPVAと鹸化度の高いPVAをある比率で混ぜることでマイクロニードルに適した材料を創り出すのが目的です。
マイクロニードルの特徴
さまざまな配合のマイクロニードルを作ってその機械特性や薬剤の浸透率などを調べていきました。
まず機械特性、すなわち強さですが、こちらは予想通り鹸化度によって大きく変わったようです。そして中でも鹸化度の低いPVAを9割以上含んだマイクロニードルは非常に高い強度を示しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1659528274032-yO1ry0ckHt.png)
次に、いろんな配合で作ったマイクロニードルを使って薬剤の放出を調べたところ、低い鹸化度のPVAを6, 5割含むマイクロニードルは全然薬剤が出てこなかったようです。むしろ、周りの水分を吸い取って膨潤してしまったとか
これらのことから、研究グループは鹸化度の低いPVAを9割含んだマイクロニードルがちょうど良いと結論づけています。
少し理解不足のところもあり、結果のところは少し端折ってしまいましたが、要はいろんな配合のPVAでマイクロニードルを作った結果、ベストコンディションを見つけることができたよって研究でした。
最後に
今回は高分子マイクロニードルパッチの研究について紹介しました。私もほぼ初めて読む研究分野ですが、考えるべきことは単純そうに見えて、最適なものを作るのが意外と難しそうだなという印象を受けました。
いろんな分野の研究者がいることで、私たちの世界に新しい良いものが生まれているんですね!
参考文献
Fabrication of a PVA-Based Hydrogel Microneedle Patch