理論の論文をこれでもかというぐらい簡単に紹介する試み
光についての研究というなんだか難しそうと思われる方が多いと思います。実際、そんなに簡単でもないし、理解するにはたくさんの数式を扱えないといけなかったりします。
しかし、そんな研究が私たちの未来を大きく変えてくれると思ったらやはりとても重要ですよね。
今回紹介する論文は理論の論文で、とっても説明が難しいので、感想や補足多めの内容になります。
ただ、このような理論の論文があってこそ科学の進歩が起きているということは忘れてはいけません。というわけで、ちょっと新たな挑戦として、超わかりにくい理論の研究を記事にしてみたいと思います。
理論の研究ってどんな内容?
そもそも今回の論文のテーマは何でしょうか?超ざっくりと一言でいってしまえば、金属微粒子の集まりに、どのような光を当てると効率的に強度が上がるのかというのがメイントピックです。
いやいや、それが何の役に立つの?って思いますよね。そんなことを理論的に調べたところで誰が嬉しいの?と多くの方は思われると思います。
実は、このような理論研究は、光学や材料工学の研究者たちの土台となる重要な知見になるんです。
例えば、ものづくりの研究者がより良いセンサーを作りたいときに、ものづくりの技術はあるけれど、具体的にどんな形に設計すれば良いのかわからないという事態はよくあります。
そこで、どんな材料にどんな光を当てれば良いのかわかっていれば、それを参考にして設計することができますよね。こんな形で、私たちの目には見えないところで、とても役に立つ研究なんです。
光線の強度を上げる不思議な物質
それでは、具体的に中身を見ていきましょう。
研究としてはいろいろと計算したり、議論を行い、様々な知見が用意されているわけですが、難しいのでメインテーマのみを簡単に紹介します。
まず、わかりやすくするために例として、この理論の応用先となるセンサーの話から入りましょう。
ここでのセンサーというのは光を感知するデバイスです。つまり、光が入ってきたときにきちんと光が入ってきたよ!って教えてくれないといけません。
ただし、ここで問題になるのは光が弱いとセンサーも感知することができないんです。そんな時に重要になるのが光を増強する材料です。
これが冒頭で書いた金属微粒子の集合体です。
特定の金属微粒子に光が当たると表面プラズモン共鳴という現象が生じて光の強度が増強する効果があります。
この光増強効果を使うことで、より高感度のセンサーを作ろうというのが工学屋さんのお仕事です。しかし、この金属微粒子の集まりにどんな感じで光が当たるとより強く増強されるのかいまだに明確にはわかっていなかったようです。
光線というのは1直線に進むわけですが、集まったり、発散したりします。虫眼鏡を使って太陽光の光を集めて火を起こすということやったことがある人も多いかと思いますが、あれは光を集める集光です。
つまり、光線というのはレンズなどを使って集光した光を用いることがあるんですね。それでは具体的に金属微粒子にどのように光を当てればよいのでしょうか?
集光した方が良いのか?それとも集光させない方が良いのか?それを調べたということなんです。
どんな光を用意すれば良いのか?
この論文ではシミュレーションによって、集光ビームの光の絞り具合をいろいろと変えて、金属微粒子がどのぐらい敏感に応答するのかを調べました。
その結果、金属微粒子の間隔と同じぐらいにビームを絞ってしまうと、あまり敏感に応答しないものの、ビーム幅を少しずつ広げていくと、徐々に敏感に反応するようになってきました。
これは、金属微粒子1つの影響だったのが、ビーム幅が大きくなるにつれて、微粒子同士の集団としてのふるまいが顕著になり、より強力に光を吸収することができたということになります。
さらに、ビーム幅は理論的には無限に広げることもできます。これを平面波とも言います。
研究グループの調査によると、ビーム幅を広げていくと、ある程度広がったところで、平面波と同じようなふるまいを示すことがわかりました。つまり、ある一定のラインを超えると、ビームは無限の広がりを持った光として考えることができるというわけです。
理論上、平面波といわれていたものと現実の境目を提示したという論文になるんですね。当然、研究者によっては集光ビームを使いたい人も入れば、平面波を使いたい人もいます。そんな研究者たちはきっとこの研究を見て、おおよそどんな設計にすればよいのかつかむことができます。
最後に
今回は数式がたくさん出てくる理論の研究を数式無しでざっくり紹介してみました。世の中にはこんなに地味だけど、大事な研究があるんだよってことを知ってもらえたら嬉しいですね。
今に始まったことではないですが、メディアでもなんでもエビデンスとよく言いますよね。こんな理論の研究もエビデンスの1つになるというわけです。誰も調べてなかったら未知の世界だけれども、誰かが調べていたらそれを踏み台にして人類の知は前に進むということを少しでも感じてもらえたら良いですね。
参考文献
Lattice Resonances Excited by Finite-Width Light Beams