難しい専門用語を簡単に説明する試み:グラフ理論
みなさんはグラフという言葉を知っていますか?
おそらく、ほとんどの大人は当たり前に知っているというでしょう。
しかし、今回紹介するのはみなさんが想像するグラフとは少し異なり、グラフ理論とも言われる、とても難しい方のグラフです。
そういうと構えてしまうかもしれませんが,グラフは私たちの世界のいたるところに隠れています.
今回はそんなグラフの世界を簡単に紹介していこうと思います.
グラフ理論におけるグラフとは
私たちは普段グラフと聞くと,円グラフとか棒グラフトとかを想像すると思います.もう少し進むと散布図とかヒストグラフといった言葉を知っている人もいるかもしれません.
しかし,今回登場するグラフはもっとシンプルに表すことができます.わかりやすい例としてはSNSの友達ネットワークが挙げられます.
AさんはBさんと友達で,BさんはCさんと友達で…というのをつないでいくとクモの巣のようなネットワーク構造を作り上げることができます.このようなネットワークはグラフの一種です.
ここでグラフについてもう少し深堀してみましょう.
グラフはノードとエッジで構成されています.ノード?エッジ?何それ?ってなりますよね.
簡単に言うとノードは〇でエッジはその〇をつなぐ線です.つまり,先ほどの友達ネットワークの例では,AさんやBさんといった人がノードで,友達関係であることを示すのがエッジと呼ばれる線になるわけです.
他にも会社の組織図もグラフといえます.とある部署の組織図を考えてみると,一番上に部長がいてその下に各課の課長が複数人います.さらに課長一人一人が複数の係長を従えており,その下にはメンバーがいます.
このようなグラフは木構造ともいわれ,とても特徴的な構造から様々なところで使われています.これも個々人がノードで上司と部下の関係がエッジでつながっています.
木構造は特徴的で,その頂点にいる部長のノードを根といい,末端の部下たちのノードを葉といいます.
ロジックツリー,KPIツリーという言葉の中でもツリーといわれるようにこれらも木構造の一種です.そんな難しい言葉は使わないよという人でも,小説の部・章・節・項・目というのは聞いたことがあるでしょう.これも小説という作品の下に複数の部がぶら下がっており,各部にはいくつかの章があり…といった具合に木構造になっています.
インターネットも中継地やデバイスが見えない線でつながっています.これもグラフの一種ですね.私たちの生活の根底にはグラフが潜んでいるといっても過言ではないでしょう.
人間関係も組織図も,小説やインターネットもあらゆるところにグラフはあります.生まれてこの方,グラフと無縁だったという人は決していないはずです.
何の役に立つの?
グラフというものは何となくわかったけれど,そもそも何のためにこんなことを考えなければならないのでしょうか?
組織図も小説の章立ても初めて作った人はグラフ理論など考えてもいなかったでしょう.ましてや人間関係などグラフ理論を知っているから友達を作ろうなんてならないですよね.
たしかに,無駄にグラフ理論を使う必要はありません.ただの知識自慢のいやな奴になるだけですもんね.
ただ,世の中の現象を科学的に考察する際には定量的に調べるということをします.つまり何となくそうだよね,といったものではなく,数値化して大小はっきりさせるということをするわけです.
もちろん,数値化(定量化)するときの指標の決め方は難しく一筋縄ではいきません.とはいえ,過去の偉大な科学者たちがさまざまな指標を生み出して,分野ごとに常識的になっている数値化手法は決まっています.私たちは状況に応じて適切にその手法の恩恵を受ければよいだけです.
たとえばSNSの友達関係について,日本に住んでる山田太郎さんとアメリカのジョン・スミスさんを比較して!といわれても何をどうしたらよいのかわかりませんよね.
ここで友達関係をグラフに変換してすでに知られたグラフ理論の定量化手法を用いることで,山田さんが多いとか,スミスさんの周りでは複雑に入り組んだ人間関係になっているといった分析を数字を用いて説明することができるようになります.
もちろんSNSの友達関係だけでなく,世の中のさまざまな現象をグラフに置き換えるとその関係性を具体的に理解できるようになるはずです.
最後に
今回はグラフについて簡単に紹介してみました.このグラフをしっかりと学ぼうとすると数理最適化やグラフ理論などを学ぶ必要があり大変です.
もちろん真面目に勉強することも大切ですが,世の中にはそんな学問や考え方もあるんだなっていうことを知っているだけでも新たに気づきを得たり,物事の見え方が変わったりします.そういったきっかけになればうれしいですね.